2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

遠藤周作『わたしが・棄てた・女』を読む

最近読んだ誰かの本で遠藤周作『わたしが・棄てた・女』が強く推されていたので今度読んでみた。もう40年前、これを映画化した浦山桐郎監督の作品『私が棄てた女』を見て感心したのを憶えている。映画では女工のミツが大学生の吉岡努と関係したあと2回棄て…

小林信彦『四重奏 カルテット』を読む

小林信彦『四重奏 カルテット』(幻戯書房)を読む。本書は4つの短篇からなっている。それらは同一のエピソード、主人公の今野宏が江戸川乱歩の経営する宝島社で『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の編集長をした前後のことが書かれている。乱歩…

アンシールの小倉涌展「マッカーサーの子どもたち−八月革命−」がおもしろかった

東京日本橋馬喰町のunseal contemporary(アンシール)の小倉涌展がおもしろかった(10月27日まで)。残念ながら先週の土曜日で終わってしまったが。小倉は京都精華大学美術学部を卒業とテキストにあるが、生年卒業年とも書かれていない。1999年、香川県の「…

ギャルリー志門の西村沙由里展の龍が見応えがある

東京銀座6丁目のギャルリー志門で西村沙由里展が開かれている(11月3日まで)。西村は1988年北海道札幌市生まれ、2011年に東北芸術工科大学を卒業し、現在同大学院に在学中である。初個展は2010年に今回と同じこのギャラリーで行っている。今年、第80回日…

ぎゃらりー由芽の山崎康譽展「-Poetry-」を見る

東京三鷹市のぎゃらりー由芽で山崎康誉展が開かれている(11月4日まで)。山崎は1952年東京生まれ、1978年に東京学芸大学大学院を修了している。その後バングラデシュ国立芸術大学へ留学してリトグラフを学んでいる。1979年にバングラデシュのダッカで初個…

なぜ老いた女性が美しいか

女優の岡田茉莉子の写真を検索していたら、4年前に書いた自分の文章に行き当たった。もう書いたことも忘れていたが、読み直して改めてその正しさを確認した。 シネマヴェーラ渋谷で「吉田喜重レトロスペクティブ-熱狂ポンピドゥセンターよりの帰還-」が始ま…

10月中旬の秋の花

10月中旬、近所で撮影した秋の花と蝶。 咲き始めたホトトギス。 イヌタデ=犬蓼。 プランターのスミレ(スミレサイシン?)。 満開のキンモクセイ=金木犀。 ナミアゲハ。前翅を激しく震わせていた。

ギャラリーQの谷口育美展「-chaos-」が興味深い

東京銀座1丁目のギャラリーQの谷口育美写真展が興味深い(10月27日まで)。谷口は1988年鹿児島県生まれ、2008年に東京綜合写真専門学校写真芸術第二学科を卒業している。2007年以降何度かグループ展に参加しているが、今回が初個展となる。ただし2011年には…

岩坪賢が復活した

東京銀座1丁目のギャラリーゴトウで「いのち 生命 人・顔」という企画展があった(10月20日まで)。青木進が企画したこのグループ展に岩坪賢が参加していた。岩坪賢は2009年のアートスペース羅針盤の初個展で優れた作品を展示していた。そして、その年の「…

映画『祝の島』を見る

今年6月に銀座ニコンサロンで本橋成一写真展『屠場』を見た。本橋は全国の屠殺場を取材して撮影していた。会場で本橋と話すと、現在屠場の映画を撮っているという。そのちらしをもらって、よく見ると本橋は『祝の島』のドキュメンタリー映画のプロデューサ…

コバヤシ画廊の坂本太郎の大きな木彫を見る

東京銀座3丁目のコバヤシ画廊で坂本太郎展が行われた(10月20日まで)。坂本太郎は1970年、埼玉県生まれ、2000年に愛知県立芸術大学大学院修士課程を修了している。1999年に愛知のギャラリー妙で初個展、その後都内では2000年に当時早稲田にあったガルリSOL…

ドナルド・キーン『日本文学史』を読む

ドナルド・キーン『日本文学史 近代・現代篇6』(中公文庫)を読む。原著は英文で、徳岡孝夫と角地幸男が訳したもの。本書は「戦後文学」「女流の復権」「三島由紀夫」の3章からなっている。 まず「戦後文学」では、『近代文学』と『新日本文学』、野間宏…

Stepsギャラリーの中津川浩章展「そして船は行く」を見る

東京銀座4丁目のStepsギャラリーで中津川浩章展「そして船は行く」が開かれている(10月20日まで)。中津川は1958年静岡県生まれ。和光大学で学び、個展をギャラリイK、パーソナルギャラリー地中海などで数回ずつ開き、その他、ギャラリー人、ギャラリー日…

秋の俳句2つ

コ ス モ ス の 根 方 の 茎 の 太 さ か な 木 犀 の 香 を ま と わ せ て 土 工 来 る

10月の秋の花

ヒガンバナ(彼岸花)別名マンジュシャゲ(曼珠沙華) ヒガンバナ(彼岸花)〔白花〕 コスモス(秋桜) キバナコスモス(黄花秋桜)コスモスとは別種 ミズヒキ(水引) キンモクセイ(金木犀)

国立新美術館『与えられた形象』の辰野登恵子を見る

東京六本木の国立新美術館で『与えられた形象』展を見る(10月22日まで)。画家の辰野登恵子と写真家の柴田敏雄の2人展だ。展覧会のちらしから。 情感に満ちた色彩豊かな画面により、現代日本を代表する抽象画家として、30年以上にわたり第一線で活躍してき…

ミズヒキ〜赤まんま〜中野重治〜曹良奎

近所の小さな植物園でミズヒキの花が咲いている。小さな小さな花だが、アップにしてみるとなかなかきれいだ。ミズヒキはタデ科の植物、花もイヌタデなんかの花に似ている。イヌタデ=犬蓼は子規も俳句に詠んでいる。 犬 蓼 の 花 く ふ 馬 や 茶 の 煙 イヌ…

人造乙女博覧会が開かれている

東京銀座6丁目のヴァニラ画廊で「人造乙女博覧会III」が開かれている(10月20日まで)。人造乙女というのは、簡単に言ってしまえば高級ダッチワイフのことだ。いや1体55万円以上もするので、発売元のオリエント工業ではダッチワイフなどといわずにラブドー…

ストレスにさらされる子どもは

毎日新聞の書評でD. ベリー、サラヴィッツ著「子どもの共感力を育てる」(紀伊國屋書店)が小西聖子によって紹介されている(10月7日付け)。 この本は、共感という「あまりに人間的で優しい感情を冷徹な科学の目で眺め、共感するには何が必要か、病気や状…

あき びんごの絵本『ゆうだち』がおもしろい

あき びんごの絵本『ゆうだち』(偕成社)がおもしろい。突然の夕立に遭ったヤギがオオカミの家で雨宿りをするお話だ。オオカミはヤギを食べてしまおうと狙っている。ヤギはこの危機をどうやって脱するのか。 いや絵本とはいえ、これがおもしろいのだ。作者…

ギャラリー現の吉川和江展を見る

東京銀座1丁目のギャラリー現の吉川和江展を見る(10月13日まで)。吉川は1945年東京生まれ、1969年に武蔵野美術大学を卒業し、1976年ドイツのハンブルグ国立美術大学に入学し、1986年に同校を卒業している。現在ハンブルグ在住。1983年ハンブルグの画廊で…

なびす画廊の加藤隆明展を見る

東京銀座1丁目のなびす画廊で加藤隆明展が開かれている(10月13日まで)。加藤は1959年福井県生まれ。1981年頃大阪芸術大学大学院美術専攻科修了。1981年京都のギャラリー16で初個展、なびす画廊ではもう12、3回個展を開いている。加藤はなびす画廊の個展で…

辻井喬『叙情と闘争』を読んで

辻井喬『叙情と闘争』(中公文庫)を読む。副題が「辻井喬・堤清二回顧録」という。セゾングループ元代表堤清二は詩と小説を書いているが、その時のペンネームを辻井喬としている。父親が堤康次郎で異母弟が西武鉄道の会長堤義明だ。辻井喬・堤清二が西武デ…

ギャラリー58の自画像展を見る

東京銀座4丁目のギャラリー58で「自画像★2012」が開かれている(10月20日まで)。副題が「9人の美術家による新作自画像と小品展」。参加している画家は9人。石内都を除いてみな70歳を超えている。いわば大御所たちだ。 50音順に、赤瀬川原平、秋山祐徳太…

銀座ニコンサロンの芦沢武仁写真展「マラムレシェ 家の記憶」が興味深い

東京銀座7丁目の銀座ニコンサロンの芦沢武仁写真展「マラムレシェ 家の記憶」が興味深い(10月9日まで)。芦沢は1948年東京生まれ。民俗学の写真家芳賀日出男氏に師事。その後フリーカメラマンとして海外を中心に旅、人々の暮らし、ロマ人の文化などを撮影…

コバヤシ画廊の村山隆治展「ホワイト・アウト」を見る

東京銀座3丁目のコバヤシ画廊で村山隆治展が開かれている(10月6日まで)。村山は1954年、茨城県生まれ。1978年に東京芸術大学油画を卒業し、1980年に東京芸術大学大学院美術研究科を修了している。1993年に茨城のそうま画廊で初個展、その後銀座のJ2ギャ…

ギャラリーゴトウの森本秀樹展を見る

東京銀座1丁目のギャラリーゴトウで森本秀樹展が開かれている(10月13日まで)。森本は1951年、愛媛県宇和島出身。ギャラリー汲美をはじめ、ギャラリーゴトウ、小田急デパートのギャラリーなど数多くの個展を行っている。今回、平塚市美術館副館長の土方明…

加藤周一『「日本文学史序説」補講』を読む

加藤周一『「日本文学史序説」補講』(ちくま学芸文庫)を読む。加藤の代表作にして名著『日本文学史序説』の文字どおりの補講=補充のために行う講義を活字に起こしたもの。少々難解な『日本文学史序説』に対して、これは講演録なのでずっとやさしい。白沙…

澁澤龍彦『私の戦後追想』を読んで

澁澤龍彦『私の戦後追想』(河出文庫)を読む。澁澤にはとくに興味がなかったが、題名の「戦後追想」に惹かれたのだった。本書の成り立ちについて巻末に編集部による説明があった。 本書は、著者自身の回想エッセイを、編集部が『澁澤龍彦全集』(小社刊)よ…

金井美恵子の好きなもの3つ

毎日新聞のコラム「好きなもの」の9月30日は金井美恵子が書いている。このコラムは著名人が好きなものを3つ挙げて、簡単な解説をつけるもの。今回は私の好きな金井美恵子の登場だ。さて、彼女の好きなもの。 1.映画の本と世界 2.トリュフォーの手紙 3…