映画『祝の島』を見る

 今年6月に銀座ニコンサロンで本橋成一写真展『屠場』を見た。本橋は全国の屠殺場を取材して撮影していた。会場で本橋と話すと、現在屠場の映画を撮っているという。そのちらしをもらって、よく見ると本橋は『祝の島』のドキュメンタリー映画のプロデューサーをしていた。これはもしかして山口県祝島のことで上関原発反対に関係あるかと聞くと、正にそうだという。祝島の上関原発に反対するドキュメンタリー映画は、以前『ミツバチの羽音と地球の回転』を見たが、あまり感心しなかった。多くのことを盛り込みすぎて冗長な印象だった。音楽もその使い方にも不満が残った。
 同じテーマを本橋成一がプロデュースしたのなら見てみたいと思った。本橋の写真展は何度も見ていて信頼できる表現者だと思っていた。そのことを祝島出身の知人に話すと、その映画『祝(ほおり)の島』のDVDを貸してくれた。
 監督は纐纈あや、初監督作品だという。「纐纈」は「こうけつ」ではなく「はなぶさ」とルビが振ってあった。映画は島の生活を淡々と追っていく。原発反対のシーンは驚くほど少ない。狭い棚田を耕して田植えをし稲刈りをする老人。墓参りに半日かけるお婆ちゃん。一本釣りをしている漁師も年老いているが元気だ。児童数たった3人の祝島小学校の入学式。祝島の現在の人口は500人なのだ。
 毎週、島で行われる原発建設反対のデモ。中国電力の建設準備工事を阻止するための漁船をつらねての反対行動。
 島の日常をていねいに描き、その住民たちが30年近く粘り強く反対運動をしていることを声高でなく描いていて説得力がある。4年に一度、九州の国東半島から御神霊が海を渡ってくる島の祭り、その飾り付けた舟が近づいてくるシーンはとても美しい。ほとんど映画の醍醐味に近いくらいだ。
 さすが本橋成一プロデューサー、良い作品を作ったと思う。もちろん纐纈あや監督の力だが。
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 以前書いた上関原発に反対するエントリー。
上関(かみのせき)原発に反対します(2009年9月24日)