『原発を作らせない人びと』を読む

 山秋真『原発を作らせない人びと』(岩波新書)を読む。副題を「祝島から未来へ」といい、山口県の上関原発建設に粘り強く反対し続けている祝島の人々とその運動のルポルタージュだ。これがすばらしかった。
 反対運動の報告書なんて固いばかりで面白いものは少ないと思われがちだろうが、本書は反対運動をリアルタイムで綴っていくような迫真の描写に満ちている。著者の筆力に脱帽する。
 しかし何といってもすごいのは祝島で反対運動を続けている住民たちだ。中電(中国電力)の嫌がらせや、力での押さえ込み、何よりも莫大な金を使っての反対派切り崩しに非力な住民たちが懸命に戦っている。
 福島第1原発の事故後も中電は原発建設を諦めていない。反対運動はまだまだ終わらせるわけにはゆかない。
 以前、上関原発がどこにあるのかも知らなかったが、偶然有楽町駅前でその反対署名を求めている知人に会ったのを機会に、資料を読んだり上関原発に反対する映画(2本も作られている)を見たりするうちに、今でははっきりと反対すべきだと確信するに至った。上関原発とそれに反対する祝島の住民のことを知れば、誰でも反対派に組みするだろう。
 この連休中も朝日歌壇に佐々木幸綱選で山陽小野田市の浅上薫風の上関原発に関する短歌が載った(朝日新聞、5月6日)。


原発反対叫びて過ぎし三十年上関の里に春は来にけり

 以前書いた上関原発に関するエントリー
映画『祝の島』を見る(2012年10月22日)
反対運動への威嚇(2012年9月1日)
上関原発反対の短歌(2011年5月10日)
上関原発に関して、三たび(2010年3月28日)
「DAYS JAPAN」の特集記事「祝島・原発を拒否する人々」(2009年10月22日)
上関(かみのせき)原発に反対します(2009年9月24日)



原発をつくらせない人びと――祝島から未来へ (岩波新書)

原発をつくらせない人びと――祝島から未来へ (岩波新書)