2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

朝日歌壇の入選作から郷隼人と坂口弘

朝日歌壇の選者は4人いて、私が好きなのは馬場あき子だ。9月28日の朝日歌壇で馬場あき子が第1席に選んだのがアメリカ在住の郷 隼人だった。郷はアメリカ在住だが正確にはアメリカの刑務所に終身刑で入っている。殺人を犯したらしいが詳しいことは分からな…

犬山城のお殿様はいま

朝日新聞夕刊1面に「ニッポン人脈記」というコラムがあり、現在は「お殿様はいま」というテーマで連載が続いている。9月28日は愛知県の犬山城が取り上げられていて、この犬山城は最近まで個人の所有物だったと紹介されている。 私が中学生の時、国語の教科…

山下菊二の「あけぼの村物語」

先日のNHK日曜美術館で山下菊二が取り上げられた。山下は戦後中村宏や池田龍雄らとルポルタージュ絵画運動に加わっていた。代表作は「あけぼの村物語」だ。 ちょっと気味が悪い作品だ。老婆が首を括っており、犬がその鼻水を舐めている。血色の池の中に男が…

つがいをつくらないトキ対策

佐渡島で放鳥したトキが番(つがい)を作らない。放鳥した10羽のうち、メス4羽は海を越えて新潟市へ移り、オス4羽が佐渡に留まっている。残り2羽は死んだり行方不明になっている。どうしたらいいか。 最近は見かけることが少なくなったが、前に夜団地の前…

「国際野外表現展2009 比企」の石川雷太

埼玉県鳩山町に東京電機大学鳩山キャンパスがあり、そこで「国際野外表現展2009 比企」が開かれている。東京電機大学へは東武東上線高坂駅で下車してスクールバスで行くことになる。キャンパスは山の中にあり広いので、作品も点在している。時間がたっぷりあ…

東北芸術工科大学が熱い

2006年に銀座のなびす画廊で優れた個展を見た。初個展をしていた画家の名前は片柳直美さん。東北芸術工科大学の卒業生だった。ここ数年、銀座などの個展でこの東北芸術工科大学出身の作家たちの優れた個展やグループ展を見かけるようになっていた。お茶の水…

上関(かみのせき)原発に反対します

先日銀座のマリオンの前を通りかかると、娘の親友のお母さんHさんが小雨の中で署名を集めていた。彼女は山口県の瀬戸内海に位置する祝島の出身で、この日は山口県上関町の長島に計画されている上関原発に反対の署名を訴えていた。 以前、銀座5丁目にあるフ…

激辛が売りの蒙古タンメン

JR亀戸駅近くに激辛の蒙古タンメンを売り物にしたラーメン屋N・・がある。私は2倍の辛さまでしか食べてないが、その上に3倍と5倍がある。辛さに対しては特に不満はない。問題なのはタンメンに入っている大量の野菜だ。これがおいしくない。味が抜けてしま…

老人と赤マムシドリンク

公共住宅の修繕の相談係をしていたことがある。独居老人が亡くなった住宅の調査に行った。老人(男性)は亡くなって数日して発見された。子供がなく、姪御さんが部屋の後かたづけをしていったという。しかし、ほとんどの家具がそのまま残されていた。布団も…

第1回所沢ビエンナーレ美術展「引込線」

昨年の所沢ビエンナーレ・プレ美術展「引込線」は面白かったが、今年から正式に所沢ビエンナーレが開かれている(9月23日まで)。所沢駅西口から徒歩2分。西武鉄道旧所沢車両工場を会場としているのでとても広く天井も高い。昨年より1会場増やして3会場…

ボケ酒を作ろう

親切な知人からボケの実をいただいた。38個もあるが、1個1個が小さいので全部でちょうど1kgだった。ボケ酒は果実酒の王様だという。35度のホワイトリカー1.8リットルに対して、ボケの果実500〜800gを使う。それに入れる氷砂糖の量は、0g、200g、300〜400g…

東京都写真美術館の北島敬三展、そのほか

恵比寿にある東京都写真美術館で北島敬三展が開かれている(10月18日まで)。「北島敬三 1975ー1991、コザ/東京/ニューヨーク/東欧/ソ連」と題された写真展は、それらの地域でスナップショットしたもの。北島は森山大道に師事し、ブレボケの手法で街を撮…

渡邊美貴展「性の永遠性」が興味深い

銀座のギャラリーQで渡邊美貴展「性の永遠性」が開かれている(9月19日まで)。立体作品で、いずれもイネ科の植物(雑草)を素材とした立体だ。ススキやヌカキビ、メヒシバ、エノコログサを使って、稲藁を綯(な)うように、縒り合わせて立体を成形している…

車谷長吉の「悩みのるつぼ」の回答(3)

車谷長吉の「悩みのるつぼ」の回答が面白かった。朝日新聞9月12日から。 46歳の主婦です。「人の不幸は蜜の味」と言いますが、私は人一倍他人の不幸を望む気持ちが強く、悩んでいます。(中略) 自分の心の調子が悪いときは、長く病気に伏している友だちに…

第5回「わの会」コレクション展の山本弘

美術品のコレクターたちの「わの会」が野方のギャラリーKANIで第5回コレクション展を開いている(9月25日まで)。 今回のテーマが「無名作家、埋もれた作家」で、50人ほどの画家が展示されている。VOCA展で府中美術館賞を受賞した久保理恵子のお爺さんの久…

興梠優護の怪しい作品が魅力的だ

浅草橋駅近くのギャラリーCASHI°で「Group Show I」が開かれている。1973年生まれから1985年生まれまでの若い作家4人が選ばれている。その中の興梠優護(1982年生まれ)の作品に強く惹かれた。 興梠の作品は写真に示すように極めて退廃的、ポルノティックな…

100万部売れた「思考の整理学」

外山滋比古「思考の整理学」(ちくま文庫)が100万部売れているらしい。1986年に発行されて、その後20年間で17万部売れた。それが2年前盛岡の書店員がPOP(販売時点広告=商品の側に立てた宣伝カードなど)に「もっと若い時に読んでいれば……そう思わずには…

山口昌男「学問の春」を読んで思い出した

山口昌男「学問の春」(平凡社新書)を読んだ。副題が「〈知と遊び〉の10講義」というよく分からない標題。でも「講義のまえに」では、「本書は1997年に札幌大学文化学部で行われた山口昌男「文化学総論」(ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』を読む)の講義を…

1970年代の優れた文章家は誰か

加藤周一の代表作が「日本文学史序説」(ちくま学芸文庫)であることは誰も反対しないだろう。何の留保もなく名著と言える。「日本文化のなかで文学と造形美術の役割は重要である。各時代の日本人は、抽象的な思弁哲学のなかでよりも主として具体的な文学作…

私の岡本太郎論

今まで何度も岡本太郎を批判してきた。それは彼の名声と実力が均衡していないと思ったからだ。有名なほどには優れた画家ではない。先日9月9日の朝日新聞に「絵画で見る岡本太郎」という記事が掲載された。 岡本太郎論の刊行を予定している美術評論家の北澤…

日本はインドネシアから木材を輸入している

山口昌男の10年ほど前の札幌大学での講義録「学問の春」(平凡社新書)を読んでいるがこれが面白い。タイトルが抽象的だが、実際は「文化学総論」(ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』を読む)の講義録をもとにした「比較文化学講義」である、と冒頭にある。 読…

再び、悩ましい広告表現

朝日新聞に「彼、どうやらのんだらしい」の新バージョンの広告が掲載された。まあ、一生懸命ようやっている。クライアントもアートディレクターもイラストレーターも大変だなあ。 以前の同様の広告。「悩ましい広告表現」(2009年5月16日)。

不思議な植物の名前は?

公園の一郭に不思議なものを見かけた。白い大きな綿毛が浮いているように揺れている。近づいてみると植物の種のようだ。なんという植物なのだろう? 綿毛の上の方の茎に小さな虫が付いている。目を近づけてみると、オレンジ色のアブラムシで、これはしばしば…

毎日新聞の吉田秀和特集がチョー嬉しい

毎日新聞2009年9月6日の書評ページが吉田秀和特集だ、嬉しい! 今月23日が吉田秀和の96回目! の誕生日で、それを記念した特集。まず「この人・この3冊」で丸谷才一が吉田秀和の著書3冊を選んでいる。 「モーツァルト」(講談社学術文庫) 「モーツァル…

高橋コレクション日比谷の「neoneo展」

先に紹介した現代アートの美術展「neoteny japanーネオテニー・ジャパンー高橋コレクション」(2009年7月18日)は精神科医の高橋龍太郎氏(1946ー)がここ収集した現代美術のコレクション展だった。高橋氏は12年前から日本の現代アートを精力的にコレクショ…

「クリスマスの思い出」

トルーマン・カポーティの「クリスマスの思い出」は特に好きな短篇だ。イノセント=無垢が好きというよりおばあちゃんが好きなのだ。これは7歳の男の子と彼の60歳を過ぎた従姉である「親友」の交流の物語だ。 フルーツケーキを作るため、密造酒を売っている…

苦労知らずの2代目社長

K化学は戦前農民組合から始まって、戦後日本で一番大きな農薬専業メーカーになった。一代でたたき上げた創業社長のM氏はワンマンでもあったが苦労人でもあった。ある時部下の課長を連れてアメリカへ出張した。ホテルに投宿すると自分の財布を課長に渡して、…

幸福実現党のマニフェスト

幸福実現党は先の総選挙で一人の議員も当選しなかったが、マニフェストは面白かった。その憲法試案の第14条は「天皇制その他の文化的伝統は尊重する。(後略)」だった。天皇制って言葉はコミンテルンが発明した左翼用語で、天皇制についてどう思うかと聞か…

吉田茂について知りたくて

毎日新聞8月9日の読書欄に「終戦記念日特集」として五百旗頭真が「戦争」と「昭和」をテーマに何冊かを推薦している。まず半藤一利「昭和史」(平凡社ライブラリー)を挙げているがこの本は面白い。私に言わせれば密室史観あるいは料亭史観ともいうべき政…

エロスは文化に規定されている

井上寿一「吉田茂と昭和史」(講談社現代新書)に興味深い記述がある。 日中戦争下の日本は、戦争景気に湧いていた。富める者はますます富んでいた。富める上流階級が購読していた雑誌の一つに「ホーム・ライフ」がある。このライフスタイルマガジンが描く上…