興梠優護の怪しい作品が魅力的だ

 浅草橋駅近くのギャラリーCASHI°で「Group Show I」が開かれている。1973年生まれから1985年生まれまでの若い作家4人が選ばれている。その中の興梠優護(1982年生まれ)の作品に強く惹かれた。

 興梠の作品は写真に示すように極めて退廃的、ポルノティックなものだ。それがなぜ魅力的なのだろう。若い娘が裸で寝ており左手を伸ばして自分の性器を開いて見せている。彼女の視線のこちら側には男がいるのだろう。それはこの絵を描いている興梠か、あるいは男一般なのか分からない。いずれにしろ、こちら側には男が彼女を見ている。おそらく彼がこのポーズを要求しているのだろう。
 描写は精密なものではなく、溶け出すような太い輪郭で描かれている。流行のデュマスの流れに属すのかもしれない。直接にはポルノ写真の強い影響を受けている。現代でなければ決して描かれない表現だ。しかし、それをこのように写実でなく表したのがこの作品の成功だろう。
 ポルノ写真の影響と書いたが、30年以上前だったら、このようなポーズは考えられもしなかったのではないか。ポルノ写真のカメラマンたちは刺激を求める読者=編集者の要求に応えるべく、新しいポーズを研究したのだ。それが実って現代では欧米のポルノ雑誌や怪しいネットの世界では日常の表現になっている。興梠はその世界を引用しているのだ。
 興梠は「こうろぎ」と読む。戦没画学生の作品を集めた無言館にも興梠姓の画家の絵が並べられているが、直接の関係はないらしい。九州には多い姓だという。なおギャラリーの名前CASHI°は「華氏」だという。Iの横の「°」は「度」なのだろう。ブラッドベリのSF「華氏451度」を思い出す。
 下の写真は今回は展示していないが興梠の作品。彼が確信犯的にこれらの怪しい作品を制作しているのがよく分かる。


CASHI° 
東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18
電話03-5825-4703
http://cashi.jp/

展覧会名「Group Show I」
9月4日〜26日(土)、日・月・祝日休廊
開廊時間 11:00〜19:00