思想

伊藤直『戦後フランス思想』を読む

伊藤直『戦後フランス思想』(中公新書)を読む。副題が「サルトル、カミュからバタイユまで」となっていて、サルトル、カミュ、ボーヴォワール、メルロ=ポンティ、バタイユがそれぞれ1章を与えられて紹介されている。さらに2章を当てて、サルトルとバタ…

宇野重規 著、若林恵(聞き手)『実験の民主主義』を読む

宇野重規 著、若林恵(聞き手)『実験の民主主義』(中公新書9を読む。副題が「トクヴィルの思想からデジタル、ファンダムへ」とうもの。編集者の若林が政治学者の宇野に質問して宇野が語るという形式をとっている。全6回の対話を基に本書が正立した。 宇…

波戸岡景太『スーザン・ソンタグ』を読む

波戸岡景太『スーザン・ソンタグ』(集英社新書)を読む。副題が「脆(もろ)さにあらがう思想」。昔『反解釈』が話題になったアメリカの知識人で批評家・作家だ。私も『写真論』と『他者の苦痛のまなざし』は読んだけど、小説『死の装具』は50年近く前に買…

山口昌男『本の神話学――増補新版』を読む

山口昌男『本の神話学――増補新版』(中公文庫)を読む。山口昌男は博覧強記の文化人類学者。50年以上前に本書の単行本が出版されてそれで読んでいたが、改めて50年ぶりの再読。本書は、ワイマール文化、ワールブルグ研究所、ユダヤ人の知的環境、モーツァル…

司馬遼太郎『人間の集団について』を読む

司馬遼太郎『人間の集団について』(中公文庫)を読む。副題が「ベトナムから考える」。司馬は1973年4月に取材のためにベトナムを訪ねた。偶然その数日前にアメリカ兵が引き上げたのだった。 司馬は中国文明の周辺にいる国家群に関心をもっていた。それらの…

片山杜秀『11人の考える日本人』を読む

片山杜秀『11人の考える日本人』(文春新書)を読む。副題が「吉田松陰から丸山眞男まで」。2017年から2018年までの1年間、文藝春秋主催の「夜間授業」という講座で月1回話した講義録をまとめたもの。8月は夏休みにしたので11回行って、毎回1人の思想家…

濵田恂子『入門 近代日本思想史』を読む

濵田恂子『入門 近代日本思想史』(ちくま学芸文庫)を読む。「本書は国内外の状況が目まぐるしく変わっていく時代、19世紀後半から20世紀末にいたる歴史に足跡を残した哲学者・思想家たちの主要著作と思索のエッセンスを紹介。(……)日本の哲学思想史を概観…

白井聡『未完のレーニン』を読む

白井聡『未完のレーニン』(講談社学術文庫)を読む。白井は、『永続敗戦論』、『長期腐敗政権』など、優れた書を書いている。本書はレーニンの思想について、『国家と革命』、『何をなすべきか』を中心に極めて詳細に読み解いている。原本は一ツ橋大学大学…

牧野雅彦『ハンナ・アレント』を読む

牧野雅彦『ハンナ・アレント』(講談社現代新書)を読む。本書は「現代新書100(ハンドレッド)」という新しいシリーズで、帯には次のように書かれている。 ①それは、どんな思想なのか(概論) ②なぜ、その思想が生まれたのか(時代背景) ③なぜ、その思想が…

姫岡とし子『ローザ・ルクセンブルク』を読む

姫岡とし子『ローザ・ルクセンブルク』(山川出版社:世界史リブレット)を読む。副題が「闘い抜いたドイツの革命家」。リブレット=小冊子だから100ページちょっとの簡単な伝記。私はローザについてはほとんど知らなかった。先に読んだ池上彰・佐藤優『激動…

池上彰・佐藤優『漂流 日本左翼史』を読む

池上彰・佐藤優『漂流 日本左翼史』(講談社現代新書)を読む。『日本左翼史』シリーズの3冊目で最終巻。副題が「理想なき左派の混迷 1972―2022」、最初の『真説 日本左翼史』の副題が「戦後左派の源流 1945-1960」と15年間を扱い、次の『激動 日本左翼史』…

加藤典洋『戦後入門』を読む

加藤典洋『戦後入門』(ちくま新書)を読む。カバーの袖の惹句から、 日本ばかりが、いまだ「戦後」を終わらせられないのはなぜか。この国を呪縛する「対米従属」や「ねじれ」の問題は、どこに起源があり、どうすれば解消できるのか――。世界大戦の意味を喝破…

釈徹宗『天才 富永仲基』を読む

釈徹宗『天才 富永仲基』(新潮新書)を読む。副題が「独創の町人学者」とある。富永仲基は、江戸時代17世紀に大阪に醤油醸造業の息子として生まれ、懐徳堂に学んだが、病気のため31歳で亡くなっている。 何冊かの著書があるが、現在まで伝わるのは『出定後…

生々流転ということ、人はみな大陸の一塊。本土のひとひら

先日紹介した大矢雅章『日本における銅版画の「メティエ」』(水声社)の中に脅威深いエピソードが綴られていた。祖母の臨終に立ち会った経験から「生々流転」を体得したという。祖母の闘病の終わりに立ち会った時、集まった親類達の顔、姿がよく似ているこ…

鶴見俊輔『思い出袋』を読む

鶴見俊輔『思い出袋』(岩波新書)を読む。これがダントツ素晴らしかった。新書だが内容はその分量の何倍も濃い。鶴見が岩波書店のPR誌『図書』に晩年7年間毎月連載した短いエッセイをまとめたもの。新書という小さな本に84篇、1篇が400字詰め原稿用紙約3枚…

養老孟司『形を読む』を読む

養老孟司『形を読む』(講談社学術文庫)を読む。副題が「生物の形態をめぐって」とあり、解剖学者の立場から生物、とくに動物の形態を論じている。『バカの壁』がベストセラーになった解剖学者の3冊目の著作で、解剖学という基礎学をじっくり研究した人だか…

林達夫・久野収『思想のドラマトゥルギー』を読む

林達夫・久野収『思想のドラマトゥルギー』(平凡社)を読む。二人の対談集だが、久野が聞き手となっている。略歴には林が西洋精神史研究家、久野が哲学者となっている。 1974年の発行直後に買って読み、その20年後に読み直し、今回が3回目となる。林の西洋…

橋爪大三郎による熊野純彦『本居宣長』の書評

今日の毎日新聞に橋爪大三郎による熊野純彦『本居宣長』(作品社)の書評が載っている。橋爪は社会学者、熊野は西洋哲学者で、レヴィナス、カント、ヘーゲルなどを専門にしている。また熊野は廣松渉の弟子でもある。橋爪も熊野も尊敬する学者たちだ。 西欧哲…

橋爪大三郎『丸山眞男の憂鬱』を読む

橋爪大三郎『丸山眞男の憂鬱』(講談社選書メチエ)を読む。これが刺激的でとても面白かった。題名としては『丸山眞男と山本七平』の案も考えたという通り、山本七平の書と対比して丸山を批判している。丸山の主著『日本政治思想史研究』は戦後東京大学出版…

加藤周一対談集『歴史・科学・現代』を読む

加藤周一対談集『歴史・科学・現代』(ちくま学芸文庫)を読む。加藤が丸山眞男、湯川秀樹、久野収、渡辺一夫、笠原芳光、サルトル、西嶋定生ら錚々たる学者たちと対談したものを集めている。初版の単行本を編集した鷲巣力が解説を書いていて、当時対談集と…

中沢新一・河合俊雄 編『思想家 河合隼雄』を読む

中沢新一・河合俊雄 編『思想家 河合隼雄』(岩波現代文庫)を読む。河合隼雄はユング派の精神分析家。河合俊雄は河合隼雄の息子。中沢と河合俊雄の対談、河合隼雄の論文に、中沢、鷲田清一、赤様憲雄、河合俊雄、大澤真幸の諸論文、それに養老孟司と河合俊…

鷲田清一『ひとはなぜ服を着るのか』を読む

鷲田清一『ひとはなぜ服を着るのか』(ちくま文庫)を読む。ファッションやモード(流行)を哲学的に分析している。鷲田は現象学が専門の哲学者で大阪大学総長などをしてきている。 わたし自身が(……)哲学者でありながら、ファッションについて文章を書きだ…

石川美子『ロラン・バルト』を読む

石川美子『ロラン・バルト』(中公新書)を読む。カバーの惹句から、 『恋愛のディスクール・断章』『記号の国』で知られる批評家ロラン・バルト(1915−80)。「テクスト」「エクリチュール」など彼が新たに定義し生み出した概念は、20世紀の文学・思想シー…

新宮一成『ラカンの精神分析』を読む

新宮一成『ラカンの精神分析』(講談社現代新書)を読む。これが大変難しかった。もともと16年前に購入し、すぐに読んでいた。当時も難しくてよく分からなかったと思う。傍線を引いた部分が1か所だけで、「文化勲章のような装置が存在するのは、芸術の上にも…

島薗進・橋爪大三郎『人類の衝突』を読む

島薗進と橋爪大三郎の対談『人類の衝突』(サイゾー)を読む。雑誌『月刊サイゾー』に2015年に連載したもので、副題が「思想、宗教、精神文化からみる人類社会の展望」というもの。知人から勧められて読んだ。島薗は宗教学者、橋爪は社会学者で、この二人の…

苅部直『日本思想史への道案内』を読む

苅部直『日本思想史への道案内』(NTT出版)を読む。見出しを拾うと全体の構成が見える。「日本神話」をめぐって/『神皇正統記』の思想/武士の倫理をどうとらえるか/戦国時代の「天」とキリシタン/儒学と徳川社会/「古学」へのまなざし/国学思想と近代…

片山杜秀・島薗進『近代天皇論』を読む

片山杜秀・島薗進『近代天皇論』(集英社新書)を読む。片山は政治思想史研究者、島薗は宗教学者。二人の対談をまとめたものでとても読みやすい。 まず片山が司馬遼太郎の「司馬史観」を紹介する。 片山 島薗先生のお話を聞いていて、もうひとつ思い起こした…

小林敏明『夏目漱石と西田幾多郎』を読む

小林敏明『夏目漱石と西田幾多郎』(岩波新書)を読む。副題が「共鳴する明治の精神」とある。テーマに興味を持って読んだのではなかった。著者小林に興味があったから。小林はきわめて難解な哲学者廣松渉の弟子なのだ。本人は廣松と木村敏に大きな影響を受…

中沢新一『チベットの先生』を読む

中沢新一『チベットの先生』(角川ソフィア文庫)を読む。チベットの先生とは中沢がチベット仏教を学んだケツン・サンポ先生のこと。表紙には先生と並んだ中沢の写真が使われている。なんとなく四方田犬彦の『先生とわたし』を連想した。四方田は彼が師事し…

大澤真幸『考えるということ』を読む(その1)

大澤真幸『考えるということ』(河出文庫)を読む。これが難しいけれどとても面白かった。3つの章に分かれていて、社会科学の章、文学の章、自然科学の章となっている。社会科学では「時間」、文学では「罪」、自然科学では「神」を主題に、それぞれ数冊の本…