思想

橋爪大三郎による熊野純彦『本居宣長』の書評

今日の毎日新聞に橋爪大三郎による熊野純彦『本居宣長』(作品社)の書評が載っている。橋爪は社会学者、熊野は西洋哲学者で、レヴィナス、カント、ヘーゲルなどを専門にしている。また熊野は廣松渉の弟子でもある。橋爪も熊野も尊敬する学者たちだ。 西欧哲…

橋爪大三郎『丸山眞男の憂鬱』を読む

橋爪大三郎『丸山眞男の憂鬱』(講談社選書メチエ)を読む。これが刺激的でとても面白かった。題名としては『丸山眞男と山本七平』の案も考えたという通り、山本七平の書と対比して丸山を批判している。丸山の主著『日本政治思想史研究』は戦後東京大学出版…

加藤周一対談集『歴史・科学・現代』を読む

加藤周一対談集『歴史・科学・現代』(ちくま学芸文庫)を読む。加藤が丸山眞男、湯川秀樹、久野収、渡辺一夫、笠原芳光、サルトル、西嶋定生ら錚々たる学者たちと対談したものを集めている。初版の単行本を編集した鷲巣力が解説を書いていて、当時対談集と…

中沢新一・河合俊雄 編『思想家 河合隼雄』を読む

中沢新一・河合俊雄 編『思想家 河合隼雄』(岩波現代文庫)を読む。河合隼雄はユング派の精神分析家。河合俊雄は河合隼雄の息子。中沢と河合俊雄の対談、河合隼雄の論文に、中沢、鷲田清一、赤様憲雄、河合俊雄、大澤真幸の諸論文、それに養老孟司と河合俊…

鷲田清一『ひとはなぜ服を着るのか』を読む

鷲田清一『ひとはなぜ服を着るのか』(ちくま文庫)を読む。ファッションやモード(流行)を哲学的に分析している。鷲田は現象学が専門の哲学者で大阪大学総長などをしてきている。 わたし自身が(……)哲学者でありながら、ファッションについて文章を書きだ…

石川美子『ロラン・バルト』を読む

石川美子『ロラン・バルト』(中公新書)を読む。カバーの惹句から、 『恋愛のディスクール・断章』『記号の国』で知られる批評家ロラン・バルト(1915−80)。「テクスト」「エクリチュール」など彼が新たに定義し生み出した概念は、20世紀の文学・思想シー…

新宮一成『ラカンの精神分析』を読む

新宮一成『ラカンの精神分析』(講談社現代新書)を読む。これが大変難しかった。もともと16年前に購入し、すぐに読んでいた。当時も難しくてよく分からなかったと思う。傍線を引いた部分が1か所だけで、「文化勲章のような装置が存在するのは、芸術の上にも…

島薗進・橋爪大三郎『人類の衝突』を読む

島薗進と橋爪大三郎の対談『人類の衝突』(サイゾー)を読む。雑誌『月刊サイゾー』に2015年に連載したもので、副題が「思想、宗教、精神文化からみる人類社会の展望」というもの。知人から勧められて読んだ。島薗は宗教学者、橋爪は社会学者で、この二人の…

苅部直『日本思想史への道案内』を読む

苅部直『日本思想史への道案内』(NTT出版)を読む。見出しを拾うと全体の構成が見える。「日本神話」をめぐって/『神皇正統記』の思想/武士の倫理をどうとらえるか/戦国時代の「天」とキリシタン/儒学と徳川社会/「古学」へのまなざし/国学思想と近代…

片山杜秀・島薗進『近代天皇論』を読む

片山杜秀・島薗進『近代天皇論』(集英社新書)を読む。片山は政治思想史研究者、島薗は宗教学者。二人の対談をまとめたものでとても読みやすい。 まず片山が司馬遼太郎の「司馬史観」を紹介する。 片山 島薗先生のお話を聞いていて、もうひとつ思い起こした…

小林敏明『夏目漱石と西田幾多郎』を読む

小林敏明『夏目漱石と西田幾多郎』(岩波新書)を読む。副題が「共鳴する明治の精神」とある。テーマに興味を持って読んだのではなかった。著者小林に興味があったから。小林はきわめて難解な哲学者廣松渉の弟子なのだ。本人は廣松と木村敏に大きな影響を受…

中沢新一『チベットの先生』を読む

中沢新一『チベットの先生』(角川ソフィア文庫)を読む。チベットの先生とは中沢がチベット仏教を学んだケツン・サンポ先生のこと。表紙には先生と並んだ中沢の写真が使われている。なんとなく四方田犬彦の『先生とわたし』を連想した。四方田は彼が師事し…

大澤真幸『考えるということ』を読む(その1)

大澤真幸『考えるということ』(河出文庫)を読む。これが難しいけれどとても面白かった。3つの章に分かれていて、社会科学の章、文学の章、自然科学の章となっている。社会科学では「時間」、文学では「罪」、自然科学では「神」を主題に、それぞれ数冊の本…

『三木清教養論集』を読む

大澤聡・編『三木清教養論集』(講談社文芸文庫)を読む。1931年から1941年までの雑誌等に掲載したエッセイをまとめたもの。昭和6年から16年になる。満州事変開始から真珠湾攻撃の年までだ。 本書は文庫オリジナルで、読書論、教養論、知性論の3部に分かれ、…

ラカン『テレヴィジオン』を読む

ラカン『テレヴィジオン』(講談社学術文庫)を読む。裏表紙の惹句から、 ……フランスの精神分析家が1973年に出演したテレヴィ番組の記録。難解を極める著作『エクリ』で知られるラカンに高弟ジャック・アラン・ミレールが問いかける。一般の視聴者に語られる…

『ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い10分間の大激論の謎』を読む

デヴィッド・エドモンズ&ジョン・エーディナウ『ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い10分間の大激論の謎』(ちくま学芸文庫)を読む。最初に書いてしまうと、羊頭狗肉だった。ポパーとウィトゲンシュタインの大激論とあり、ちく…

いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』がおもしろい

いしいひさいち『現代思想の遭難者たち』(講談社学術文庫)を読む。これがとてもおもしろい。1990年代後半に講談社から『現代思想の冒険者たち』全31巻が刊行された。ハイデガーから始まり、フッサール、ウィトゲンシュタイン、カフカ、ニーチェ、マルクス…

『がん哲学外来へようこそ』を読む

樋野興夫『がん哲学外来へようこそ』(新潮新書)を読む。中村桂子が毎日新聞で紹介していた(2016年5月8日)。アスベストが原因で起きる中皮腫や肺癌などが問題になったとき、樋野は中皮腫の外来がないことに気づく。そこで「アスベスト・中皮腫外来」を順…

内田樹『修行論』を読む

内田樹『修行論』(光文社新書)を読む。内田は哲学者であり合気道の道場を主宰している。本書は主として合気道に関する原稿をまとめたもの。演劇評論家の渡辺保が毎日新聞に書評を掲載していた(2013年9月29日)。それで購入していたが、このほどやっと読ん…

A. ストー/河合隼雄 訳『ユング』を読む

A. ストー 著/河合隼雄 訳『ユング』(岩波現代文庫)を読む。一昨年読んだ最相葉月『セラピスト』(新潮社)でユングに興味を持ち、ついで読んだ河合隼雄『影の現象学』(講談社学術文庫)と河合隼雄『河合隼雄自伝』(新潮文庫)でいっそう興味が増した。…

『丸山眞男と田中角栄』を読む

佐高信・早野透『丸山眞男と田中角栄』(集英社新書)を読む。丸山は先日読んだ安丸良夫の『日本現代思想論』で批判されていたが、それは後期丸山の思想に対する批判であって、丸山が戦後の日本政治思想史の巨峰であることに何ら疑いはない。ところが本書は…

安丸良夫『現代日本思想論』を読む

安丸良夫『現代日本思想論』(岩波現代文庫)を読む。とても充実した読書だった。安丸を読むのは多分初めてだ。カバーの解説に、 民衆思想史の立場から「近代」の意味を問い続けてきた著者が、眼を現代に転じ、1970年代以降の思想状況の批判的読解に挑む。戦…

諏訪兼位という人

朝日新聞の読者が投稿する短歌のページ「朝日歌壇」にしばしば掲載される名前は知らずに覚えてしまう。直近(8月10日)では、岡田独甫、金忠亀、九螺ささら等に見覚えがある。もう一人名古屋市在住の諏訪兼位という人がいる。この名前なんて読むのだろう。以…

成田龍一『加藤周一を記憶する』を読む

成田龍一『加藤周一を記憶する』(講談社現代新書)を読む。新書とは言え450ページもあり、大分なものだ。成田は加藤の著作を初期から晩年まで実に丁寧に跡付けてその一つ一つに簡単な評価を加えている。ほとんど全著作に及ぶほどの徹底したものだ。あまりに…

前衛歌人の岡井隆が転向について語っている

朝日新聞夕刊の連載コラム「人生の贈りもの」で岡井隆が自分の転向について語っている(2月26日)。この連載コラムは著名人に自伝的なことを語らせるというもので、この日は岡井隆の9回目の語りになる。 (前略) −−かつてのマルキストが、どのようにして…

子安宣邦『日本近代思想批判』を読んで

子安宣邦『日本近代思想批判』(岩波現代文庫)を読む。子安がさまざまな雑誌に書いた10編の論文をまとめたもの。タイトルから予想されるような難解な論文ではなく、なかなか楽しめた。とくに丸山真男の『日本政治思想史研究』と和辻哲郎の『風土』に対する…

中沢新一『バルセロナ、秘数3』を読んで

中沢新一『バルセロナ、秘数3』(講談社学術文庫)を読む。本書は、1989年に雑誌『マリ・クレール』のために、取材に出かけたスペインバルセロナへの旅行記だ。しかし、あとがきに相当する「postluoi」に中沢が書いているように「風変わりな旅行記」だ。旅…

ブーイサック『ソシュール超入門』を読む

ポール・ブーイサック『ソシュール超入門』(講談社選書メチエ)を読む。タイトル通りの言語学者ソシュールの思想に関する分かりやすい優れた入門書だ。ソシュールは1910年〜1911年にかけての学年度に一般言語学講義を週2回行った。それは1年おきに行って…

『ハンナ・アーレント』を読む

矢野久美子『ハンナ・アーレント』(中公新書)を読む。宇野重規が読売新聞の書評欄で紹介していた(5月4日)。 ハンナ・アーレントというと、全体主義やら革命を論じた、ちょっと怖そうな政治哲学者というイメージがあるかもしれない。ところが、日本でも…

鈴木正『狩野亨吉の研究』が復刻される

鈴木正『狩野亨吉の研究』(ミネルヴァ書房)が43年ぶりに復刊された。狩野亨吉は慶応元(1865)年生まれ、帝国大学在学中に夏目漱石と親しくなる。若くして第一高等学校校長、のち京都帝国大学文科大学学長を務める。江戸時代の特異な思想家安藤昌益の著書…