牧野雅彦『ハンナ・アレント』を読む

 牧野雅彦『ハンナ・アレント』(講談社現代新書)を読む。本書は「現代新書100(ハンドレッド)」という新しいシリーズで、帯には次のように書かれている。

 

①それは、どんな思想なのか(概論) ②なぜ、その思想が生まれたのか(時代背景) ③なぜ、その思想が今こそ読まれるべきなのか(現在への応用)

テーマを上記の3点に絞り、本文100ページ+αでコンパクトにまとめた、「一気に読める教養新書」です。

 

 本文100ページ+αというのは、普通の新書のおよそ半分だ。価格もそれなりに安くなっている。しかし、半分のページで思想家を紹介するというのは、著者にとってはかなりハードルが高いのだろう。「あとがき」によると、編集長から設定されたのは、「難しい専門用語、業界用語は禁止」、「他の思想家との比較も禁止」等々厳しい注文だったようだ。

 ただ、ページの節約のため、アレントの発言なのか牧野の発言なのか不分明なところがある。アレントがこう言っているというのではなく、牧野の発言のように読めてしまったり、明らかに牧野の発言だったりすることが混在している。

 牧野はアレントの思想のうち、全体主義批判に的を絞って全体を構成している。そしてハイデガーとの愛人関係とかベンヤミンとの交流とか伝記的なエピソードにはほとんど触れないでいる。

 以前読んだ矢野久美子『ハンナ・アーレント』(中公新書)の方が初心者には解り易かった印象がある。

 「現代新書100(ハンドレッド)」の表記は帯のみで、カバーにも奥付にも記されていない。100ページは短いとも思えるが、NHKの「100分de名著」のテキストもほぼ同じくらいの分量なのだから。また、束(本の厚さ)を出すために厚めの用紙を採用していて、ページがめくりにくかった。

 今度は森分大輔『ハンナ・アーレント』(ちくま新書)を読んでみよう。