文学

『吉野弘詩集』を読む

『吉野弘詩集』(角川春樹事務所)を読む。これは「にほんの詩集」という12冊のラインナップの1冊だ。ほかには、『谷川俊太郎』『長田弘』『中島みゆき』『金子みすゞ』『萩原朔太郎』『中原中也』『石垣りん』『まど・みちお』『寺山修司』『工藤直子』『宮…

幸田文『木』を読む

幸田文『木』(新潮文庫)を読む。名文家といえば私にとって、佐多稲子、幸田文、そして野見山暁治だ。幸田文は幸田露伴の娘、青木玉の母親。本書は単行本が発行された1992年に読んでいるから30年ぶりの再読になる。 最初の「えぞ松の更新」はとても印象に残…

大岡昇平『小林秀雄』を読む

大岡昇平『小林秀雄』(中公文庫)を読む。大岡が先輩であり師であった小林秀雄について書いた文章を集めた文庫オリジナル。第1部に批評・書評を、第2部にエッセイ、第3部に追悼文を収め、小林と大岡の対談2編を収録している。 大岡が小林に初めて会ったのは…

『小林秀雄 江藤淳 全対話』を読む

『小林秀雄 江藤淳 全対話』(中公文庫)を読む。17年間に行った5回の対談を網羅したもの。文庫オリジナルという。 一応日本を代表する知性の対談で楽しみにして読んだが、柄谷行人の濃密な対談を読んだ後では、慣れ合った二人のスカスカの雑談を読まされて…

金井美恵子『新・目白雑録』を読む

金井美恵子『新・目白雑録』(平凡社)を読む。金井の『目白雑録』シリーズは朝日新聞出版のPR誌『一冊の本』に連載されていて、ある分量が貯まると朝日新聞出版から単行本が出版されてきた。単行本は5巻まで発行され、しばらくするとそれが朝日文庫になって…

金井美恵子『〈3・11〉はどう語られたか』を読む

金井美恵子『〈3・11〉はどう語られたか』(平凡社ライブラリー)を読む。購入してよく見たら、本書は9年前に朝日新聞出版から発行された『目白雑録5 小さいもの、大きいこと』のタイトルを変えての再発行だった。すでに1度読んでいたし、ブログにも紹介し…

小林貴子『句集 黄金分割』を読む

小林貴子『句集 黄金分割』(朔書房)を読む。小林は1959(昭和34)年、長野県飯田市生まれ。松本の「岳」俳句会に所属し編集長を務めている。先に亡くなった稲畑汀子に代わって、4月から朝日俳壇の選者に就任した。 本書は2008(平成21)年~2014(平成26…

矢島渚男『虚子点描』を読む

矢島渚男『虚子点描』(紅書房)を読む。本書について矢島が「あとがき」で書いている。 これは自分の俳誌『梟』に毎号1ページの短文を「虚子雑談」として好きな句や気になる句を季節に従いつつ、青年時代を書いたり、晩年の作品に行ったり、壮年期に戻った…

荒川洋治 編『昭和の名短篇』を読む

荒川洋治 編『昭和の名短篇』(中公文庫)を読む。荒川洋治は現代詩人だが、本の読み巧者でもある。荒川の取り上げる書評は面白く私は絶大な信頼を寄せている。その荒川が取り上げた昭和の名短篇のアンソロジー。志賀直哉から色川武大までの14人の作家の14作…

江藤淳『石原慎太郎・大江健三郎』を読む

江藤淳『石原慎太郎・大江健三郎』(中公文庫)を読む。江藤が石原と大江について書いたのをまとめたもので、文庫オリジナルとうたっている。とはいえ、石原への言及が多く、大江に関しては初期に高く評価したものの、『万延元年のフットボール』あたりから…

死臭について

高見順の詩「三階の部屋」を引く。 三階の部屋 窓のそばの大木の枝に カラスがいっぱい集まってきた があがあと口々に喚(わめ)き立てる あっち行けとおれは手を振って追い立てたが 真黒な鳥どもはびくともしない 不吉な鳥どもはふえる一方だ おれの部屋は…

高見順『死の淵より』を読む

高見順『死の淵より』(講談社文芸文庫)を読む。1963年(昭和38年)、高見順は食道がんと診断され、手術を受ける。翌年6月、再度入院し手術を受ける。詩集「死の淵より」を発表する。これによって野間文芸賞受賞。12月入院し手術を受ける。翌1965年3月、ま…

閻連科『年月日』を読む

閻連科『年月日』(白水uブックス)を読む。閻連科は「えんれんか」と読み、1958年生まれの中国の作家。2014年には村上春樹に続いてアジアでは二人目となる、フランツ・カフカ賞を受賞している。 本書は象徴的な小説で、ヘミングウェイの『老人と海』やカフ…

『シンボルスカ詩集』を読む

つかだみちこ編・訳『シンボルスカ詩集』(土曜美術社出版販売)を読む。1996年度のノーベル文学賞受賞のポーランドの詩人。フルネームはヴィスワヴァ・シンボルスカ、1923年生まれの女性詩人だ。中に「橋の上の人々」という詩がある。私はまさかこれは鮎川…

長谷川櫂『俳句と人間』を読む

長谷川櫂『俳句と人間』(岩波新書)を読む。岩波書店のPR誌『図書』に2019年10月から2021年10月まで連載したエッセイ。これが素晴らしい。冒頭、右太腿に皮膚がんができていたという個人的な話題から始まる。そこから正岡子規が脊椎カリエスと診断されたと…

丸谷才一・編『恋文から論文まで』を読む

丸谷才一・編『恋文から論文まで』(福武書店)を読む。まえがきみたいな文章で、編者の丸谷が書いている。 (……)随筆がある。評論がある。対談がある。講義がある。題材も、恋文、料理、作文、卒業論文、小説、悪文と幅が広い。筆者の職業だつて、いろいろ…

司馬遼太郎『この国のかたち 六』を読む

司馬遼太郎『この国のかたち 六』(文春文庫)を読む。司馬が『文藝春秋』の巻頭言として連載していたものだが、「歴史のなかの海軍」を書いていて、その5回目を書いたところで亡くなってしまう。この優れた論考は未完で中断してしまった。 「歴史のなかの海…

鮎川信夫・大岡信・北川透 編『戦後代表詩選 続』を読む

鮎川信夫・大岡信・北川透 編『戦後代表詩選 続』(思潮社 詩の森文庫)を読む。先日読んだ正編の続きで、副題が「谷川俊太郎から伊藤比呂美」。『現代詩の展望』(1986年11月刊)の「戦後史100選」を2冊に分けて編集したものの後編に当る。38人の戦後詩人の…

高橋源一郎・斎藤美奈子『この30年の小説、ぜんぶ』を読む

高橋源一郎・斎藤美奈子『この30年の小説、ぜんぶ』(河出新書)を読む。二人が雑誌『SIGHT』で「ブック・オブ・ザ・イヤー」という名称の対談を2003年から2014年まで行った。そのうちの2011年以降、2014年までのものを収録し、さらに2019年に「平成の小説を…

鮎川信夫・大岡信・北川透 編『戦後代表詩選』を読む

鮎川信夫・大岡信・北川透 編『戦後代表詩選』(思潮社 詩の森文庫)を読む。副題が「鮎川信夫から飯島耕一」で、『現代詩の展望』(1986年11月刊)の「戦後史100選」を2冊に分けて編集したものの前編に当る。42人の戦後詩人の56篇が掲載されている。 ほぼ1…

吉本隆明『際限のない詩魂』を読む

吉本隆明『際限のない詩魂』(思潮社 詩の森文庫)を読む。副題が「わが出会いの詩人たち」で、斎藤茂吉から中島みゆきまで22人の詩人たちが紹介されている。萩原朔太郎のように本格的な詩人論から、永瀬清子や中村稔、諏訪優、岸上大作のように、帯や内容見…

鮎川信夫 他『現代詩との出合い』を読む

鮎川信夫 他『現代詩との出合い』(思潮社 詩の森文庫)を読む。副題が「わが名詩選」とあり、7人の詩人が選んだアンソロジーになっている。鮎川の他には、田村隆一、黒田三郎、中桐雅夫、菅原克己、吉野弘、山本太郎が選んでいる。 鮎川は萩原朔太郎、西脇…

『新編 齋藤怘詩集』を読む

『新編 齋藤怘詩集』(土曜美術社出版販売)を読む。齋藤は1924年(大正13年)朝鮮半島のソウル生まれ、終戦の年までほぼ朝鮮半島で成長する。敗戦後、熊本の天草に引揚げる。のちに日本現代詩人会理事長、現代詩人賞選考委員、H氏賞選考委員長を務める。 齋…

天下大将軍 地下女将軍

西武池袋線高麗駅前に赤い2本の柱が立っていて、大きく「天下大将軍 地下女将軍」と書かれている。これは何だろう。この地が朝鮮半島ゆかりの地であることは知っている。有名な高麗神社があるし、近くには九万八千社という不思議な名前の神社もある。九万も…

丸谷才一『夜中の乾杯』を読む

丸谷才一『夜中の乾杯』(文春文庫)を読む。丸谷が文藝春秋の雑誌『Emma』に昭和60年の創刊号から61年に連載したもの。やはり最初は丸谷と言えどおぼつかなかった。途中から丸谷節が戻り面白くなる。 「ヒゲを論ず」から、 淡谷のり子といふ大姉御は、若い…

大岡信ほか『忘れえぬ詩』を読む

大岡信ほか『忘れえぬ詩』(思潮社 詩の森文庫)を読む。8人の詩人たちが選んだ「忘れえぬ詩」のアンソロジー。大岡信のほかに、那珂太郎、飯島耕一、岩田宏、堀川正美、三木卓が書いている。 大岡は万葉集以前の古事記などから応神天皇の歌、万葉集や古今集…

平林敏彦『言葉たちに』を読む

平林敏彦『言葉たちに』(港の人)を読む。副題が「戦後詩私史」、平林が自身の詩歴や古い仲間たちとの交友を書いている。さらに近作の詩を10篇近く収録している。 平林の詩に対して武満徹が私信で「人類が言葉を喪おうとしているとき、このように彫琢された…

丸谷才一『猫だつて夢を見る』を読む

丸谷才一『猫だつて夢を見る』(文春文庫)を読む。丸谷才一の博識を楽しむ。 1975年の統計で韓国人一人あたりの平均1日の唐辛子消費量は5グラムから6グラム。ところが日本人の消費量は一人年間1グラム。これぢやあ、はつきりと文化が違ふ。韓国系日本人…

坪内稔典『俳句いまむかし』を読む

坪内稔典『俳句いまむかし』(毎日新聞出版)を読む。毎日新聞に連載している「季語刻々」から編集したもの。季語刻々は一つの季語について、今と昔の句を挙げ、坪内の感想をなにか書くというスタイルで続いてきた。 佐保姫の春立ちながら尿(しと)をして …

吉増剛造『詩とは何か』を読む

吉増剛造『詩とは何か』(講談社現代新書)を読む。現代詩人の吉増が「詩とは何か」と題して語っている。文字通り語っているらしい。自分の喋りを録音して原稿に起こしている。 様々な詩人や哲学者、音楽家たちに言及する。最初にディラン・トマス、李白、エ…