2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

片山杜秀『鬼子の歌』を読む

片山杜秀『鬼子の歌』(講談社)を読む。副題が「偏愛音楽的日本近現代史」というもの。雑誌『群像』に2年半ほど連載していた日本のクラシック音楽の作曲家たちの代表曲の紹介と解説。片山は日本政治思想史の専門家だから、読み応えのある見事な評論集になっ…

横尾忠則の書評

朝日新聞の書評欄に変な画像が掲載されていた(4月27日)。「解題」によると、アラン・ド・ボトンとジョン・アームストロングの共著『美術は魂に語りかける』(河出書房新社)の横尾忠則による書評だという。この「書評」は横尾が活字だけを使ったアート作品…

令和に寄せて

朝日新聞の連載「オトナになった女子たちへ」で伊藤理佐が書いている(4月26日朝刊)。 ……ふだん、ラジオ生活の今年50歳は、4月1日、「テレビの前」に座っていた。春休みのムスメ(9)も誘って。だって、ムスメは将来、 「えー、〇〇君、令和生まれ? わか…

アキバタマビ21の「Para-monument」を見る

東京秋葉原のアキバタマビ21で「Para-monument」が開かれている(5月18日まで)。アキバタマビ21は多摩美術大学が運営する若い作家たちのための作品発表の場。今回は新井夏菜、一井すみれ、望月美葵、大和春子、渡壁遥が参加している。私には新井と渡壁が面…

アートトレースギャラリーの倉持幸子展を見る

東京両国のアートトレースギャラリーで倉持幸子展が開かれている(5月5日まで)。倉持は1979年神奈川県生まれ。2002年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業し、2005年に同大学大学院美術専攻油絵コースを修了している。2005年に本ギャラリーで初個展、以…

東京国立近代美術館工芸館の「The 備前」を見る

東京北の丸公園の東京国立近代美術館工芸館で「The 備前」という備前焼の展覧会が開かれている(5月6日まで)。備前焼は桃山時代から媚び膳と呼ばれた名品があるが、それらは撮影が禁じられていた。ここには現代の陶工たちの作品を紹介する。 空充秋 隠崎隆…

佐藤美術館の「トーホクコーリング」を見る

東京新宿区の佐藤美術館で東北工科芸術大学の「TOHOKU CALLINGトーホクコーリング」が開かれている(5月1日まで)。3階、4階、5階の3つのフロアーを使って東北芸術工科大学の大学院生や出身者たち、教師たちの展覧会が開かれている。 赤沢慶二郎 春原直人 …

トキ・アートスペースの小林花子展を見る

東京外苑前のトキ・アートスペースで小林花子展が開かれている(4月28日まで)。小林は1971年東京都生まれ、1995年武蔵野美術大学彫科を卒業し、1997年愛知県立芸術大学大学院美術研究科を修了している。その後トキ・アートスペースでもう10回個展をしている…

東京国立近代美術館の常設を見る

東京国立近代美術館の常設を先月末頃見た。現代美術の印象に残った作品を撮影した。 山口長男:山口は良い。戦後最も優れた日本の画家だろう。 岡本太郎「燃える人」:第五福竜丸をテーマにしている。作品は良くない。 木内克:テラコッタ。こんなに大きいの…

三浦哲哉『食べたくなる本』を読む

三浦哲哉『食べたくなる本』(みすず書房)を読む。簡単に言えば料理書の書評集なのだが、かなり詳しく紹介し、料理に対する各著者の思想みたいなものにまで踏み込んでいる。さすがに取り上げられるのは超絶名人の料理書が多い。ここまで凝ったことをして味…

若葉町ウォーフで演劇ユニットnoyRの『ニーナ会議‐かもめより‐』を見る

横浜黄金町の若葉町ウォーフで演劇ユニットnoyRの『ニーナ会議‐かもめより‐』が上演されている(4月28日まで)。チェーホフの『かもめ』を原作として、樋口ミユ構成・演出で『かもめ』の登場人物のひとりニーナを主人公にして再構成している。ニーナがオリジ…

ヒノギャラリーのエルヴィーン・レーグル展を見る

東京八丁堀のヒノギャラリーでエルヴィーン・レーグル展が開かれている(4月20日まで)。レーグルは、1954年ドイツバイエルン州出身の彫刻家。ヒノギャラリーでは5年ぶり2回目の個展となる。ギャラリーのホームページに掲載されていた言葉。 レーグルの作品…

オフィスIIDAの佐藤杏子展を見る

東京銀座のオフィスIIDAで佐藤杏子展が開かれている(4月27日まで)。佐藤は1954年茨城県生まれ、1980年に多摩美術大学大学院を卒業している。1997年から1年間文化庁の在外研修員としてチェコ共和国に派遣されている。各地で個展を開いているがギャラリー砂…

ギャラリーなつかの瀧田亜子展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで瀧田亜子展が開かれている(4月23日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。2年間ほど中国へ留学し書を学んできた。2003年ギャラリー・オカベで初個展、以来、なびす画廊での個展を中心に銀座の画廊で発表を繰り返してきた。一昨年…

ギャラリーTOWEDの落合光・林もえ2人展「Kronos」を見る

東京墨田区京島のギャラリーTOWED(トウド)で落合光・林もえ2人展「Kronos」が開かれている(4月28日まで)。林は1995年、京都府生まれ。たぶん2018年に京都教育大学教育学部を卒業していると思う。2017年に大阪の画廊で初個展。落合についてはデータがなく…

山本弘は晩年断酒までして誰も買わない絵を量産したのか?

山本弘は昭和5年に生まれた。日中戦争が勃発したときは10歳だった。山本は戦争に夢中になり、絵が巧かったことから軍艦や戦闘機の絵を描きまくっていた。15歳のときに予科練へ入隊すると言って家を出たが、おそらく終戦と重なってか入隊は叶わなかった。8月1…

アートギャラリー環の鏑木昌弥展を見る

東京神田のアートギャラリー環で鏑木昌弥展「まなざしの行方 Part 8」が開かれている(4月20日まで)。鏑木は19638年、東京都生まれ。1962年に多摩美術大学美術学部油画科を卒業している。このアートギャラリー環ではもう30回以上ほぼ毎年個展を開催している…

須藤靖『不自然な宇宙』を読む

須藤靖『不自然な宇宙』(ブルーバックス)を読む。須藤は東京大学大学院物理学専攻教授とある。専門は宇宙物理学、特に宇宙線と太陽系外惑星の理論的および観測的研究とある。私は東京大学出版会のPR誌『UP』に不定期に連載されている須藤のエッセイ「注文…

ギャラリーa-cubeとボヘミアンズギャラリーの桑原盛行展を見る

東京渋谷のギャラリーa-cubeとa-cube+、そして神田神保町のボヘミアンズギャラリーで桑原盛行展が開かれている(4月12日まで)。桑原は1942年広島県生まれ、1967年に日本大学芸術学部を卒業している。はじめサトウギャラリーや南画廊で個展を開いていたが、…

うしお画廊の井上敬一展を見る

東京銀座のうしお画廊で井上敬一展が開かれている(4月13日まで)。井上は1947年、福岡県田川市生まれ。1980年に福岡教育大学美術研究科を修了している。井上は銀座のみゆき画廊で個展をしていたが、みゆき画廊が閉じてからはうしお画廊で個展を開いている。…

新発見の長谷川利行の作品が現れた

長谷川利行の作品が現れた。4号くらいの厚紙に油彩で描かれた風景画だ。墨田区にあったお堂を描いたものらしい。サインは「T. HASEKAWA 32」となっている。1932年に描かれたもののようだ。昭和7年、利行41歳のときの作になる。厚紙の裏にはフランス語が印刷…

宇フォーラム美術館の菅野美榮・桝本純子展を見る

東京国立市の宇フォーラム美術館で菅野美榮・桝本純子展が開かれている(4月14日まで)。 菅野は群馬県出身、1968年共立女子短期大学を卒業したのち、1971年日本デザインスクールを卒業している。1990年、銀座のギャラリー・オカベで初個展。その後、ギャラ…

アートスペース水音の田端麻子展を見る

東京吉祥寺のアートスペース水音で田端麻子展が開かれている(4月13日まで)。田端は1972年神奈川県藤沢市生まれ、1996年に多摩美術大学油画専攻を卒業している。 田端はいつも不思議な絵を描き、また変わったオブジェを作っている。今回画廊の真ん中に立体…

ストライプハウスギャラリーの大坪美穂展「アルボス―沈黙の森―」を見る

東京六本木のストライプハウスギャラリーで大坪美穂展「アルボス―沈黙の森―」が開かれている(4月17日まで)。大坪は1968年に武蔵野美術大学油絵科を卒業している。今まで銀座のシロタ画廊やギャルリ・プスなど各地で個展を開いていて、韓国やインドのグルー…

ギャラリー砂翁の葛生裕子展を見る

東京日本橋本町のギャラリー砂翁で葛生裕子展が開かれている(4月13日まで)。葛生は1965年東京生まれ、1988年に多摩美術大学絵画科を卒業している。1986年にかねこあーとギャラリーで初個展をし、その後西瓜糖、コバヤシ画廊、藍画廊、ルナミ画廊、秋山画…

赤坂真理『東京プリズン』を読む

赤坂真理『東京プリズン』(河出文庫)を読む。裏表紙の惹句から、 日本の学校になじめずアメリカの高校に入学したマリ。だが今度は文化の違いに悩まされ、落ちこぼれる。そんなマリに、進級をかけたディベートが課される。それは日本人を代表して「天皇の戦…

斎藤美奈子『日本の同時代小説』を読む

斎藤美奈子『日本の同時代小説』(岩波新書)を読む。「はじめに」で、「明治以降の小説の歴史を知りたい人にとって、岩波新書の中村光夫『日本の近代小説』(1954)、『日本の現代小説』(1968)は親切な入門書、かつ便利なガイドブックです。前者は明治大…