横浜黄金町の若葉町ウォーフで演劇ユニットnoyRの『ニーナ会議‐かもめより‐』が上演されている(4月28日まで)。チェーホフの『かもめ』を原作として、樋口ミユ構成・演出で『かもめ』の登場人物のひとりニーナを主人公にして再構成している。ニーナがオリジナルの外に3人登場する。その3人がニーナの内面の声を語るのだが、実際にニーナ1、2、3として同時に舞台に出ているのだ。
登場人物は4人のニーナのほかは、最初ニーナと相思相愛だったトレーブレフと、トレーブレフの母親の愛人である有名な作家のトリゴーリンだけ。ニーナはトレーブレフを捨ててモスクワへ帰ったトリゴーリンを追って、女優を目指してモスクワに行く。やがてトリゴーリンに棄てられ女優としても成功することなく地方回りをしている。
巡業で近くまで来たときニーナはトレーブレフに会いに来るが、今でもニーナは自分を捨てたトリゴーリンを愛していると言ってトレーブレフの愛を拒絶する。トレーブレフは書いていた小説の原稿を捨てて拳銃自殺する。
構成・演出の樋口ミユはニーナの心に寄り添っていく。ニーナの影のような3人のニーナを作って、ニーナの意識の流れのような内面の声を舞台に露出させる。それによって原作の『かもめ』で主役たちのひとりであったニーナが、たったひとりのヒロインとして脚光を浴びる。
最後に彷徨うようなニーナの姿を3人のニーナの影たちが下着姿になって演じる。客席数20ほどの広くはない会場で、間近に見る下着姿の女優たちの容姿は内気な私にとって、見てはいけないような居心地の悪さを感じさせられた。もっと大きな会場で遠望するのなら冷静に見られたのだろうが。
このように再構成を許し、それをも成功させるチェーホフの偉大さを再確認した。またチェーホフを見てみたい。
出演は、大木実奈、富岡英里子、平井光子、大道朋奈、仲道泰貴、鈴木昌也。ピアノが黒木佳奈で、このピアノが良かった。曲は武満徹の「小さな空」だった。(黒木さんが教えてくれた)。
公演の詳細は、
https://stage.corich.jp/stage_main/79850