2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧
山村修『〈狐〉が選んだ入門書』(ちくま新書)を読む。2007年6月初版発行、その月のうちに買っておいたが今回やっと読んだ。何となく入門書の紹介なんて……という気がしていたのか、読まないでいた。間違いだった。とても有益なブックガイドだった。 山村は…
赤瀬川原平に「宇宙の缶詰」という作品がある。空き缶の内側にラベルを貼って、缶詰の内側を外部の世界とし、缶詰の外側の全世界・全宇宙を缶詰の中身に見立てたものだ。缶詰の中の小さな空間が「世界」に変わり、全世界・全宇宙が缶詰の中身に転換するとい…
国立新美術館で中村一美展が開かれている(5月19日まで)。これがすばらしかった。中村は1956年生まれ、しばしば東京京橋の南天子画廊で個展を開いている。野見山暁治より36歳若く1世代下ということになる。ポスト野見山は中村一美に決まったと思った。 美…
山本弘のドローイング「愛子」、1968年4月5日制作。天地420mm、左右355mm。当時山本弘37歳、愛子夫人26歳。画面に書き込まれた日付を見ても分かるように、すでにアル中による脳血栓のため手足が不自由だった。その不自由な手でこんなに見事な線を描いてい…
泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』(創元推理文庫)を読む。ミステリ作家泡坂妻夫のデビュー作という。泡坂の造形した探偵が亜愛一郎だ。姓が「亜」という変わったもの。専門の探偵ではない。いつもたまたま事件の現場に居合わせ、刑事たちには分からない見事な推…
東京銀座の藤屋画廊で伊勢あゆみ展が開かれている(3月30日まで)。伊勢は生年も出身地も教えてくれなかった。2012年に多摩美術大学日本画科を卒業し、今年2014年に同大学大学院を修了している。学内でのグループ展に参加しただけで、学外では発表したこと…
『小林秀雄対話集 直感を磨くもの』(新潮文庫)を読む。小林が昭和16年に三木清と対話したものから、亡くなる4年前の昭和54年にに河上徹太郎と対話したものまで、40年近く12人との対話をまとめたもの。その相手は三木、河上のほか、横光利一、湯川秀樹、三…
3月23日に花を撮影した。富士桜はその2日前春分の日のもの。 雪柳(ユキヤナギ)が咲いている。バラ科シモツケ属。 クリスマスローズ、キンポウゲ科に属し、葉や根茎は有毒とのこと。 トサミズキ(土佐水木)、マンサク科。 チョウセンレンギョウ(朝鮮連…
鈴木正『狩野亨吉の研究』(ミネルヴァ書房)が43年ぶりに復刊された。狩野亨吉は慶応元(1865)年生まれ、帝国大学在学中に夏目漱石と親しくなる。若くして第一高等学校校長、のち京都帝国大学文科大学学長を務める。江戸時代の特異な思想家安藤昌益の著書…
島田裕巳『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』(幻冬舎新書)を読む。タイトルが幻冬舎らしいケレン味たっぷりなものだが、著者の島田は真面目な宗教学者だ。神社本庁が行った「全国神社祭祀祭礼綜合調査」の結果、全国の神社を多い順に並べると、1位 …
熊野純彦『和辻哲郎』(岩波新書)を読む。本書は2009年に発行されたが、どこの書店を回っても置いてなかった。しかたなくAmazonで赤線の書き込まれた古書を手に入れた。読み終わってなぜ増刷されないかおぼろげに分かった気がする。一つは和辻哲郎がいま流…
Steps ギャラリーでミレナ・ミロサヴリェヴィッチ展が開かれた(3月10日〜15日)。ギャラリーの画廊主吉岡まさみのブログで、ミレナ・ミロサヴリェヴィッチのことが紹介されている。それがとても示唆的なので吉岡の許可を得て転載する。 彼女は今デュッセル…
新国立劇場ドラマスタジオ第7期生修了公演『9階の42号室』を見る。作:飯沢匡、演出:栗山民也。新国立劇場演劇研究所で3年間学んだ研修生たちの修了公演だ。今回は日本の現代劇の喜劇が選ばれた。 研修生の芝居はこれでなかなか上手だし、演出も一流なの…
3月上旬の花。いつもの小さな植物園と旧中川の南向きの土手でみつけた。 オオイヌノフグリ タンポポ(西洋タンポポだろう) ナズナ(別名ぺんぺん草) ホトケノザ 雪割草(ミスミソウ) クロッカス トサミズキ ボケ 白梅
井上ひさし作『化粧』を紀伊國屋ホールで見る。出演:平淑恵、演出:鵜山仁、こまつ座公演。そのちらしから、 さびれた芝居小屋の淋しい楽屋。 その楽屋に遠くから客入れの演歌が流れ込んでくるやいなや、大衆演劇女座長、五月洋子は、座員一同に檄を飛ばし…
山梨市が18日に予定していた上野千鶴子の講演を中止したと、朝日新聞が伝えている(3月15日)。山梨市が昨秋上野千鶴子に講演を依頼したが、2月に初当選した望月清賢市長が反対して中止を決めたという。上野の講演は「介護や、最後までひとりで生きる心構…
東京西麻布のMIZENKAギャラリーで吉岡まさみ展「The Secret Memory」が開かれている(3月16日まで)。 吉岡は画廊の壁面に紙テープを貼るインスタレーションを繰り返し行っている。昨年はアメリカと西ドイツに招かれて同じようなコンセプトの個展を行ってき…
ブログを開始して8年経った。2006年の3月14日、梅田望夫の『ウェブ進化論』(ちくま新書)を読み終わってすぐブログを開始した。梅田さんの本がきっかけだったから、彼が重役を勤めている「はてな」にした。以来丸8年、書いた日数は2700日余、アクセス数…
東京銀座のギャラリー現で松崎勝弘展が開かれている(3月15日まで)。松崎は1969年茨城県生まれ。1991年にBゼミ schooling systemを修了している。1996年熱海の画廊で初個展。2003年からは毎年個展を開いているが、その内の1回2007年を除いてすべてギャラ…
東京銀座4丁目のStepsギャラリーでミレナ・ミロサヴリェヴィッチ展が開かれている(3月15日まで)。これがとても良い。ミレナは1986年セルビア、ノヴィ・パザル生まれの27歳。2009年にベオグラード芸術大学美術学部を卒業し、2011年ドイツ、デュッセルドル…
本橋信宏『東京最後の異界 鶯谷』(宝島社)を読む。以前読んだ森川嘉一郎『趣都の誕生』(玄冬舎)の類だろうと思った。『趣都の誕生』は2003年に単行本が発行されたもので、オタクの街としての秋葉原を紹介している。これが発行された10年前はまだ秋葉原に…
近所の公園でカンアオイ(寒葵)が咲いている。およそ被子植物中もっとも地味な花のひとつではないか。これが花なのだ。カンアオイはウマノスズクサ科、常緑性多年草で日陰の林内に生育する。Wikipediaを参照すれば、カンアオイの花粉媒介はカタツムリやナメ…
サルトル作『アルトナの幽閉者』を見る。演出:上村聡史、翻訳:岩切正一郎。新国立劇場小ホール公演。 公演のちらしから、 (……)第二次世界大戦後のドイツを舞台に、戦時中の心の傷から13年も、自宅に引きこもったままの主人公フランツを軸に、「戦争」と…
青柳いづみこ『アンリ・バルダ 神秘のピアニスト』(白水社)がすばらしい。アンリ・バルダ? 聞いたことのないピアニストだ、大昔のピアニストか? と思ったが、本の表紙に写っているピアニストの写真は古いものには見えない。読んでいくと分かるのだが、19…
東京京橋のLIXILギャラリーで伊藤幸久展「あなたならできるわ」が開かれている(4月12日まで)。伊藤は1981年東京都生まれ。2013年金沢美術工芸大学美術工芸研究科博士後期課程彫刻分野満期退学と画廊のパンフレットに書かれている。金沢市のギャラリーで個…
座・高円寺の劇場創造アカデミー4期生終了上演『戦争戯曲集・三部作』に圧倒された。作者のエドワード・ボンドはイギリスの劇作家、「三部作」と題されたとおり、第一部『赤と黒と無知」、第二部『缶詰族』、第三部『大いなる平和』からなっている。これを…
東京銀座のギャラリー現で森谷志保子展が開かれている(3月8日まで)。森谷は1948年生まれ。ギャラリー現で何度も個展を開いている。画廊でファイルを見せてもらうと、1990年代の頃は毎日配達される新聞紙を糊付けして重ねた作品を作っていた。最近は人物…
南向きの暖かい一角でホトケノザが咲き始めた。しかし、よく見ると咲いている花のそばに濃い赤色の蕾のようなものがいくつも付いているのが眼につく。これはホトケノザの閉鎖花だ。閉鎖花について、岩瀬徹・大野啓一『写真で見る植物用語』によれば、 閉鎖花…
2月末日は4月の気候だった。近所の公園や旧中川の土手では春の花々が見られた。 福寿草は最盛期を過ぎていた。 紅ナデシコという品種の福寿草を初めて見た。花びらがナデシコに似ていて花の色が紅色なのでからこの名があるらしい。 ユキワリイチゲが満開に…
金井美恵子『小説を読む、ことばを書く』(平凡社)を読む。これは「金井美恵子エッセイ・コレクション」の3巻目になる。エッセイにおいて金井は徹底して辛辣だ。「岡本かの子覚書」において、 (……)たとえば、丸谷才一氏が、この文章に対して「力を見せる…