MIZENKAギャラリーの吉岡まさみ展「The Secret Memory」が興味深い

 東京西麻布のMIZENKAギャラリーで吉岡まさみ展「The Secret Memory」が開かれている(3月16日まで)。

 吉岡は画廊の壁面に紙テープを貼るインスタレーションを繰り返し行っている。昨年はアメリカと西ドイツに招かれて同じようなコンセプトの個展を行ってきた。吉岡の制作方法については以前も紹介したことがあるが、次のようなものだ(2012年6月3日)。

1.B1の大きさの紙にマジックインクでドローイングする。
2.ドローイングを縮小コピーし、透明フィルムに転写する。
3.プロジェクターを使って、フィルム作品を画廊の壁に大きく投影する。
4.投影された作品の線の上をなぞりながらデザインテープを貼っていく。
5.テーピングはすべてスタッフが行い、作家本人は制作に加わらない。
 吉岡の作品のユニークな点は、制作最後の画廊の壁面へのテープを貼る作業をスタッフにまかせ、吉岡が一切タッチしないところだ。もちろんドローイングは吉岡が描くし、テープの色もどの壁面に投影するかも吉岡が決めているが、仕上げには一切タッチしていないのだ。
 似た作業をしている作家とどう違うのか。村上隆は工房でスタッフを使って制作している。しかし最後は村上がチェックして完成させている。
 もう一つはエスタンプの制作方法だ。有名作家の原画をもとに版画作家が再制作して完成した版画に有名作家がサインを入れる。これは単純に売上げ増のために行われている。有名作家は本当に自分の作品だとは考えていないのではないか。
 制作の一部に外部スタッフを介在させるのが共通だが、これら3者のコンセプトは全く異なっている。スタッフの介在によって作家が意図しなかったものを発現させ、それが自分の作品だと主張する吉岡まさみ、スタッフを道具として使う村上隆、収入のためにのみ作成されるエスタンプ。
 それぞれ似ていながら、ずいぶん違うものだ。

 吉岡はいつもは黒いテープを使っている。今回は赤いテープの作品だ。また壁面に写真を貼り、その上からテープを重ねていくこともあったが、今回は白い壁面を赤一色で鮮やかに決めている。
 このMIZENKAギャラリーは昨年オープンした新しい画廊で、企画展示を行っている。地下鉄日比谷線広尾駅の六本木寄り3番出口から出て、あとは道なりに真っ直ぐ進む。どこかで道の反対側(信仰方向左側)へ移り、駅から徒歩6分ほどで三和西麻布ビルに到着する。その手前にAPAホテルがあるから分かるだろう。ギャラリーは3階だが、入口にインターフォンがある。そこでギャラリーを呼び出せばドアを開けてくれる。新しいきれいな空間だ。
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吉岡まさみ展「The Secret Memory」
2014年3月9日(日)〜3月16日(日)
12:00〜19:00(最終日17:30まで)
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MIZENKAギャラリー
東京都港区西麻布4-3-3
電話03-6427-6506
http://www.mizenka.com