2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

佐藤洋一郎『稲と米の民族誌』を読む

佐藤洋一郎『稲と米の民族誌』(NHKブックス)を読む。副題が「アジアの稲作景観を歩く」と言い、佐藤が30年間にわたって調査したアジアのイネと稲作の現地調査を振り返っている。今まで佐藤の著書としては、『稲の日本史』、『イネの文明』、『イネの歴史』…

矢島渚男『俳句の明日へII』を読む

矢島渚男『俳句の明日へII』(紅書房)を読む。副題が「芭蕉・蕪村・子規をつなぐ」とあり、「芭蕉と蕪村」、「子規と虚子」、書評・時評、「現代俳句の群像」などからなっている。すばらしい本で教えられることばかり、ただただ圧倒された。同時に批評はし…

『磯崎新と藤森照信のモダニズム建築談義』が面白い

『磯崎新と藤森照信のモダニズム建築談義』(六耀社)を読む。磯崎と藤森の対談だが、これがとても面白かった。磯崎は丹下健三の弟子で、つくばセンタービルをはじめ国際的に活躍している建築家。藤森ははじめ近代建築史を研究していたが、神長官守矢資料館…

埼玉県日高町の九万八千神社

先日、埼玉県日高町高麗本郷に住む友人を訪ねた。彼岸花で有名な巾着田の近くだ。友人の家の近くに小さな神社がある。以前から気になっていたが、九万八千神社というらしい。ネット上にこの神社に関する詳しい解説が載っていた。その「スネコタンパコの「夏…

小島剛一『漂流するトルコ』を読む

小島剛一『漂流するトルコ』(旅行人)を読む。副題が「続「トルコのもう一つの顔」」とあり、中公新書の『トルコのもう一つの顔』の続編。前著が1991年に発行されているが、その前に小島はトルコから国外追放になっている。 その後国外追放が解除されて小島…

斉藤斎藤『渡辺のわたし』を読む

斉藤斎藤『渡辺のわたし』(港の人)を読む。口語で短歌を書いている1972年生まれの新しい傾向の歌人の歌集だ。これがよく分からない歌ばかりだ。 君の落としたハンカチを君に手渡してぼくはもとの背景にもどった 牛丼の並と玉子を注文して出てきたからには…

鳥居『キリンの子 鳥居歌集』を読む

鳥居『キリンの子 鳥居歌集』(KADOKAWA)を読む。カバーの著者プロフィールから引く。 2歳の時に両親が離婚、小学5年の時に目の前で母に自殺され、その後は養護施設での虐待、ホームレス生活などを体験した女性歌人。義務教育もまともに受けられず、拾った…

ギャラリイKの中津川浩章展「愛は森に隠れている」を見る

東京京橋のギャラリイKで中津川浩章展「愛は森に隠れている」が開かれている(12月28日まで)。中津川は1958年静岡県生まれ。和光大学で学び、個展をギャラリイK、パーソナルギャラリー地中海などで数回ずつ開き、その他、ギャラリーJin、ギャラリー日鉱、マ…

ギャラリー現の井上修策展を見る

東京銀座のギャラリー現で井上修策展が開かれている(12月24日まで)。画廊には錆びた鉄板が敷き詰められている。360枚の鉄板を1年間水中に沈めたり薬品を使ったりして錆びさせたものだという。壁面には錆を染料のようにキャンバスにしみ込ませた平面作品も…

丸木スマの「メシ」

友人宅を半年ぶりに訪ねると驚いたことにたくさんの猫がいた。友人がエサをやると皿を囲んで争って食べた。その様子が丸木スマの絵「めし」を思い出させた。 丸木スマは「原爆の図」で有名な丸木位里の母親。位里の奥さん俊が勧めて70歳のときに絵を描き始め…

十川信介『夏目漱石』を読む

十川信介『夏目漱石』(岩波新書)を読む。夏目漱石の伝記で、小著ながら作品にもていねいに触れている。夏目漱石についてはよく知っているつもりだったが、意外に知らないことが多かった。実は漱石の伝記をほとんど読んだことがなかったみたいだ。もう40年…

矢島渚男句集『野菊のうた』を読む

矢島渚男句集『野菊のうた』(ふらんす堂)を読む。あとがきに、『翼の上に』『延年』『百済野』の3句集から343句を選んだとある。ほぼ60歳から73歳までの句集であるとも。何句か引いてみる。 黒 塗 り の 昭 和 史 があ り 鉦 叩 滅 び た る 狼 の 色 山 …

サンゴジュのクロトンアザミウマ

先日芝居を見るために立教大学へ行った。立教大学へ足を踏み入れるのは初めてだった。昔親友がこの大学の文学部へ入学したが、校風があわないと言って半年ばかりで退学した。彼は翌年早稲田大学に入学した。 初めて行った大学だったし、広い構内で芝居が行わ…

藍画廊の吉田哲也展を見る

東京銀座の藍画廊で吉田哲也展が開かれている(12月24日まで)。吉田哲也は1964年名古屋市生まれ1988年に多摩美術大学彫刻科を卒業し、1991年に東京藝術大学大学院彫刻専攻を修了している。その後文化庁から派遣されてロンドンへ留学し、ときわ画廊や藍画廊…

朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』を読む

朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』(集英社文庫)を読む。先月、大塚英志の『感情化する社会』を読んだら、『桐島、部活やめるってよ』がスクールカーストを扱ったものだと書かれていた。スクールカーストって何だろうと思って手に取った。高校2年生の世…

福島泰樹 歌集『哀悼』を読む

福島泰樹 歌集『哀悼』(晧星社)を読む。福島29番目の歌集だという。題名のとおり死者を哀悼する歌が並んでいる。 ISに殺された後藤健二を悼んで、 ゆえなきを楚囚となりて砂あらしオレンジ色の悲しみならん そして亡くなった文学者などを追悼して歌う。 吉…

小島剛一『トルコのもう一つの顔』と『トルコのもう一つの顔・補遺編』を読む

小島剛一『トルコのもう一つの顔』(中公新書)と『トルコのもう一つの顔・補遺編』(ひつじ書房)を読む。小島は言語学と民族学の専門家。もう50年近くフランスに住んでいる。『トルコのもう一つの顔』は25年前の発行。トルコを研究するようになったのは、…

『時間かせぎの資本主義』を読む

ヴォルフガング・シュトレーク/鈴木直・訳『時間かせぎの資本主義』(みすず書房)を読む。最近読んだ本のなかでも極めて興味深い1冊だった。ただかなり難しい内容なので読み終わるのに時間がかかり、よく理解できたとは言いかねる。それでも世の中の仕組み…

山本弘の作品解説(55)「花」

山本弘「花」、油彩、F10号(53.0cm×45.5cm) 1978年制作。くり返して書くが山本最晩年の作品。素直に描かれた山本の花の絵は珍しいのではないか。ベージュっぽい絵具で厚く塗られた花、青いのは枝葉のようだ。 「素直に描かれた花の絵」と書いたが、決して…

アートモールという美術のお店を訪ねた

東京都日本橋の三越前にアートモールArt Mallという変わった美術のお店がある。小さなビル全部がその施設で、道路に面した1階がアートグッズを扱うスペース。透明なガラス張りで外からお店の中がよく見える。アートグッズと書いたが、小品の絵画が多い。値段…

矢島渚男『句集 天衣』を読む

矢島渚男『句集 天衣』(富士見書房)を読む。著者50歳前後に詠まれた第3句集だ。先に読んだ『句集 翼の上に』と『句集 延年』に続いて3冊目の読書となる。いくつか引いてみる。 初 し ぐ れ 鼬 全 長 見 せ て 駈 く 猟 銃 が 俳 人 の 中 通 り け り 憂 …

うしお画廊のカレンダー展

東京銀座のうしお画廊で「あなたのためのカレンダー展」が開かれている(12月10日まで)。小さな作品だが130人の画家たちが出品している。1点数千円のものから何万円かのものまである。カレンダー展と名付けているのは、写真でも紹介しているように、専用の…

ギャラリー川船の正札市

年末恒例ギャラリー川船の「歳末正札市」が始まった(12月10日まで)。およそ150点の近現代絵画が並べられている。川船は銀座京橋地区の画廊では広い方だが、その広い画廊の壁面いっぱいに展示されている。主要な作品画像とリストはホームページで見られると…

仏国務院副院長が語る憲法

フランス国務院副院長ジャンマルク・ソヴェが憲法について語っている(朝日新聞、12月2日付け「オピニオン&フォーラム「憲法の価値を守るもの」)。 フランスの国務院の役割は、政府提案の法律が憲法や国際条約に照らして適当か否かを答申したり、行政裁判…

ギャラリーtの齊藤寛之個展「夢から覚める玩具」を見る

東京台東区浅草橋のギャラリーtで齊藤寛之個展「夢から覚める玩具」が開かれている(12月17日まで)。齊藤は1973年東京生まれ。1998年東京藝術大学美術学部彫刻家を卒業し、2000年に同大学大学院美術研究彫刻専攻を修了している。1999年にフタバ画廊で初個展…

山本弘の作品解説(54)「河童」

山本弘「河童」、油彩、F10号(53.0cm×45.3cm) 制作年不詳(おそらく1978年)、晩年に何作か見られるエアブラシのような技法を使っている。しかしエアブラシを購入する経済的ゆとりはなかったし、仮に入手したとしても半身不随の手でそれが扱えたとは思えな…

カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』を読む

イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』(白水社uブックス)を読む。とても奇妙な小説。冒頭「あなたはイタロ・カルヴィーノの新しい小説『冬の夜ひとりの旅人が』を読み始めようとしている。さあ、くつろいで、精神を集中して。余計な考えはすっかり…