十川信介『夏目漱石』を読む

 十川信介夏目漱石』(岩波新書)を読む。夏目漱石の伝記で、小著ながら作品にもていねいに触れている。夏目漱石についてはよく知っているつもりだったが、意外に知らないことが多かった。実は漱石の伝記をほとんど読んだことがなかったみたいだ。もう40年以上昔、江藤淳の『漱石とその時代』を読んで明治時代にはまった。明治維新について知りたいと、当時入社してきた後輩に適当な参考書を推薦してもらうと、自分は社青同だったのでちょっと違うけどと言って、講座派の服部之総を教えてくれた。それから明治維新関係の本を読み、明治思想史に進み、大正思想史、昭和思想史、江戸文化史などを読み漁った。江戸以前に遡ることはなく、戦後についてもあまり読まなかった。
 江藤淳から始まった近代日本に関する読書がその後20年ほど続いた。思えばそれまで読むのはもっぱら西洋に関するものばかりだった。江藤淳以来日本回帰したのだった。
 夏目漱石はこれまた昔だいぶ読んだが、『硝子戸の中』も『明暗』もまだ読んでいなかった。こっれを機に最初から読みなおしてみよう。江藤淳の『漱石とその時代』も。


夏目漱石 (岩波新書)

夏目漱石 (岩波新書)