山本弘の作品解説(54)「河童」


 山本弘「河童」、油彩、F10号(53.0cm×45.3cm)
 制作年不詳(おそらく1978年)、晩年に何作か見られるエアブラシのような技法を使っている。しかしエアブラシを購入する経済的ゆとりはなかったし、仮に入手したとしても半身不随の手でそれが扱えたとは思えない。先だってのK'sギャラリーの個展でも同じような技法が使われていて、見てくれた画家の方から、布なんかで拭いたのかもしれないと言われた。おそらく『芸術新潮』などを見て、自分で工夫したのだろう。裏面に河童と書かれているので河童なのだろうが、子供を描いたようにも見える。
 画題の河童は得意な絵柄だった。色紙にしばしば河童を描いて妻の愛子さんや愛子さんのおじいちゃんが売り歩いていた。飯田市では山本は洋画家というよりも色紙に河童を描く「河童の弘さん」で通っていた。巧い絵でその名に恥じない出来映えだった。
 さすがに油彩画では色紙に描いたような作風とは一変し、優れた作品になっている。来年1月に新宿区四谷三丁目にあるギャラリーTS4312での個展に出品する予定。