藍画廊の吉田哲也展を見る

 東京銀座の藍画廊で吉田哲也展が開かれている(12月24日まで)。吉田哲也は1964年名古屋市生まれ1988年に多摩美術大学彫刻科を卒業し、1991年に東京藝術大学大学院彫刻専攻を修了している。その後文化庁から派遣されてロンドンへ留学し、ときわ画廊や藍画廊、ギャラリーTAGA、ギャラリーGANなどで個展を開いている。1996年にはセゾン美術館の「視ることのアレゴリー」、また東京都現代美術館の「MOTアニュアル1999」にも参加している。惜しいことに2005年に40歳で亡くなってしまった。だが死後も評価は高く、2012年は佐倉市立美術館の「カオスコスモス09」にも1室を与えられているし、2013年には多摩美術大学美術館で若林砂絵子との二人展「考える葦」が開かれている。
 亡くなってから11年目の今回、藍画廊で没後3回目の個展が開かれている。生きていれば52歳、現代で最も優れた彫刻家の一人だ。








 作品はみな小さなもので、トタン板や針金を曲げたりしたものが多い。晩年の作品である石膏の立体も2点ほど展示されている。いずれもある種ぶっきらぼうな印象を与える作品だ。私にはどの美術運動に組みこんだら良いのか分からない。一見ミニマルっぽいのだが、吉田の作品にはひそやかな決して弱くはない表情がある。メッセージという定義から外れるメッセージが感じられる。そして何よりも美しさが認められるのだ。
 最初はそのぶっきらぼうにも感じられる作品に素直に入りにくいかもしれない。しかし何度も見ているうちにその魅力にはまってしまう。吉田哲也の彫刻作品は現代日本の最も優れたものの一つだろう。国立美術館の収蔵品に値することを確信する。
 ぜひとも多くの人に見てもらいたいと切に願うものだ。
       ・
吉田哲也展−未発表作品を中心に−
2016年12月12日(月)―12月24日(土)
11:30−19:00(最終日18:00まで、日曜休廊)
       ・
藍画廊
東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル2階
電話03-3567-8777
http://igallery.sakura.ne.jp/