2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

藍画廊の衣真一郎展を見る

東京銀座の藍画廊で衣真一郎展が開かれている(8月7日まで)。本展は銀座・京橋を中心とする現代美術の画廊が共同主催する「画廊からの発言 新世代への視点2021」のひとつで、今回藍画廊は衣真一郎を選んでいる。 衣は1987年群馬県生まれ、2013年に東京造…

クロスビューアーツの桑原理早を見る

東京京橋のクロスビューアーツで桑原理早・原裕子展が開かれている(8月7日まで)。原は陶で面白い形を作っていて興味深いが、今回は桑原を紹介する。 桑原は1986年、東京都出身。2011年に武蔵野美術大学造形学部日本画学科を卒業し、2013年同大学大学院造…

ギャラリー川船で「夏期入札展示会」が始まった

東京京橋のギャラリー川船で「夏期入札展示会」が始まった(7月31日まで)。 入札の方式は「二枚札方式」、これは入札カードに上値(上限)と下値(下限)の二つの価格を書いて入札するもの。他に入札者のない場合は下値で落札する。上値が同額の場合には下…

吉行淳之介『特別恐怖対談』を読む

吉行淳之介『特別恐怖対談』(新潮文庫)を読む。12年間にわたって『小説新潮』誌上で行われた40回の「恐怖対談」シリーズの最終巻。面白かったエピソードをいくつか抜き書きする。 40回の対談で初めてという女性の瀬戸内寂聴との対談は「女の髪の毛について…

ギャラリーなつかの芦川瑞季展を見る

東京京橋のギャラリーなつかで芦川瑞季展が開かれている(8月7日まで)。本展は銀座・京橋を中心とする現代美術の画廊が共同主催する「画廊からの発言 新世代への視点2021」のひとつで、今回ギャラリーなつかは芦川を選んでいる。 芦川は1994年静岡県生ま…

「画廊からの発言 新世代への視点2021」が始まる

東京銀座・京橋を中心とする現代美術の画廊が共同主催する「画廊からの発言 新世代への視点2021」が明日から始まる。これは恒例の8軒の画廊が推薦する40歳以下の若手作家8人の個展だ。現代美術の代表的な貸画廊が選んだ作家たちだから見逃せない重要な企画…

牧野信一『ゼーロン・淡雪』を読む

牧野信一『ゼーロン・淡雪』(岩波文庫)を読む。大江健三郎と古井由吉が対談『文学の淵を渡る』(新潮文庫)で牧野を絶賛していたので、牧野の短篇小説「西瓜喰ふ人」を読んだらこれがよくできていた。それで本書を読んだ。 牧野は明治29年に生まれて昭和11…

東京都現代美術館の「MOTコレクション」を見る

東京木場公園の東京都現代美術館で「MOTコレクション」が開かれている(10月17日まで)。主として収蔵品を展示しているが、前回まで個展をしていたマーク・マンダースをこちらのスペースで再展示している。 まず入口すぐのアルナルド・ポモドーロの「太陽の…

東京都現代美術館の横尾忠則展を見る

東京木場の東京都現代美術館で横尾忠則展が開かれている(10月17日まで)。今回600点以上の作品が並んでいるという。19年前の2002年に同じこの美術館で開かれた横尾忠則展は400点だったから、200点増えたことになる。その後2008年に世田谷区美術館でも個展が…

巷房2の渡辺兼人写真展「墨は色」を見る

DM葉書 東京銀座の巷房2で渡辺兼人写真展「墨は色」が開かれている(7月31日まで)。渡辺は1947年、東京生まれ、1969年東京写真専門学校を卒業している。兄は人形作家の四谷シモン、1982年「既視の街」によって木村伊兵衛賞を受賞している。長く母校の講師…

蓮實重彦の押す美形女優

蓮實重彦『見るレッスン』(光文社新書)を読んだ。蓮實は現在純粋な美形女優が不在だと嘆く。「とにかくこの女性が美しくて記憶に残った」という映画がないことが気がかりです、と。他方、韓国映画には本当に美しい女優がたくさん出てきます。かつては美男…

蓮實重彦『見るレッスン』を読む

蓮實重彦『見るレッスン』(光文社新書)を読む。副題が「映画史特別講義」とあり、蓮實が編集者相手に話して本書が成立している。だから分かりやすい文章になっている。 蓮實はいま日本映画が第三の黄金期に差し掛かったという。そして日本の監督の個々名を…

ガジュマルのガジュマルクダアザミウマ

ベランダのガジュマルの鉢植えの葉が2、3枚ケロイド状になっている。今までの経験から、これはアザミウマの被害だと分かった。そしてガジュマルに寄生するアザミウマはガジュマルクダアザミウマに違いない。 被害葉を採取し、綴じ合わされた葉を開いてみる…

Stepsギャラリーの吉岡まさみ展「秘密の記憶2021」を見る

東京銀座のStepsギャラリーで吉岡まさみ展「秘密の記憶2021」が開かれている(7月24日まで)。吉岡は1956年、山形県生まれ。1981年に東京学芸大学教育学部美術科を卒業している。1982年に東京のかねこ・あーとGIで初個展、以来同画廊やときわ画廊、巷房など…

吉本隆明『日本近代文学の名作』を読む

吉本隆明『日本近代文学の名作』(毎日新聞社)を読む。日本近代文学の名作24冊を取り上げて、吉本隆明がそれぞれ数ページの解説を加えている。吉本の視力がおぼつかなかった時、毎日新聞の編集者が24篇の「名作文学」を提案し、吉本の口述を編集者が文章化…

山本弘写真集

今日は40年目の山本弘祥月命日だ。山本は1981年7月15日に亡くなった。享年51歳。 命日を記念して山本弘のポートレートを紹介する。 まず1966年10月、山本36歳。赤石林道でスケッチとある。撮影者不明。 自宅前にて、1973年9月、山本43歳。撮影は私。 家族…

オオタファインアーツの草間彌生展を見る

東京六本木のオオタファインアーツで草間彌生展が開かれている(7月31日まで)。いつもの矩形の絵画作品に、今回は金属の立体が床に展示されている。その表面は磨かれて壁に展示している絵画作品が写り込んでいる。それは「雲」と題されていて、ステンレス…

斎藤美奈子『挑発する少女小説』を読む

斎藤美奈子『挑発する少女小説』(河出新書)を読む。取り上げられている作品は、『小公女』『若草物語』『ハイジ』『赤毛のアン』『あしながおじさん』『秘密の花園』『大草原の小さな家』『ふたりのロッテ』『長くつ下のピッピ』の9点。すべて名前は知っ…

吉行和子『兄・淳之介と私』を読む

吉行和子『兄・淳之介と私』(潮出版社)を読む。女優の吉行和子が兄である吉行淳之介を語っている。しかし実際は兄を語っているのは3分の1ほどだし、その半分が亡くなってからのもの。和子にとって兄は大好きだったようだが、11歳も年上で子どものころはま…

六本木ストライプスペースの「凸凹な多面体:星埜恵子の仕事 1970-2021」と、併催されている「池田龍雄(1928-2020)いつも近くに、そしていつまでも」を見る

東京六本木の六本木ストライプスペースで「凸凹な多面体:星埜恵子の仕事 1970-2021」と、併催されている「池田龍雄(1928-2020)いつも近くに、そしていつまでも」が開かれている(7月15日まで)。 「凸凹な多面体」は舞台美術家として1970年にデビューし…

東京大学駒場博物館の宇佐美圭司展を見て、宇佐美の『20世紀絵画』紹介を再録する

東京駒場の東京大学駒場博物館で宇佐美圭司展「よみがえる画家」が開かれている(8月29日まで)。当初6月27日までの予定だったが、コロナ禍で一時閉館したため会期を延長している。 加治屋健司による『宇佐美圭司 よみがえる画家』(東京大学出版会)の発…

奥本大三郎『ランボーはなぜ詩を棄てたのか』を読む

奥本大三郎『ランボーはなぜ詩を棄てたのか』(インターナショナル新書)を読む。ランボーの詩を棄ててアフリカへ行くまでの半生を、ランボーの詩や手紙など、その詩が生まれる背景を詳しく解説しながら語ってくれる。さらに「イリュミナシオン」を分析し、…

ギャラリーN神田社宅の田中藍衣展「ペイルブルードット」を見る

東京神田のギャラリーN神田社宅で田中藍衣展「ペイルブルードット」が開かれている(7月17日まで)。田中は1992年愛知県生まれ、2014年愛知県立芸術大学美術学部日本画専攻卒業、2016年同大学博士前期課程油画・版画領域修了。2016年に名古屋のギャラリーN…

故郷のイントネーション

穂村弘が「絶叫委員会」という連載コラムに「発音の話」を書いている(『ちくま』7月号)。 トンカチのイントネーションはトンカチと思い込んでた本当はトンカチ エース古賀 「トンカチのイントネーション」には具体的な説明がなく、読者の想像に任されてい…

ガルリSOLの島田佳樹 個展を見る

東京銀座のガルリSOLで島田佳樹 個展「まだ暗い途を歩きながら、こう考えた。」が開かれている(7月10日まで)。島田は1994年埼玉県生まれ、2019年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。昨年のガルリSOLでの個展に続いて今回が2回目となる。 三角のう…

ギャラリー412の野見山暁治デッサン展を見る

DM葉書 東京表参道のギャラリー412で野見山暁治デッサン展「ローモン街からライ・レ・ローズ(1952年―1964年)」が開かれている(7月17日まで)。 (1952年―1964年)とあるように、野見山のフランス滞在時代のデッサンを展示している。すべて風景画だ。なか…

広中一成『後期日中戦争』を読む

広中一成『後期日中戦争』(角川新書)について、保坂正康が朝日新聞に書評を書いていた(6月12日付)。 日中戦争の8年余の期間は前半と後半に分かれる。太平洋戦争開始後の後半は、著者の指摘通り、太平洋戦争の陰に隠れ、精緻に検証されているとは言い難…

ギャラリー五峯の石垣むつみ展を見る

東京下井草のギャラリー五峯で石垣むつみ展「居回りのこと」が開かれている(7月5日まで)。石垣は東京生まれ、文化学院デザイン科・芸術科を修了している。1993年に目黒のギャラリークラマーで個展を行い、その後ギャラリー砂翁や空想ガレリア、ギャラリ…

吉行淳之介『懐かしい人たち』を読む

吉行淳之介『懐かしい人たち』(ちくま文庫)を読む。単行本が出た1994年に読み、ちくま文庫になった2007年に読み、今回が3回目になる。吉行は何度読んでもいい。 本書は過去の随筆集から抜き出したもので、「一つの方針があって、追悼文もしくはすでに故人…

東京都美術館の「イサム・ノグチ 発見の道」を見る

東京上野の東京都美術館で「イサム・ノグチ 発見の道」が開かれている(8月29日まで)。都美術館のホームページより 日本人を父に、米国人を母に生まれたイサム・ノグチ(1904-1988)は、東西の間でアイデンティティの葛藤に苦しみながら、独自の彫刻哲学を…