東京都現代美術館の横尾忠則展を見る

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  東京木場の東京都現代美術館横尾忠則展が開かれている(10月17日まで)。今回600点以上の作品が並んでいるという。19年前の2002年に同じこの美術館で開かれた横尾忠則展は400点だったから、200点増えたことになる。その後2008年に世田谷区美術館でも個展が行われた。

 さらに都内のあちこちの画廊でも個展が開かれている。点数が多いのは売れているから量産しているのだろう。横尾はイラストレーターとして出発した。天井桟敷のポスターなどマスコミの露出も多かった。基本具象だから一般のファンも多いのだろう。ずっと横尾を評価してこなかったが、2008年の世田谷区美術館の個展では面白いと思ったのだった。

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 今回はちょっと辟易してしまった。絵は下手だし、ある意味下品だし、作品のテーマがマンネリでもある。横尾はライプチヒのネオ・ラオホと共通する傾向を示している。ネオ・ラオホは統一前の東ドイツ社会主義リアリズムに抗して作品を制作してきた。社会主義リアリズムの制約のなかでそれを踏み越える作品を工夫しなければならなかった。それが独特のシュールっぽい作品に結実している。横尾の作品も写実絵画を踏み越えている。一見ネオ・ラオホと共通すると思わせる点だ。

 しかし、ネオ・ラオホにあった社会主義リアリズムに飽き足らないで新しい表現を目指した動機にあたるものは横尾にとって何だろう。切実なそれが感じられなかった。横尾は絵画を量産している。だが、滝の絵でも、三叉路でも、テーマを得るために選んでいるのではないか。過去の名画からの引用が多いのも、本当に切実なテーマが横尾にないためではないのか。

 個人美術館も立ちあげている。今回、東京都現代美術館で600点の作品を並べて、入場者が多いことを予測して日時指定の前売券を購入することを美術館では推薦している。功成り遂げたと言い得るだろう。私がこれ以上何を言うことがあろう。

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横尾忠則

2021年7月17日(土)―10月17日(日)

10:00-18:00(月曜休館)

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東京都現代美術館

東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)

ハローダイヤル050-5541-8600

https://www.mot-art-museum.jp/