蓮實重彦『見るレッスン』(光文社新書)を読んだ。蓮實は現在純粋な美形女優が不在だと嘆く。「とにかくこの女性が美しくて記憶に残った」という映画がないことが気がかりです、と。他方、韓国映画には本当に美しい女優がたくさん出てきます。かつては美男美女を見に行くのが映画の楽しみの一つでした、とも。
『よこがお』の筒井真理子さんは、演技が見事で存在感もあるのですが、純粋に美形の女優ではない。
黒沢清監督の新作の前田敦子さんは映画的に興味深くていいのですが、いわゆる「美形」ではない。
同じ黒沢清監督の『ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト』でひたすら強い役を演じていた三田真央さんはハッとする感じが少しありました。でも、彼女も整った美形というわけではなくとにかく強そうな印象の方です。
中島貞夫監督の新作に出ていた多部未華子さんだって非常にいいけれども、美形ではありません。不思議な魅力があって面白い感じの人です。
黒沢さんの『LOFT ロフト』に出ている中谷美紀さんは例外的な美形です。彼女は実際に会ってみるとちょっとドキドキするタイプの人かもしれませんが、その後、あまり映画に出ていませんね。
『きみの鳥はうたえる』の石橋静河さんは、例外的に美形でやっていける女優だという印象を持ちました。典型的な美形ではないけれども、いくらでも美しく撮ることのできる女優さんだと思いました。
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私は生意気にも映画は作家主義で見るから、監督で選ぶので、女優を目当てに見に行ったことはほとんどない。だが、昔木冬社の芝居に毎年平幹二朗が出演していたことがあった。ある時から平が出演しなくなり、その年木冬社の芝居の客の入りはいつもの半分だった。ああ、客は平幹二朗を見るために来ているんだと印象に残った。