小説

閻連科『年月日』を読む

閻連科『年月日』(白水uブックス)を読む。閻連科は「えんれんか」と読み、1958年生まれの中国の作家。2014年には村上春樹に続いてアジアでは二人目となる、フランツ・カフカ賞を受賞している。 本書は象徴的な小説で、ヘミングウェイの『老人と海』やカフ…

海外の長篇小説ベスト100から

少し古いが雑誌『考える人』が海外の長篇小説ベスト100を特集していた(2008年春号)。このテーマなら13年前だがあまり古びてはいないだろう。これがなかなか興味深い。 129人の作家や批評家など、さまざまな書き手129人にアンケートを依頼し、各人のベスト1…

井伏鱒二『珍品堂主人』を読む

井伏鱒二『珍品堂主人』(中公文庫)を読む。骨董屋であり、料亭を経営した変わった男を主人公にした小説。モデルがあり、秦秀雄という魯山人や小林秀雄などと付き合っていた骨董商だ。彼のことは宇野千代も書いていたのではなかったか。 長篇小説であるにも…

常盤新平『遠いアメリカ』を読む

常盤新平『遠いアメリカ』(講談社文庫)を読む。先に読んだ『片隅の人たち』のいわば前編のような連作短編集。「遠いアメリカ」「アル・カポネの父たち」「おふくろとアップル・パイ」「黄色のサマー・ドレス」の4作からなっている。登場人物は共通で翻訳者…

常盤新平『片隅の人たち』を読む

常盤新平『片隅の人たち』(中公文庫)を読む。片隅の人たちとはミステリなどの翻訳者を指している。常盤新平のほとんど自伝を小説にしたようだ。さまざまな変わった翻訳者たちが登場するが、みな別名で書かれていて、私には彼らが実際には誰を指すのか分か…

『第三の男』を見て読む

キャロル・リード監督の映画『第三の男』を見て、グレアム・グリーンの原作を読む。映画は2回目、小説は3回目だった。いつもは原作に比べて映画化されたものは劣ると思うのに、両方比べてみてこれは映画の方が優れていると思った。 小説には序文がついていて…

省略の技法

金井美恵子「小説論」(朝日文庫)には「映画・小説・批評ーー表象の記憶をめぐって」と題された城殿智行によるインタビューが載っている。そこから映画と小説の省略の技法が語られているところを紹介する。 城殿智行 書き方のお話も少しうかがいたいのです…