常盤新平『片隅の人たち』を読む

 常盤新平『片隅の人たち』(中公文庫)を読む。片隅の人たちとはミステリなどの翻訳者を指している。常盤新平のほとんど自伝を小説にしたようだ。さまざまな変わった翻訳者たちが登場するが、みな別名で書かれていて、私には彼らが実際には誰を指すのか分からなかった。

 常盤新平は長く早川書房の『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』の編集長を務めていた。大学を卒業してから、しばらく翻訳の下訳をし、早川書房に入社して結婚して娘が生まれるまでの日々を書いている。

 読みやすく、購入した日に読んでしまった。常盤が直木賞を受賞した作家だというのも納得できる。それにしても当時の早川書房周辺には才能のある作家たちが集まっていたことに驚かされる。都筑道夫生島治郎清水俊二田村隆一など錚々たるメンバーだった。

 

 

 

片隅の人たち (中公文庫 と 37-1)

片隅の人たち (中公文庫 と 37-1)

  • 作者:常盤 新平
  • 発売日: 2021/01/20
  • メディア: 文庫