閻連科『年月日』を読む

 閻連科『年月日』(白水uブックス)を読む。閻連科は「えんれんか」と読み、1958年生まれの中国の作家。2014年には村上春樹に続いてアジアでは二人目となる、フランツ・カフカ賞を受賞している。

 本書は象徴的な小説で、ヘミングウェイの『老人と海』やカフカを思わせる。日照りが続く村で、村民は皆村を捨てて去っていく。あとに73歳の「先じい」と盲目の犬が残される。先じいは1本のトウモロコシの苗を大切に育てる。自分や犬の小便をかけたり、遠い井戸の水を汲んできたりする。

 先じいと犬の食べものも少なく、去っていった村人が播いたトウモロコシの種を掘り出して食べる。やがてそれも掘り尽くし、ネズミの巣を見つけて、ネズミたちが貯蔵しているトウモロコシを掘り出して食糧にする。

 日照りはひどくなり、水を求めて遠出すると狼の群れに会う。

 狼と闘い、トウモロコシの苗の生長を見守り、やがてトウモロコシはサヤを着ける。トウモロコシが実れば、去っていった村人たちが戻ったときに種として利用できる。

 しかし、読み終えて、トウモロコシを育てるという象徴的な行為が、説得力を持って描かれているとは評価できない。閻連科は農業に携わったことがあるのだろうか。トウモロコシを育てたことがあるのだろうか。

 象徴的な物語を作るには細部のリアリティが欠かせない。トウモロコシの生育や病気のこと、水やりや実りのことなど、閻連科が農業をどこまで理解していたか疑わしい。あまり評価できないというのが結論になってしまった。