2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

分類について、池田清彦と三中信宏

昔から「分類」について強い興味を持っていた。人間にとっての分類ということの意味、また分類は進化論とも深い関係がある。 最初に分類に関して明晰に関心を持たされたのは、27年前に読んだハワイ大学の名誉教授で理論物理学と情報科学が専攻の渡辺慧「認識…

タカサゴユリの記事

もう何年も前になるが、仕事で筑波の農林水産省の研究所に当時の水田雑草研究室長の森田弘彦さんを訪ねた。仕事の話が済んで雑談に移り、最近あちこちの路傍に白い大輪の百合が目立つと言ったら、それは帰化植物のタカサゴユリだと教えてくれた。台湾原産だ…

活司の墓

10月27日は久保田活司の祥月命日だった。その3日前に所用で飯田市へ行ったので活司の墓をたずねた。墓は曹洞宗円悟山正永寺にある。正永寺には樹齢400年という枝垂れ桜がある。枝垂れ桜は葉も黄ばんでいて春の華やかさはどこにもない。活司の葬式はこんな寂…

久保理恵子の個展が開かれている

六本木のギャラリーShonandai MY Galleryで久保理恵子展が開かれている(30日まで)。 私は1994年のなびす画廊での久保理恵子の初個展から彼女の個展をほとんど見てきた。最も好きな画家の一人だ。初個展は花を描いていたが、2回目の個展からは紺色の画面に…

ギャラリー銀座フォレストの中田いくみ展「あぶくと疳の虫」

銀座1丁目の戦前からの古い建物奥野ビルの5階にあるギャラリー銀座フォレストという小さな画廊で中田いくみ展「あぶくと疳の虫」が始まった(31日まで)。中田いくみは1982年生まれ、成城大学で学んだ後、バンダイビジュアル研究所でイラストレーションを…

ギャラリートモスの杉原民子個展:珠玉のドローイング

日本橋のギャラリートモスで杉原民子個展が始まった(11月7日まで)。杉原は鉛筆のドローイングが多いが、今回はペインティングの大きな作品も発表している。私は彼女のドローイング作品が好きだ。今回は正方形に挑戦したという。植物や天使、サモトラケの…

名盤「CAT NAP」のCD化を強く希望する

あんたは本当に暗い歌が好きねえ。カミさんが少し軽蔑したように言った。もう30年以上前のことだ。浅川マキや内藤やす子、大友裕子を指している。一番好きだったのは山口百恵だったが、これについては何も言われなかった。浅川マキは当時の友人三木良吉に勧…

麻生三郎の描く松本俊介像?

銀座7丁目に小林画廊がある。一流の画家ばかりを扱っている高級画廊だ。ここの奥のスペースは普段は麻生三郎の常設になっている。そこに人物像が展示されている。下記の作品だ。 画廊の方が、これは麻生三郎が描いた松本俊介ではないかと言われる。たしかに…

ギャラリー山口の坂本太郎展「月守-Moonkeeper-」

中央区京橋のギャラリー山口B1Fで坂本太郎展が開かれている(10月24日まで)。坂本は大きな木彫を作ってきた。今回は「月守-Moonkeeper-」と題されている2メートルをはるかに超える木彫作品だ。上部の丸い部分が月のようだが、仏像にも巨大な指にもペニスに…

「DAYS JAPAN」の特集記事「祝島・原発を拒否する人々」

先月「上関(かみのせき)原発に反対します」(9月24日)で上関原発に対する反対運動を紹介したが、「広河隆一責任編集◎世界を視るフォトジャーナリズム月刊誌」とスローガンを掲げた「DAYS JAPAN」11月号が、「祝島・原発を拒否する人々」という特集で、こ…

ノンアルコールビール試飲記

知人からノンアルコールビールをもらった。キリンの缶入りのやつだ。くれた人はまずくて飲めないと言う。では飲んでみようともらったが、飲む機会がなかった。ビールを飲む前に飲んだら肝腎のビールがまずくなるのではないか。寝る前の酒はアルコール度数の…

場所が考える

ベランダの片隅にアザレアの鉢植えがある。娘が幼稚園の卒園記念でもらってきたものなので、もう樹齢20年以上になる。毎朝それに水やりをするのだが、少しかがんで水をやるとき、なぜか不忍池のゴイサギを思い出す。 もう10年近く前になるが、上野の不忍池に…

本の装丁展を見る

知人のM田さんに誘われて千代田区神田錦町にあるギャラリーKaNDaDaへ高麗隆彦・桂川潤の装丁展を見に行く。桂川潤がM田さんの知人である画家の桂川寛の息子に当たるという関係だ。桂川寛さんの個展はアートギャラリー環で何度か見たし、5年前に発行された自…

マツタケの話

長野県高森町へお袋の見舞いに行った。帰りのタクシーで運転手さんとマツタケの話になった。 (高森町の川向かいの)豊丘村は東京のテレビでもマツタケの村として有名ですね。豊丘村の堀越と隣の喬木村の大島がマツタケの産地なんだ。でも今年は不作でいつも…

サンゴジュの2種類の葉

京葉道路沿いにサンゴジュが植栽されていた。本来艶やかな緑であるはずのその葉が、半数は不思議な銀色だった。これは何だろう。 この銀色の葉は、クロトンアザミウマの被害なのだ。クロトンアザミウマは2mm程度の微細な昆虫だ。クロトンやサンゴジュなどに…

アマチュアの仕事

これは東京都のシンボルマークと日本化薬株式会社のコーポレイトマークだ。二つに共通するのはいずれも公募によって素人がデザインし、選ばれたものをプロのデザイナーが修正したものだということ。もう一つ共通する性格はどちらも垢抜けてないことだ。 以前…

朝日新聞の変節

10月14日の朝日新聞朝刊を開いて私は驚きの声をあげた。2面は朝日新聞の名物のコラム「ひと」の指定席だ。話題の人を取り上げて写真入りで簡単な紹介をしている。この日は「『父のヘリ』の記念日を迎えるボーイングジャパン社長」と題して、「ニコール・パ…

子の仕事を親が理解できないこと

北里晋「眼の人 野見山暁治が語る」(弦書房)に面白いエピソードが紹介されている。 戦争に向かって動きだしている時代、絵描きは亡国の徒だと親父や世間が思い込むのも無理はない。しかし、ぼくが美校に通うのもパリに行くのも、苦々しい顔をしたものの、…

朝日歌壇に掲載された短歌

10月12日付けの朝日新聞に掲載された朝日歌壇で、常連投稿者の金忠亀さんの短歌が二人の選者に選ばれている。その短歌が分からなかった。 弟の二人を送り残る「亀」は三匹ひとつの消息知らず 第4首に選んだ永井和宏の解説。 (第3首の)敷田さん、弟への眩…

大きなクズとツタ

墨田区の公園に大きなクズが植えられている。樹齢がもう32年か33年になるという。根本近くは大人でも握りきれない。地下には太い根があり掘れば大量の葛粉が採れるのだろうか。なんとなくクズって草本のような気がしていたが、これは立派な木本だ。 渋谷区の…

野見山暁治が坂本繁二郎を評価している!

私は坂本繁二郎が全く理解できない。良い絵だと思ったことがない。その坂本繁二郎をわが尊敬する野見山暁治が高く評価していて驚いた。 坂本繁二郎は、ぼくが美術学校に行ってるころ既に、梅原龍三郎、安井曾太郎と並ぶ洋画の巨匠という扱いを受けていた。 …

宇佐美圭司「20世紀美術」を繰り返し読んで

南天子画廊で宇佐美圭司展を見たので、彼の著書「20世紀美術」(岩波新書)を取り出して3回目を読んだ。今なお教えられることが多く、また何度も読み返すだろう。 本書ではまずマチスを高く評価するところから始まる。1992年ニューヨーク近代美術館でマチス…

みゆき画廊の野見山暁治展「版画・ゴーフラージュ」

銀座6丁目のみゆき画廊で野見山暁治展「版画・ゴーフラージュ」が開かれている(10月17日まで)。ゴーフラージュというのは版画専門のギャラリーMMGのオーナーが開発した技法で、紙で型どりした立体に彩色したもの。これがゴーフラージュの作品だ。 今回の…

南天子画廊の宇佐美圭司展「破れー開かれ」

京橋の南天子画廊で宇佐美圭司展が始まっている(10月24日まで)。宇佐美は1940年生まれ、1969年に渡米し、確か「アメリカの熱い夏」と呼ばれた黒人暴動に遭遇し、投石する彼らの姿をスケッチした。以来、今日まで40年間「投石する人」の形を画面に描き続け…

現在の東京スカイツリー

墨田区押上に建築中の新しいテレビ塔「東京スカイツリー」の高さが現在164m、墨田区で一番高い構造物になったそうだ。完成すると610mを超える。これは東京タワーのほぼ倍の高さだ。下の写真は10月4日に2kmほど離れたところから撮影したもの。 現在の高さが…

岡田まりゑ展、優しい上品な版画家

銀座1丁目にある戦前に建てられた古い奥野ビル4階のOFFICE IIDA(オフィス・イイダ)で岡田まりゑ展「カタラレズニ イル コト」が始まった(10月17日まで)。岡田まりゑはキャリアのある版画家で上品で優しい作品を発表している。色彩が美しく、イメージが…

都立北青山アパートの行方

地下鉄銀座線の外苑前と表参道の中間にあるギャラリーMUSEE Fへ行ったとき、街のところどころに旗が立てられていて、「都営アパートの高層化に反対、景観を守ろう」と書かれている。 外苑前から表参道に至る青山通りの建物を挟んだ西側には都立北青山アパー…

カワウソの絵

昔カワウソの絵を描いた日本画家は誰だったっけ? 菱田春草だったか。最近では版画家の小林敬生だ。シロタ画廊の個展でも東京都美術館の版画協会展でもカワウソの絵を出品している。 でもいつも同じ姿勢だ。上野動物園にはカナダカワウソが飼育されているの…

「人イヌにあう」を読んで、個性ということ

コンラート・ローレンツ「人イヌにあう」(ハヤカワ文庫)はノーベル賞を受賞した動物生態学者が動物の生態を描いた作品で、同じ著者の「ソロモンの指輪」には一歩を譲るもののきわめて面白い。その犬の個性を論じているところ、 個性を誇大にいわれる人類に…

野見山暁治展が始まる

野見山暁治は2個所の画廊で1年置きに個展を開いている。ギャラリー山口ではタブローを、みゆき画廊ではドローイングや水彩や版画だ。昨年ギャラリー山口で個展を開いたので、今年はみゆき画廊の年だ。10月5日(月)から17日(土)まで2週間、銀座6丁目…