野見山暁治が坂本繁二郎を評価している!

 私は坂本繁二郎が全く理解できない。良い絵だと思ったことがない。その坂本繁二郎をわが尊敬する野見山暁治が高く評価していて驚いた。

 坂本繁二郎は、ぼくが美術学校に行ってるころ既に、梅原龍三郎安井曾太郎と並ぶ洋画の巨匠という扱いを受けていた。
 ぼくを励ましてくれた今西中通も、「坂本さんのそばにいたい」というのが福岡に移ってきた理由の一つだった。
 坂本さんの滞欧作品は、日本人が描いた油彩画の最高のものだと、ぼくは惚れ込んでいる。後年の能面や研ぎ石の絵は気質的に合わんのか、ぼくには何も訴えてくるものがない。さすがの巨匠も年を取ったものだと、いささか寂しい気持ちにさせられた。しかし、それから数年を経て、西洋の造形的な空間に東洋の幽玄な世界が混沌と溶け込んで、晩年に描かれた牛や月夜の作品には息をのむ。

 これは北里晋著「眼の人 野見山暁治が語る」(弦書房)に紹介されている。野見山さんがそういうのなら、ちゃんと坂本繁二郎の絵を見てみよう。