練馬区立美術館の坂本繁二郎展を見る

f:id:mmpolo:20190905214525j:plain

 東京練馬区練馬区立美術館で坂本繁二郎展が開かれている(9月16日まで)。「没後50年」とある。青木繁と久留米で同級生だったが、青木が若くして亡くなった後、58年も長生きして、文化勲章も受賞した。
 坂本については、梅野満雄が書いた青木繁の伝記が強く印象に残っている。梅野は青木と坂本の同級生だった。青木を天才と称えて、坂本については評価が低かった。私は竹橋の東京国立近代美術館の常設に掛かっている「水より上る馬」以外の作品はあまり記憶になかったが、どうしても坂本の作品が好きになれなかった。しかし私の身近な画家たちはみな坂本を絶賛しているし、わが敬愛する野見山暁治も高く評価している。

 坂本繁二郎は、ぼくが美術学校に行ってるころ既に、梅原龍三郎安井曾太郎と並ぶ洋画の巨匠という扱いを受けていた。
 ぼくを励ましてくれた今西中通も、「坂本さんのそばにいたい」というのが福岡に移ってきた理由の一つだった。
 坂本さんの滞欧作品は、日本人が描いた油彩画の最高のものだと、ぼくは惚れ込んでいる。後年の能面や研ぎ石の絵は気質的に合わんのか、ぼくには何も訴えてくるものがない。さすがの巨匠も年を取ったものだと、いささか寂しい気持ちにさせられた。しかし、それから数年を経て、西洋の造形的な空間に東洋の幽玄な世界が混沌と溶け込んで、晩年に描かれた牛や月夜の作品には息をのむ。(北里晋著『眼の人 野見山暁治が語る』(弦書房)より)

 

 昼前の飛行機に乗って、早めに久留米の美術館に着く。坂本繁二郎展。
 この画家は、日本人には希薄な立体の意識を、どこから学んだのか。経歴を読んでも、それらしい環境はない。パリで学んだと思っていたが、すでに渡航まえ、牛のモチーフの連作が見事にそれを見せている。(野見山暁治『続アトリエ日記』(清流出版)より)

 坂本をまとめてみる機会があれば私にも坂本の良さが分かるかもしれないと期待していったが、印象は変わらなかった。
     ・
坂本繁二郎
2019年7月14日(日)-9月16日(月)
10:00-18:00(月曜休館)
     ・
練馬区立美術館
東京都練馬区貫井1-36-16
電話03-3577-1821
https://www.neribun.or.jp/museum/
西武池袋線中村橋駅下車徒歩3分