野見山暁治『どうにもアトリエ日記』を読む

 野見山暁治『どうにもアトリエ日記』(生活の友社)を読む。本書は2017年3月から2020年4月までの3年2か月分の日記が収録されている。『アトリエ日記』シリーズは、第1巻が2003年9月から始まっている。単行本にまとめられたのは、『アトリエ日記』『続アトリエ日記』『続々アトリエ日記』『やっぱりアトリエ日記』『じわりとアトリエ日記』と、本書を含めて6冊になる。

 始めた2003年には野見山はまだ82歳だった。それが老齢だとは言え、現在は100歳になっている。『どうにもアトリエ日記』は96歳から99歳までの日記でさすがに健康不安が何度も綴られている。東京女子医大に救急車で搬送されたのも何度もあり、数日間意識がなかったこともある。

 しかし、それにしても野見山は忙しい。ほとんど毎日来客があり、原稿の締め切りに追われ、個展やグループ展のための絵も描かなければならない。原稿の多さに音をあげたとき、秘書から野見山は絵ではなく原稿執筆で収入を得ているのだからとたしなめられる。

 毎日数行程度の日記だが、2018年3月2日の日記にはDOMANI展を見に行った感想が書かれている。 

3月2日

 六本木の国立新美術館に、DOMANI展を見にゆく。小さく明日展と振ってある。文化庁から海外へ派遣された画学生たちの展覧会。まさに今の時代を担うぴちぴち、と言ったところだろうが、なんだかぼくには漫画だ。

 芸術はとっくに滅びていると思うが、次の時代がこれか、ずいぶん安っぽい。

 銀座に回って、アンビロン展を観る。DOMANIに続いてこんどはアンビロンか。やたら横文字のタイトル、これ日本人のぼくたちが観るんだよ。

  残念ながら私はこの年のDOMANI展を見に行ってない。だが私にとって100歳の野見山は、過去の画家などではなく、現代のもっともすぐれた画家だと思っているから、野見山の価値観に従いたい。

 野見山さん、元気でもっと長生きしてほしい。

 

 

 

どうにもアトリエ日記

どうにもアトリエ日記