ニューオータニ美術館の野見山暁治展


 東京千代田区紀尾井町のニューオータニ美術館で野見山暁治展が開かれている(3月23日まで)。赤坂見附駅からすぐ近くのホテルニューオータニ ガーデンコート ロビィ階(6階)にある美術館だ。一流ホテルだが、私のような貧相な服装でもとく咎められることはなかった。いや、以前皇居の三の丸尚蔵館へ平川門から入ろうとしたときは、あれは皇宮警察だろうか警官にカバンを改められたことがあった。当時は仕事に就いてたし、貧相な服装と言っても畑山博芥川賞授賞式に出たときのような穴の空いているジャンパーというわけではなかった。
 ニューオータニ美術館は意外に広い空間で、今回野見山暁治1937年17歳の自画像から、2012年ステンドグラスの原画の大作まで並んでいる。総数36点だが、充実した良い個展だ。本展はステンドグラスの大きな原画を数点並べているのが売り物らしい。
 野見山暁治の絵が好きで、1983年の東京セントラル美術館の個展以来追いかけるように見てきた。1990年代のギャラリー上田の個展が忘れられない。そのしばらく前に九州のアトリエのベランダに置いてあった巨大な瓶が、記録的な強風にあおられて回転しながら舞い上がり、突然粉々に砕け散ったという。その時の砕けた瓶や流れ込む水流を野見山は繰り返し描いていた。その頃の野見山の作品は、中心に明確な形を描き、それを周辺の「地」が取り囲んでいるような印象がある。それに対して、2000年代以降は中心の形が目立たなくなり、画面全体に形態が散らばっている。
 私は90年代の野見山はピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲に例えられるのではないかと思ってきた。ピアノやヴァイオリンを中心にオーケストラが補佐している。それに対して00年代以降は交響曲に例えることができるのはないか。中心のない画面全体はすべての色や形が平等に作品を作っている。
 野見山は今年93歳になる。老いてますます優れた絵を展開した画家といえば、まず鉄斎、村井正誠、猪熊弦一郎などを思い出す。しかし、野見山は彼らに劣らない現代日本の代表的な画家と言えるだろう。
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野見山暁治展「いつかは会える」
2014年1月25日(土)〜3月23日(日)
10:00−18:00(月曜日休館)
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ニューオータニ美術館
東京都千代田区紀尾井町4-1
ホテルニューオータニ ガーデンコート ロビィ階(6階)
電話03-3221-4111
http://www.newotani.co.jp/museum