2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧
島尾新『雪舟の「山水長巻」』(小学館)を読む。これがすばらしい。雪舟の代表作「山水長巻」だけを1冊使って詳しく紹介している。「山水長巻」は国宝の巻物で、広げると長さが約16メートルもある。山口県防府市の毛利博物館が所蔵していて、1年か2年に…
前田恭二『やさしく読み解く日本絵画』(とんぼの本=新潮社)が分かりやすく、入門書としてとても良い。副題が「雪舟から広重まで」とあるように、取り上げられたのは雪舟、狩野永徳、長谷川等伯、俵屋宗達、尾形光琳、英一蝶、池大雅、円山応挙、伊藤若冲…
嵐山光三郎『文人暴食』(新潮文庫)を読む。これは『文人悪食』(新潮文庫)の続編だ。『〜悪食』『〜暴食』とも、それぞれ37人の作家を取り上げて、食べ物についての記述を中心に、実は作家の小伝を書いている。それがきわめて興味深くおもしろい。 本書『…
詩人の大和田海が内藤礼の絵画についてfacebookで書いている。 内藤礼が資生堂ギャラリーのグループ展に展示した作品がよかった。絵がとくにいい。なにかの「淡さ」を追求しているひとはおおいし、自分も「もののあわい」を深化させていきたいと願うひとりだ…
6月6日、なだいなだが亡くなった。なだは筑摩書房のPR誌『ちくま』に長年辛口のエッセイ「人間、とりあえず主義」を連載していて、私も愛読していた。同誌には佐野眞一もエッセイを連載していたが、橋下徹に関する週刊朝日問題で連載を降りたので、辛口エ…
東京六本木のShonandai My Galleryで「豊崎旺子・野沢二郎展」が開かれている(6月30日まで)。二人のうち野沢をちょうど20年見続けてきた。野沢は茨城県生まれ、今年55歳になる。。1982年に筑波大学大学院を修了している。これまで「VOCA展'97」や同年の「…
金森修『動物に魂はあるのか』(中公新書)を読む。著者はフランス哲学、科学思想史が専門の人。本書のテーマは「動物霊魂論」、まずアリストテレスから始まる。アリストテレスは、静物の霊魂を3つに分類する。 1.栄養的霊魂−−植物がもつもの。栄養、滋養…
東京千代田区の3331のArts Chiyodaにあるイムラアートギャラリー東京で三好彩展「穴の中」が開かれている(7月14日まで)。三好は1986年大阪府生まれ、2012年に京都芸術大学美術学部油画専攻を卒業している。初個展は今年京都のイムラアートギャラリーで開…
荻上チキ『彼女たちの売春(ワリキリ)』(扶桑社)を読む。ワリキリ=お金だけで割り切った、大人の関係。カジュアルな言い回しを装ってはいるが、ようは売春行為(ウリ)のこと。管理売春(業者が女性を雇って売春させる)とは異なり、個人が自分で客を見…
山下裕二 編・監修『雪舟はどう読まれてきたか』(平凡社ライブラリー)がおもしろかった。読み始めてすぐ「また、語られるような経歴を持つ画家も、我が『ひらがな日本美術史』では雪舟が最初である」と書かれていた。『ひらがな日本美術史』って橋本治が『…
藤田一郎『脳はなにを見ているのか』(角川ソフィア文庫)を読んだ。最初に開いた口絵の図に見覚えがあった。調べてみると2007年に読んでいた。その年、『「見る」とはどういうことか』(化学同人)として単行本として発行されたのだった。今回文庫化されて…
東京銀座6丁目のみゆき画廊で石井紀湖展「影の門」が始まった(6月22日まで)。石井は長くギャラリー山口で発表してきた。数年前から発表の場をみゆき画廊に移している。作品は木の柱やブロックを組み合わせて、いつも不思議な形を作っている。 木の大きな…
丸谷才一『快楽としての読書 海外篇』(ちくま文庫)を読む。同じシリーズの日本篇は先に紹介した。今回、取り上げられた書評が116篇、1964年から2001年に書かれたものから選ばれている。書評の大家が紹介しているので、また読みたい本が20冊近く増えてしま…
東京京橋のギャラリーT-BOXで「二人のエロチカ」と題する展覧会が開かれている(6月22日まで)。二人は池田満寿夫とラファエル・ナバス。ナバスは1964年スペイン生まれ、1986年にバルセロナ大学で博士課程を修了している。1992年に来日し、愛知県立窯業学校…
ヤン・ヨンヒ監督・脚本の『かぞくのくに』を見る。2012年公開の日本映画を対象にした「キネマ旬報」ベストテンで日本映画の1位に選ばれた。監督のヤン・ヨンヒは在日コリアン2世。 ストーリーをWipipediaから引くと、 在日コリアンのソンホは16歳のとき朝…
東京銀座6丁目のヴァニラ画廊で中田柾志写真展『ブローニュの森の貴婦人たち』が開かれている(6月15日=今日まで)。何やら優雅なタイトルだが、その本当の意味は? 個展のちらしに中田が書いている。 フランス、パリ市の西部に位置するブローニュの森。…
石毛直道『世界の食べもの』(講談社学術文庫)を読む。石毛は京都大学系の文化人類学者。世界の食卓文化論や料理の歴史、リビア砂漠探険記、また石毛直道自選著作集全12巻などがある。 本書は、週刊朝日百科『世界の食べもの』の中から著者が執筆した分を編…
東京日本橋三越前のギャラリー砂翁とギャラリートモスで及川伸一展「-andante-」が開かれている(6月20日まで)。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これまでギャラリー…
毎日新聞に「昨日読んだ文庫」というコラムがある。ここで坪内祐三が山口昌男の『本の神話学』(中公文庫)を取り上げている(6月9日)。坪内はこの本を高校生のときに初めて読み、以来10回近く通読しているという。部分再読した箇所なら20以上ある。 『本…
墨田区の向島百花園には句碑・歌碑がたくさん建てられている。 うつくしきものは月日ぞ年の花 寶屋月彦 今日の月さても惜しまぬ光りかな 金令舎道彦 紫の由かりやすみれ江戸生れ 井上和紫 空蝉の世のうきことはきこえこぬいわおの中も秋風のふく 鶴久子 限な…
講談社文芸文庫 編『追悼の文学史』(講談社文芸文庫)を読む。とても良い読書体験だった。取り上げられた作家は6人、佐藤春夫、高見順、広津和郎、三島由紀夫、志賀直哉、川端康成。これは講談社の文芸雑誌『群像』に追悼特集として掲載されたものを編集し…
丸谷才一の書評集で、ジョン・バージャーがフランシス・ベーコンについて語っていると知った。それで、ジョン・バージャー『見るということ』(ちくま学芸文庫)を入手した。バージャーはイギリスの美術評論家、作家と紹介されていて、飯沢耕太郎・監修、笠…
岩波書店のPR誌『図書』に連載されている大江健三郎のエッセイ「親密な手紙」だが、6月号は画家のフランシス・ベーコンとの出会いが語られている。 こういう「偶然」につて、その起った年月をはっきり覚えているというと信用されないが、30年前の7月、電車…
JR市ヶ谷駅のホームに立てられている看板にソフトバンクモバイルのスマホの広告が貼られていた。「通話も!」「ネットも!」とキャッチがあり、それぞれ折れ線グラフが添えられている。「通話も!」の横に大きく数字が書かれていて、98.4%、98.2%、98.0%…
ジュンク堂書店池袋本店でカメムシ展が始まった(6月30日まで)。全国農村教育協会がほぼ20年にわたって「日本原色カメムシ図鑑」全3冊を発行してきた。約10年に1冊の刊行だ。3巻が揃ったのを記念して今回カメムシの写真展を企画したらしい。主催が書店…
池袋の東京芸術劇場5階ギャラリー2で「池袋モンパルナス−−歯ぎしりのユートピア」が開かれている(6月5日=今日まで)。タイトルの「歯ぎしりのユートピア」は野見山暁治の言葉から採られている。戦争中、ソ連との国境近い満州の陸軍病院に肋膜で入院し…
スーザン・ソンタグの『他者の苦痛へのまなざし』(みすず書房)を読む。戦争とそれを撮影した写真について論じている。さきに出版している『写真論』の補完・発展とも言える。本書を読もうと思ったのは、小林紀晴『メモワール』(集英社)を読んだから。『…
上野川修一『からだの中の外界 腸のふしぎ』(ブルーバックス)を読んだ。腸がからだの中にある外界だという主張に惹かれて読んだのだが、期待は半ば外されてしまった。「からだの中の外界」という副題から、脳とは別のコントロールセンターについて詳しく語…
地下鉄銀座線末広町駅を出てすぐのところにアーツ千代田3331がある。いわば複合ギャラリー施設といったところか。元小学校の建物をそのまま利用しているからとても広い。そこにたくさんのギャラリーが入っている。 いくつかのギャラリーを覗いたあと、地下の…
グレアム・グリーン『見えない日本の紳士たち』(ハヤカワepi文庫)を読む。すでに発行されている『二十一の短篇』に収録されていない16篇を集めた短篇集。続篇も予定されているとのこと。 グレアム・グリーンは高校生の頃からもっとも好きな作家の1人で、…