毎日新聞に「昨日読んだ文庫」というコラムがある。ここで坪内祐三が山口昌男の『本の神話学』(中公文庫)を取り上げている(6月9日)。坪内はこの本を高校生のときに初めて読み、以来10回近く通読しているという。部分再読した箇所なら20以上ある。
『本の神話学』の初出は『中央公論』で、中央公論社は山口昌男ともっとも縁の深い会社だった。
今年3月30日、山口昌男さん(と言わせてもらいたい)は亡くなられた。
それなのに中央公論新社は『本の神話学』を復刊させることもなく『中央公論』にその追悼が1本も載ることがなかった。
そうか中央公論を名乗っていても「新社」はやはりまったく別の会社なのか。
痛烈な批判だが、おそらくそういうことなのだろう。名前は中央公論新社でも、実質は読売新聞出版部なのだから。ちなみにこのコラムは毎日新聞の日曜読書欄に毎週執筆者を変えて連載されている。丸谷才一が、自分が毎日新聞社の社長に提案して読書欄を変えたと豪語していた。たしかに私も20年近く、朝日、読売、毎日の読書欄を読み比べているが、出来の良い順から並べれば、毎日、朝日、読売という評価は(私の中で)長年揺るがない。それは微妙な差などではなくて、実に顕著なのだ。
- 作者: 山口昌男
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1977/12/10
- メディア: 文庫
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