山口昌男『本の神話学――増補新版』を読む

 山口昌男『本の神話学――増補新版』(中公文庫)を読む。山口昌男は博覧強記の文化人類学者。50年以上前に本書の単行本が出版されてそれで読んでいたが、改めて50年ぶりの再読。本書は、ワイマール文化、ワールブルグ研究所、ユダヤ人の知的環境、モーツァルト、社会科学としての芸能、ルネサンス等々についての膨大な引用から成っている。何しろ、巻末の人名索引に600名が取り上げられている。

 最初にスチュアート・ヒューズ『意識と社会』を取り上げ、ついでピーター・ゲイ『ワイマール文化』を取り上げる。ワイマール文化の最も魅力的な部分は、バウハウスやフランクフルト社会研究所、ベルリン精神分析研究所、ワールブルク研究所などだという。それに関連して、数多の思想家とその業績が紹介され、目くるめくような展開をみせてくれる。浅学の私には付いて行くのが辛く、読むのが大変だった。

 晩年に山口昌男札幌大学学長を務め、大学内に個人図書館「山口文庫」を作っている。本の収集には相当の力を入れ、その収集と分類がひとつの学問でもあった。おそらく、札幌大学にはまだ山口文庫が存在しているのではないか。

 私の親しい画廊主が山口昌男と懇意にしていて、亡くなる前も病状とかいろいろ山口さんの動向を教えてもらっていたことを思い出す。