2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

今野敏「隠蔽捜査」は優れた警察小説だ

今野敏「隠蔽捜査」(新潮文庫)は優れた警察小説だ。読み始めからわくわくさせられる。50ページほど読んだところで、何でこんなつまらないものを読み始めてしまったんだと思った「虐殺器官」(昨日紹介した)とは正反対で、どんどん引き込まれる。ところが…

日本の新しいSF「虐殺器官」への評価

SF

ハヤカワ文庫から2月に発行された伊藤計劃「虐殺器官」が6月でもう11刷を重ねている。本書が単行本で発行されたのが2007年、これが伊藤計劃の処女長篇であり、しかし作家はその後長篇を2篇残して2009年に35歳で亡くなってしまう。巻末の大森望の「解説」…

追悼・小松茂美先生

朝日新聞6月26日夕刊の「惜別」という欄に「古筆学者・小松茂美さん」が取り上げられている。見出しが「名筆の分析 独学で究める」とある。5月21日死去(心不全)85歳と。 平安から鎌倉時代の文献や断片の筆者を特定し、背景を追求する。そんな「古筆学」…

飯田市のとんかつ専門店「かつ禅」

飯田市のホテルでこれを書いている。こちらへ来るとたまに行く店がある。とんかつ専門店の「かつ禅」だ。店主が高校のクラブで一緒だった同窓生だ。われわれは天文班(クラブをそう言った)だった。高校にはすばらしい口径6インチ(15cm)の屈折式赤道儀…

東京オペラシティ・アートギャラリーの猪熊弦一郎展と収蔵品展

新宿区初台の東京オペラシティ・アートギャラリーで「猪熊弦一郎展 いのくまさん」が開かれている(7月4日まで)。 猪熊弦一郎は10年前に東京ステーションギャラリーで回顧展を見て、晩年の作品が素晴らしいと思った。それを何人かの画廊主に話すと、彼ら…

内藤礼に関するささやかな試論

横浜トリエンナーレの三渓園での内藤礼の展示は見事だった。三渓園に移築された農家の古い苫屋、狭い畳敷きの部屋に電熱器が置かれ、その上に絹糸が垂れ下がっている。電熱器から立ち上る上昇気流のために絹糸がふわりふわりと揺れている。無人の古い室内に…

東京のど真ん中のタケニグサ

画廊を回って京橋界隈を歩いていた。自動販売機を見かけたときに喉の渇きをおぼえ(その逆ではなく)、缶コーヒーを買って飲んだ。飲んでいるときに目の前の丈の高い草に気づいた。葉の形から容易にタケニグサと知れた。普通、河川敷や道路脇、人と自然の境…

オオタアリサ個展が危険で面白い

京橋のギャラリー・ビー・トウキョウで開かれているオオタアリサ個展が危険で面白い(26日まで)。 オオタアリサは1987年東京生まれ、現在武蔵野美術大学4年在学中。今回が初個展だ。見たとおり妖しい世界を描いている。 「去る昨日」 石田徹也を思わせる …

絵は買わないと分からないか?

絵は買わないと分からないとうそぶいているコレクターがいる。本当にそうだろうか? 椹木野衣が新刊「反アート入門」(幻冬舎)で次のように言っている。 近年、アートの世界で仕事をしていて、よく聞くようになった決め台詞があります。 それは、「アートは…

夏至の日の東京スカイツリー

今日6月21日は夏至で、1年のうちで昼が一番長い日だ。その夏至の日の午後7時の東京スカイツリー。空はまだ十分明るい。今日の東京スカイツリーの高さは398メートル。まもなく400メートルを超える。 ・東京スカイツリーの公式ホームページ http://www.toky…

ダンボールの仏像、INAXギャラリーの本堀雄二展

京橋のINAXギャラリー2で本堀雄二展「−紙の断層 透過する仏−」が開かれている(6月28日まで)。 本堀はダンボールを使って仏像を作っている。 本堀の言葉、 ダンボールは隙間があるし、断面を見せながら重ねていけば面白いかなぁと。上下に重ねたり、表面…

今年もギャラリイKで弓良麻由子展「殻の中の波動」を見る

昨年に続いて今年もギャラリイKで弓良麻由子展「殻の中の波動」を見た。弓良は1984 年生まれ、日大芸術学部彫刻コースを卒業して、昨年武蔵野美術大学大学院彫刻コース修了。ギャラリイKでの個展は4回目。個展は今日で終わったが。 作品は石膏の外枠の中に…

中澤まゆみ「男おひとりさま術」はお勧めだ

中澤まゆみ「男おひとりさま術」(法研)はお勧めだ。前著『おひとりさまの「法律」』(法研)も評判がよくて、9万部も売れたらしいけど、こちらの方が役に立つと思う。 老齢の男のための生活ハウツー本で、実に細かいところまで丁寧に解説している。食生活…

古田亮「俵屋宗達」(平凡社新書)の大胆な主張

古田亮「俵屋宗達」(平凡社新書)が大胆な主張を繰り広げていて面白い。副題が「琳派の祖の真実」、結論を言えば琳派の祖とされている俵屋宗達は琳派ではなく、別格の優れた画家だったというもの。驚くような主張だが、極めて説得力がある。 著者は宗達の作…

うちの夫のセックス、おかしくないですか?

「婦人公論」6月22日号に「うちの夫のセックス、おかしくないですか?」というテーマで「読者の性の悩みQ&A」が掲載された。 Q いい年をして夫の性欲は強すぎるのでは、と心配です (大阪府・56歳・主婦) 58歳の夫は、今でも週に1度、土曜日の夜になると…

山本弘80歳の誕生日

今日6月15日は山本弘の誕生日、生きていれば80歳になる。山本弘は1930年に生まれたから今年は生誕80年だが、それを祝うのはどうやら私だけのようだ。 しかし、生誕90年はどこかの美術館で個展を開いてもらうよう努力しよう。生誕100年はもう私も生きていな…

「究極の田んぼ」という過激な自然農法をすすめる本

岩澤信夫「究極の田んぼ−−耕さず肥料も農薬も使わない農業」(日本経済新聞出版)が過激な自然農法を提案している。まず、有機農業を否定する。有機農産物は危険だと驚くようなことを言う。 JAS(日本農林規格)法による日本の有機農法は、非常に変則的な形…

空山基展が始まった

銀座2丁目のスパンアートギャラリーで7日から空山基展が始まった(6月19日まで)。空山基はセクシーロボットのイラストで一時期の広告業界を風靡した。エロティックな女性ヌードのイラストも発表しており、何冊ものイラスト集が発行されていてファンも多…

有名人の人相を見る

先に紹介した「ちくま」6月号連載の佐野眞一「テレビ幻魔館」からの引用で、省略したところに面白い指摘があった。 かりゆしウエアをラフにはおった島袋(前名護市長)の小太り体型をテレビで見て、これほど典型的なウチナンチューシルエットをした人物なら…

秀逸なコピー(その2)

カレシの元カノの元カレを、知っていますか これはエイズ検査を呼びかけた公共広告機構のコピーだ。とても良いコピーだと思う。最初に「カレシの」ともってきたところも良い。これを「カノジョの元カレの」としたら、少しだけざわつきも大きいだろう。ざわつ…

佐野眞一の普天間基地移設論

雑誌「ちくま」2010年6月号の佐野眞一の連載エッセイ「テレビ幻魔館」の「”ぼってかー”総理」が過激で面白く極めて参考になる。長いけれど引用する。ここで総理と言われているのは鳩山さんだ。 ゴールデンウィーク中の5月4日、鳩山首相は普天間基地の移設…

野見山暁治さんの見た夢

野見山暁治「続アトリエ日記」(清流出版)より。2007年4月8日の日記。 オンナに触れる夢は繰り返し見つづけた。今も見る。欲情するものはとっくに体内から消えうせているのに、どうしてだろ。騙されていた。セックスには実体がない、イリュージョンだ。だ…

秋山画廊の遠藤利克展

朝日新聞2010年6月2日夕刊に田中三蔵さんが遠藤利克展の展評を書いていた。 (最初にシューゴアーツの戸谷成雄展を紹介して)もうひとつは、遠藤利克展。50年生まれの遠藤の最新作、高さ2.2メートルの彫刻「空洞説・2010 AKIYAMA」が1点。関連の素描5点…

武満徹の《系図(ファミリー・トゥリー)》という曲

武満徹が亡くなった後、小学館が武満徹全集を企画した。それを機に全集編集長の大原哲夫が武満に関係の深かった15人にインタビューし、まとめたものが「武満徹を語る 15の証言」(小学館)だ。15人は、横山勝也、小泉浩、今井信子、篠田正浩、宇野一朗、池辺…

ギャラリーツープラスのおおらい えみこ作品展が面白い

銀座1丁目のギャラリーツープラスで始まった おおらい えみこ作品展が良かった(6月10日まで)。 おおらい えみこはエッチングで物語の一場面のような作品を作っている。ここに掲載したDMハガキに使われている「ムーンライトパーティ」と題された作品は、…

深川へ移転した無人島プロダクション

3年前の開廊以来、画廊界では僻遠の地たるJR中央線の高円寺駅近くで営業してきた現代美術の異端ギャラリー「無人島プロダクション」が深川へ移転した。移転後の第1回展は八木良太展だった(5月29日まで)。 無人島プロダクションといえば、何よりもChim↑P…

吉田秀和の小林秀雄批判

「小林秀雄のモーツァルト論について書く吉田秀和」(2010年5月9日)に続いて再び吉田秀和による小林秀雄批判を「之を楽しむ者に如かず」(新潮社)から紹介する。 これまでも書いたことだが、小林秀雄のあの評論(?)(=小林秀雄の『モーツァルト』)は…

ドン・ウィンズロウの「犬の力」を読んで

ドン・ウィンズロウ「犬の力」(角川文庫)上下2巻を読み終えた。なかなか評判の良い小説らしく書店でも平積みされていた。私がこれを購入したのは毎日新聞2010年1月17日の書評を読んだからだ。そこで江國香織が「犬の力」を絶賛している。 描かれるのは、…

写真の著作権の例外

写真の著作権は普通撮影者に帰属する。あらかじめ契約して著作権が発注者に帰属するとしておけば、著作権者は撮影者ではなく発注者になる。しかし特に契約がないのに撮影者に著作権が発生しないという例外がある。 それは平面を撮影した場合で、著作権は発生…

art_icle賞グランプリを受賞した坂田祐加里

第3回art_icle賞グランプリが発表され、坂田祐加里がグランプリに選ばれた。(「アーティクル」5月号) 同じ「アーティクル」6月号に坂田祐加里が詳しく紹介されている。坂田は1982年神奈川県生まれ、今年東京造形大学美術学科を卒業している。同誌より、…