東京葛西の関口美術館で「川村家3代展」が開かれている(7月13日まで)。美術館のホームページから、
彫刻家・柳原義達先生の書生として7年間学んだ川村兼章さんの作品を中心に、川村家4人の作品を展示致します。
会場には、師である柳原義達の鳩の彫刻・デッサンを同時に展示、戦後日本を代表する彫刻家の作品も楽しむことが出来ます。
川村兼章さんは、柳原先生からモチーフとして「馬」を勧められ制作を続けています。
本展に展示した馬の彫刻「ポレポレ」は2メートル超える大きさです。迫力ある彫刻をぜひ体感してほしいと思います。
また、川村さんの祖父・信雄さんは油彩画、父・紫朗さんは日本画、伯母・直子さんはインスタレーションと芸術一家であります。
川村家三代に続く芸術を本展では一堂に観ることが出来ます。
関口美術館は柳原義達を常設展示する私立美術館で、今回柳原の弟子たる川村兼章、その祖父川村信雄、父川村紫朗、伯母川村直子の4人の作品を展示している。私はこのうち川村直子の作品を見に行った。
川村直子は1932年東京生まれ、斎藤義重に師事している。ちらしの紹介によると、
川村直子は視覚をだますような絵画によって1960年代後半より広く知られるようになりました。1969年神奈川県美術展でグランプリを受賞、同年第4回日本芸術祭では優秀賞を受賞、近年は平面作品のみならずインスタレーションへと展開し、小さな鉛の粒子を取り付けた無数のワイヤーを吊るし、鉛で空中に幾何学的に空間の図解を記した作品≪無題≫(2003)などで注目を集めました。
会場には細い針金を鉛の粒で繋いだ直方体の作品が2点展示されている。私が川村直子の作品を見たのは1990年代で、銀座のギャラリーせんたあぽいんとでの個展だった。そこが閉廊した後はコバヤシ画廊で2回ほど個展を開催していた。すばらしいインスタレーションで今も強く印象に残っている。
その作品はテグスを縦横に碁盤の目のように等間隔に張って、さらにそれを縦に何十層にも重ね合わせ、それらを縦糸でもすべて結ぶ。その交差しているところに玉を付けている。糸が作る立方体がずっと向こうまで続いている。その作品は空間がきっちりと作家によって制御されている。奥行きが途方もなく深く感じられてほとんど無限を出現させているかに見えた。
今回展示されている直方体の作品は造形的にはそのマケットのように見える。このマケットのとの違いは、交点となっている玉がどこまでも続いているような幻想的な空間が続いていたことだ。その時の印象は「この直方体の空間の中に無限が見える」というものだった。川村直子=無限の空間の演出家という呼称が私の中で確定した。
同じころ、真逆の造形をする作家がいた。菊元仁史でギャラリーQやexhibit LIVE & Morisで発表していた。
菊元も直方体の作品を作っていた。細い角材の脚の上に作品が載っている。左右1メートル強、奥行き1.5メートル弱か。手前から奥に角材が並べられ、上部にも同じ角材が並んでいる。上の角材と下の角材をたくさんの垂直の針金が結んでいる。また針金と交互してたこ糸みたいな紐が上下を結んでいる。その針金は横に規則正しく列を作っている。針金の途中に短い金属棒が止められている。これが全体の構造である。
さて、その作品を見ると、たくさんの針金と糸が重なってどうなっているのかよく分からない。正面と左右の脇から見て、上記の構造を知ったが、それはいわば知識だ。見え方としては、深さというか奥行きがあいまいになってしまう。霧の中にいるように距離がつかめないのだ。
菊元の作品では空間が消えてしまう。川村の作品の中に生まれる無限の空間と、菊元の作品の中の消えた空間、対照的な空間の創造がとても面白かった。私の中では川村直子と菊元仁史がセットで記憶されているのだ。
・菊元仁史の個展
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20110706/1309900313
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20070314/1173826049
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「川村家3代展」
2025年6月7日(土)-7月13日(日)
11:00-16:00(月曜日休館)
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関口美術館
東京都江戸川区中葛西6-7-12
電話03-3869-1992
http://www.bbcc.co.jp/museum/sekiguchi%20museum%2032.html