2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧
モラヴィア『薔薇とハナムグリ』(光文社古典新訳文庫)を読む。副題が「シュルレアリスム・風刺短篇集」で、本文250ページほどに15の短篇が収められている。原著は54作品を収める『 シュルレアリスム・風刺短篇集』で、この中から15篇が選ばれた。ほとんど…
新宿の地下道に貼られていたポスターが目に入った。新しい缶入り飲料「お嬢様聖水」の広告だった。キャッチフレーズが「私の中の女神が目覚める」とあり、ショルダーが「植物発酵エナジードリンク」となっている。ポスターや製品のイラストから見て、若い女…
東京台東区のいりや画廊で柳井嗣雄展「ー 空洞 ー」が開かれている(5月30日まで)。柳井は1953年山口県萩市生まれ、1977年に創形美術学校版画科を卒業している。1980年にギャラリー21で初個展、以来個展を41回開いていると略歴にある。数々のグループ展に…
小林敏明『西田哲学を開く』(岩波現代文庫)を読む。副題が「〈永遠の今〉をめぐって」とある。小林は廣松渉の弟子筋にあたる哲学者で、『廣松渉――近代の超克』(講談社)という著書がある。私も今まで、『廣松渉――近代の超克』のほかに『〈主体〉のゆくえ…
新国立劇場小劇場のリーディング公演『スザンナ』を見た(5月26日)。脚本はノルウェーの劇作家ヨン・フォッセ、演出が宮田慶子、出演は青山眉子(年老いたスザンナ)、津田真澄(中年のスザンナ)、山崎薫(若いスザンナ)。『人形の家』の作者イプセンの…
金井美恵子エッセイコレクション4『映画、柔らかい肌。映画にさわる』(平凡社)を読んでいる。厚い本で600ページを超えている。その第1章「映画、柔らかい肌」を読んだところだが、その2/3が「金井美恵子インタヴュー1982」となっていて、聞き手は映画…
先日埼玉県日高市の高麗に住む友人を訪ねて行った。西武池袋線の高麗駅は飯能駅から秩父方向へ2つ目の小さな駅。駅前には赤い2本の柱が立っていて「天下大将軍」「地下女将軍」と書かれている。これは将軍標と言って朝鮮・韓国の村落に見られる境界標(道…
近くの植物園でたくさんのアジサイが咲いていた。
ベランダの片隅に置いてある播種床に見慣れない植物の芽が生えていた。播種床といえば物々しいが、種まき専用の植木鉢で、気になった種を適当に播いておくのに使っている。去年の秋にもお茶の水の歩道で拾ってきたトチノキの実を播いておいた。 その播種床に…
藤田正勝『西田幾多郎』(岩波新書)を読む。西田の簡単な伝記から始めて、最初の著作『善の研究』を解説する。西田のこの難解な哲学書がなぜ多くの人によって読み継がれてきたのか。それは倉田百三が本書の序文を読み、そこに「個人あって経験あるにあらず…
画家の宮崎静夫さんが4月12日、88歳で亡くなった。シベリアに抑留された体験を持ち、それをテーマに描いていた。一度個展会場で話したとき、同じく俘虜を体験してシベリアシリーズを描いて評価の高い香月泰男の作品のことを、シベリアの体験はあんなもので…
東京神保町のギャラリー福果で杉原民子展が開かれている(5月23日まで)。杉原は佐賀県出身、東京オリンピックの年に生まれたという。 杉原はここでオオカミや馬を描いている。草原を駈ける馬と騎手のドローイングもある。先日むかしの杉原のオオカミを紹介…
唐澤太輔『南方熊楠』(中公新書)を読む。ていねいに書かれた熊楠の伝記だ。熊楠は柳田国男と双璧をなす日本の民俗学の創始者でもあり、粘菌研究者としても一流で、在野でありながら昭和天皇へのご進講を務めている。 若くしてアメリカへ渡り、いくつかの学…
東京新宿のfree art space ポルトリブレで10周年記念特別企画「4人展」が開かれている(5月25日まで)。4人の作家は、及川伸一、金澤英亮、森本秀樹、山崎康譽で、共通するのは以前ギャラリー汲美に出品していた作家たちということだ。 金澤英亮 山崎康譽…
東京表参道のギャラリーSTORKSで辻忍展が開かれている(5月18日まで)。辻は1961年、東京都生まれ。1984年に東海大学教養学部芸術学科を卒業している。1989年に銀座のギャラリーミハラヤで初個展、以来ときわ画廊やギャラリークラマー、横浜のギャラリーKな…
アンディ・ウィアーのSF小説『火星の人』(ハヤカワ文庫)を読む。古い友人のS君が面白いからと貸してくれた。彼は高校生の頃からのSFファンで、たくさんのSF小説を読みこなしていて、その推薦なら外れがない。 本書は火星に降り立った6人の探査隊がわずか…
木下長宏『ゴッホ〈自画像〉紀行』(中公新書)を読む。カラー図版が76点も入っていて、新書としては贅沢な作りだ。木下はゴッホの自画像をていねいに分析して、ゴッホの作品を読み解いていく。それは見事な方法だと思う。 ゴッホは絵描きになろうとして絵を…
東京銀座一丁目のギャラリーゴトウで斉藤実コレクション展&関一彦コレクション展が開かれている(5月17日まで)。そこに斉藤のコレクションで杉原民子のドローイングが展示されている。その中でもとくにオオカミを描いたというドローイングがとても良い。 …
鬼海弘雄『誰をも少し好きになる日』(文藝春秋)を読んで、そこに掲載されている写真と同じ場所を撮ってみたいと思った。以前も鬼海の別の写真集のカットと同じ場所を探したことがあったが、その時は見つけられなかった。今回は、写真に住所表示が写ってい…
長田弘が亡くなった。5月3日、憲法記念日に。75歳だった。私が持っている長田弘の詩集は『現代詩文庫 13 長田弘』(思潮社)で、1968年に初版が発行された。私はそれを1971年に横浜で買っている。この時すでに4刷だから、長田弘は人気のある詩人なのだろ…
『素描 埴谷雄高を語る』(講談社文芸文庫)を読む。編集が講談社文芸文庫となっている。72人という多くの文学者たちが1人あたり3〜4ページという分量で埴谷について書いている。全体が3つに分かれ、それぞれ埴谷生前に刊行された『埴谷雄高作品集』(河…
桂米朝×筒井康隆『対談 笑いの世界』(朝日新聞社)を読む。米朝が文化功労者、筒井が紫綬褒章を受賞したのを記念して、朝日新聞の2003年の正月に掲載するため行われた対談。それが二人が興に乗って何時間も話し、それでも足りなくて改めて場所を替えて再度…
鬼海弘雄『誰をも少し好きになる日』(文藝春秋)を読む。これがとてもすばらしい。『文学界』の2011年9月号から3年間連載したもの。連載時の形は分からないが、本書ではエッセイが3ページに写真が2葉2ページという構成になっている。鬼海の写真は何度…
椹木野衣『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎新書)に二笑亭という奇妙な建物が紹介されていた。これを作った渡辺金蔵がアウトサイダー・アーチストに分類されている。それで興味を持って、そこに紹介されている式場隆三郎ほか著の『定本 二笑亭綺譚』(…
『現代アートの本当の学び方』(フィルムアート社)を読む。現代アートを学びたい若者のための指南書といったところ。会田誠と日比野克彦の対談や、なぜデッサンは必要か? とか、アートは美大で学べるのか? とか、アートとデザインは接近してきているとか…
朝日新聞の「ひととき」欄に「あの山菜をもう一度」という投書が載っていた(5月5日)。投稿者は調布市の岡村三華子38歳。 5月が来るたびに、切ない気持ちになることが、ひとつある。 ゴールデンウィークは、たいてい茨城県日立市の実家に帰る。(中略) 両…
相原勝『ツェランの詩を読みほどく』(みすず書房)は難解なツェランの詩を読みほどいてくれている。その中から「死のフーガ」の全文とその解説を抄録する。 死のフーガ 夜明けの黒いミルクぼくらはそれを晩に飲む ぼくらはそれを昼と朝に飲むぼくらはそれを…
野田宇太郎『新東京文学散歩 上野から麻布まで』(講談社文芸文庫)を読む。戦後すぐの昭和25〜26年に作家たちの住んだ家を訪ねて歩いた記録。といっても戦災=空襲のためにすでにほとんどの風景は変わっている。それを根気よく探して訪ね、代替わりしている…
毎日新聞の書評欄に連載されている「昨日読んだ本」というコラムの今日(5月3日)の筆者は将棋棋士の先崎学だった。先崎は3冊の文庫本を取り上げている。 『イグ・ノーベル賞 世にも奇妙な大研究に捧ぐ!』(講談社+α文庫)はたしかに笑えるし、考えさせ…
丸谷才一エッセイ傑作選2『膝を打つ』(文春文庫)を読む。主として対談を収めている。生前、丸谷に「丸谷才一全集 全12巻」に収録しなかったユーモアエッセイや対談を文庫版で傑作選として収録すると約束していたのだという。軽くて読みやすくおもしろい情…