芝居

井上ひさしの戯曲講座『芝居の面白さ、教えます 海外編』を読む

井上ひさしの戯曲講座『芝居の面白さ、教えます 海外編』(作品社)を読む。以前紹介した『~日本編』の姉妹書。仙台文学館での講演の筆記録。とても面白かった。 取り上げられているのは、シェイクスピアの『ハムレット』、イプセンの『ヘッダ・ガーブレル…

井上ひさし『芝居の面白さ、教えます 日本編』を読む

井上ひさし『芝居の面白さ、教えます 井上ひさしの戯曲講座 日本編』(作品社)を読む。これが面白かった。仙台文学館の初代館長だった井上ひさしが行なった戯曲講座という講演会と文学講座を文字起こししたもの。ほかに「海外篇」もある。 取り上げられたの…

山崎努『「俳優」の肩ごしに』を読む

山崎努『「俳優」の肩ごしに』(日本経済新聞出版)を読む。山崎が昨年の8月に「日本経済新聞」に連載したもの。初め幼少の頃の思い出から書き始めている。最初はちょっと危なっかしい。大丈夫かなと危惧しながら読む。ところが俳優を志してから筆が乗り始…

チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』を読む

チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』(光文社古典新訳文庫)を読む。訳者は浦雅春。先に話題になった映画『ドライブ・マイ・カー』の劇中劇として演じられていたのが「ワーニャ伯父さん」だった。 私は10代後半の頃チェーホフの小説を夢中になって読ん…

福田恒存『演劇入門 増補版』を読む

福田恒存『演劇入門 増補版』(中公文庫)を読む。これが素晴らしかった。福田は劇作家、演出家、評論家でもある。戦後シェイクスピア劇を日本に普及した功績もある。福田は台本の言葉を重視する。シェイクスピアの翻訳について、小田島雄志と明治の坪内逍遥…

清水邦夫の幻の芝居『ひばり』について

私は木冬社の芝居が好きだった。木冬社は劇作家の清水邦夫が主宰していた。初期の頃はしばしば蜷川幸雄が演出を担当していた。私が今まで見た芝居で最も高く評価するのは、『タンゴ、冬の終わりに』の初演で、清水邦夫脚本、蜷川幸雄演出、朝倉摂舞台美術だ…

長谷川康夫『つかこうへい正伝』が文庫化される

長谷川康夫『つかこうへい正伝』が新潮文庫化される。それで、5年前に書いた紹介を再掲し、あわせて、さすらい日乗さんによる長谷川康夫『つかこうへい正伝1968−1982』評も一緒に再掲する。 ・ まず私が1995年12月22日にアップした『つかこうへい正伝1968−19…

エッジでサラ・ケイン作、川口智子演出のパンクオペラ『4時48分 精神崩壊』を見る

渋谷のスペースエッジでサラ・ケイン作、川口智子演出のパンクオペラ『4時48分 精神崩壊』を見る。作曲が鈴木光介。 サラ・ケインはイギリスの劇作家、1971年生まれだが、28歳のときうつ病で自死している。川口は10年前からサラ・ケインの芝居を上演している…

座・高円寺で『大いなる平和』を見る

座・高円寺で芝居『大いなる平和』を見る。これは毎年恒例の座・高円寺の劇場創造アカデミー10期生修了上演で、原作がエドワード・ボンドの『戦争戯曲集三部作』、3幕の演出がそれぞれ松本修、生田萬、佐藤信が担当している。上演時間が6時間半! 3幕それぞ…

井上ひさし『組曲虐殺』を読む

井上ひさし『組曲虐殺』(集英社)を読む。特高によって虐殺された小林多喜二を描いた戯曲。井上は『少年口伝隊一九四五』のように原爆投下後の悲惨な広島を、悲惨さを避けないで見事に作品化した優れた批判的な作品が多い。だから期待して読んだ。 小林多喜…

野木萌葱 作『三億円事件』をシアター711で見る

野木萌葱 作『三億円事件』を下北沢のシアター711で見た(10月15日)。ウォーキング・スタッフ プロデュース、和田典明 演出。 三億円事件は1968年に府中市で実際に起こった現金3億円強奪事件。事件は7年後時効になった。芝居は時効3カ月前の府中署の特別捜…

野木萌葱 作、小川絵梨子 演出『骨と十字架』を見る

新国立劇場小劇場で野木萌葱 作、小川絵梨子 演出『骨と十字架』を見る。野木は2年ほど前に『東京裁判』を見ていっぺんに魅了された。この『骨と十字架』は、北京原人の発見に関わったカトリック神父であり古生物学者のテイヤールに対するヴァチカンの、カト…

若葉町ウォーフで演劇ユニットnoyRの『ニーナ会議‐かもめより‐』を見る

横浜黄金町の若葉町ウォーフで演劇ユニットnoyRの『ニーナ会議‐かもめより‐』が上演されている(4月28日まで)。チェーホフの『かもめ』を原作として、樋口ミユ構成・演出で『かもめ』の登場人物のひとりニーナを主人公にして再構成している。ニーナがオリジ…

新国立劇場で『リチャード三世』と『あーぶくたった、にいたった』を見る

新国立劇場が「こつこつプロジェクトーディベロップメント―」を始めた。最初はリーディング公演で『スペインの戯曲』と『リチャード三世』、『あーぶくたった、にいたった』を取り上げたが、私はシェイクスピアの『リチャード三世』と別役実の『あーぶくたっ…

三好十郎作『トミイのスカートからミシンがとびだした話』を見る

10月末に新国立劇場小ホールで同劇場演劇研修所第12期生試演会があった。演目は三好十郎作の『トミイのスカートからミシンがとびだした話』で、1951年に発表されてその年に初演した以来の舞台化らしい。演出が田中麻衣子。パンフレットにあらすじが紹介され…

横内謙介戯曲集『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』を読む

横内謙介戯曲集『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』(テアトロ)を読む。先月、信濃町の文学座アトリエの文学座附属演劇研究所研修科発表会でこの芝居を見た。演出が小林勝也だった。 芝居はアンデルセンの『はだかの王様』やセルバンテスの『ドン・…

井上ひさし・作『少年口伝隊一九四五』が素晴らしい

井上ひさし・作『少年口伝隊一九四五』がとても良かった。演出が栗山民也、新国立劇場演劇研修所公演の朗読劇だ。私は初日の8月1日に見た。朗読劇なので、舞台の上に横1列で12人の役者が並んでいる。演劇研修所第12期生たちだ。音楽は後方にギターの宮下祥…

内藤啓子『赤毛のなっちゅん』を読む

内藤啓子『赤毛のなっちゅん』(中央公論新社)を読む。副題が「宝塚を愛し、舞台に生きた妹・大浦みずきに」とあり、宝塚のトップ俳優だった大浦みずきについて、その一生を姉の内藤が書いた伝記だ。大浦みずきは2009年に53歳で肺がんのため亡くなった。 私…

TBスタジオプロデュース公演『手紙』を見る

TBスタジオプロデュース公演『手紙』を見る。作・演出が得丸伸二で、出演が得丸と山上優の二人。リーディング・シアター=朗読劇。 得丸の演出後記から、 本作はA・R・ガー二―の『ラブレターズ』を上演しようとして上演権が取得できなかったため、日本版ラブ…

新国立劇場の『美しい日々』を見た

松田正隆作の芝居『美しい日々』を新国立劇場で、同劇場演劇研修所第11期生修了公演として見た(2月6日)。演出は宮田慶子。忘れていたが、7年前にも第4期生の修了公演で見ていた。今回見ている間も見終わっても全く覚えていなかった。観劇記をこのブログに…

さすらい日乗さんによる長谷川康夫『つかこうへい正伝1968−1982』評

さすらい日乗(指田文夫)さんが、長谷川康夫『つかこうへい正伝1968−1982』(新潮社)について、大変興味深い書評を寄せてくれた。それを掲載する。 長谷川康夫の『つかこうへい正伝』を読んだ。 非常に面白いが、彼の作劇術は、実は小津安二郎が、野田高梧…

『美しきものの伝説』を見る

宮本研『美しきものの伝説』を文学座アトリエで見る。文学座のホームページから、そのあらすじ。 物語は大正元年、伊藤野枝が社会主義活動家・堺俊彦の売文社を訪ね、 大杉栄や平塚らいてうに出会う場面から始まる。 〈売文社〉〈芸術座〉をめぐって、人々が…

サンモールスタジオで『二階の女』を見る

新宿のサンモールスタジオで山上優演出の『二階の女』を見る。獅子文六原作、飯沢匡脚本。役者はNLTの団員を中心に文学座や青年座などから集めている。 「あらすじ」をパンフレットから引く。 時代は昭和13年(1938)から16年(1941)の開戦の朝まで。東京、…

岡部耕大『追憶』を見る

岡部企画プロデュース『追憶』を見る。紀伊国屋ホール、岡部耕大 作・演出。副題が「7人の女詐欺師」。昭和11年、賄賂を受け取って協力する軍人の大佐と結託した悪徳商人が密輸で儲けていたが、商人の一人が足を洗おうとして殺される。殺された商人と親しか…

モーム『聖火』を読む

モーム/行方昭夫・訳『聖火』(講談社文芸文庫)を読む。『月と六ペンス』のモームが書いた戯曲、これがとても良かった。さすがストーリーテラーのモームと思わせたが、解説ではモームのほとんどの芝居が大衆向け路線の風俗劇で、本作を含めた4作がイプセン…

絶対的『彼と私』を見る

2月4日にトーキョーワンダーサイト本郷で行われた絶対的の公演『彼と私』を見た。演出が卓翔、学芸が川口智子とある。出演は梵谷(香港/現代演劇)、鵜澤光(能楽)、武田幹也(舞踏)の3名。 3名が自己紹介のあとモダンダンスと舞踏を組み合わせたようなダ…

朗読劇『ひめゆり』を見る

新国立劇場演劇研修所公演 朗読劇『ひめゆり』を見る。新国立劇場には付属の演劇研修所(NNTドラマ・スタジオ)があり、舞台俳優の育成をしている。毎年夏に3年生が朗読劇をしていて、昨年までずっと井上ひさしの『少年口伝隊 一九四五』が演じられていた。…

リーディング公演で別役実『門』を見た

先月、新国立劇場のマンスリープロジェクトで別役実の『門』のリーディング公演を見た。マンスリープロジェクトは毎月行われていて、多くは講義が多いのだが、年に1回リーディング公演がある。すべて無料なのだ。今までもリーディング公演は何回か見てきた。…

野木萌葱『東京裁判』を見る

野木萌葱 作『東京裁判』を新国立劇場演劇研修所10期生有志企画が上演した舞台を見た(芸能花伝舎内 新国立劇場演劇研修所 実習室、6月25日)。 ごく簡単な装置。舞台の中央に丸いテーブルが置かれている。それをとり囲む5脚の椅子。芝居が始まると男たちが…

『楽屋』観劇のすすめ

先日(4月21日)、朝日新聞夕刊にも紹介されたが、現在東京都世田谷区梅が丘BOXで清水邦夫作『楽屋』が連続競演されている。燐光群アトリエの会主催で、『楽屋』という芝居を18団体が競演する(4月27日〜5月10日まで)。 18の団体が共通の舞台、セットを使…