新国立劇場で『リチャード三世』と『あーぶくたった、にいたった』を見る

 新国立劇場が「こつこつプロジェクトーディベロップメント―」を始めた。最初はリーディング公演で『スペインの戯曲』と『リチャード三世』、『あーぶくたった、にいたった』を取り上げたが、私はシェイクスピアの『リチャード三世』と別役実の『あーぶくたった~』を見た。
 リーディング公演、つまり朗読劇なので、舞台には数脚の椅子が置かれただけ、役者が日常のような衣装で出てきて、椅子に掛けて手に台本を持って朗読する。
 まず『リチャード三世』を見た。わずか1時間半の公演時間でどうするのかと思ったら、3幕4場までを取り上げている。リチャードは残虐な王で、王位を狙って次兄を処刑し、兄王が没したのちは皇太子や兄王に忠実だった貴族たちを次々と破滅させていく。朗読劇なのだが、通常と異なって王の科白を女優が読んだり、妃の科白を男優が読んだりする。はてはリチャード三世の科白を同時に3人の男女の役者が交替で読んだりしている。集中して見ていないと混乱してしまう。さらに台本もずいぶん手が入っているのではないか。つまり、シェイクスピアの芝居を使って換骨奪胎した新しい実験劇を作っているようなものだ。そう考えるとなかなか楽しめたのだった。
 別役実の芝居は初めて見た。通常の舞台でも電信柱1本だけ立っているとか、きわめてシンプルな舞台作りのようだから、リーディング公演は違和感がないのではないか。しかしごちゃごちゃした家庭劇で、それが解決しないまま次々と10場まで展開していく。どうにも楽しめなかった。今まで別役を見たいとあまり思わなかったが、やっぱりもういいやと思ったのだった。