座・高円寺で芝居『大いなる平和』を見る。これは毎年恒例の座・高円寺の劇場創造アカデミー10期生修了上演で、原作がエドワード・ボンドの『戦争戯曲集三部作』、3幕の演出がそれぞれ松本修、生田萬、佐藤信が担当している。上演時間が6時間半! 3幕それぞれが100分もある。幕間の休憩時間が15~20分で、午後2時開演で終わったのが午後8時半ころだった。
これを見たらたいていの芝居がかったるく感じられる。ボンドの戯曲に圧倒されるし、シンプルな舞台に乗せられた象徴的な演出に引きずり込まれて、上演時間の6時間が少しも長く感じられない。
芝居は核戦争後の世界を描いている。人々は辛く苦しい生活を送っている。食糧が不足してくるので、食糧の確保のため人口抑制を理由に上官は兵士に自分の故郷で幼児を一人殺すよう命令を下す。それが1幕で、子どもを殺された母親が2幕でも3幕でも主役を務め、終始ボロ布を抱きしめてボロ布を赤ちゃんとして話しかけている。2幕で助けた娘が3幕でボロ布を抱きしめた老婆を救出に来る。老婆はそれを拒否する。その老婆の台詞を聴いていると、私たちの日々の生活とか普通の世の中が実は特殊な世界であって、何もない荒野で誰にも会わずに生きている老婆の世界が真の根源的な世界なのだと思えてくる。ほとんど食べものもない世界で糞を食っているとの台詞にぎょっとさせられながら。
文化人類学を紐解くまでもなく、世界には多くの民族が様々な文化を営んでいる。みな自分の文化を絶対的なものだと信じている。芝居の老婆の価値観に鑑みればそれらはすべて虚飾なのだ。ボンドのこの芝居は「生の根源」は何かと問いかけてくる。「みんな嘘だ/なかばくずれた修辞の窓から/ありもしない季節が呼んだだけなのだ」。
すぐれた芝居を見た。この『大いなる平和』は今日が初日で明後日23日まで毎日上演されている。上演時間が6時間もあるが入場料はすべて自由席で2,500円ととても安価だ。たぶん座席はたくさん残っていると思う。ぜひご覧になることをお勧めする。
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『大いなる平和』
https://www.za-koenji.jp/detail/index.php?id=2279
2020年2月21日(金)―2月23日(日)
14:00開演
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座・高円寺
東京都杉並区高円寺北2-1-2
電話03-3223-7500
https://za-koenji.jp/
※JR中央線高円寺駅北口徒歩5分