岡部耕大『追憶』を見る

 岡部企画プロデュース『追憶』を見る。紀伊国屋ホール、岡部耕大 作・演出。副題が「7人の女詐欺師」。昭和11年、賄賂を受け取って協力する軍人の大佐と結託した悪徳商人が密輸で儲けていたが、商人の一人が足を洗おうとして殺される。殺された商人と親しかった7人の癖のある女たちが復讐を誓う。なんだか水戸黄門のドラマのようだ。徐々に悪人たちを追い詰めていって、昭和15年に事件が決着する。勧善懲悪できわめて単純なストーリーだ。さらに女優たちが7人も登場するのに華がない。
 脚本が良くないし、演出にも疑問を呈したい。女優達に華がないのは演出の問題に違いない。とにかく役者が動かない。朗読劇のようだと言ったら言い過ぎだろうが。セリフもキレがないように感じられたし、テンポももったりしているように思われた。
 悪事の証拠を得るために料亭にテープレコーダーを仕掛けているが、戦前にテープレコーダーってあったっけ? 殺された商人が付き合っていた7人の女たちとすべてプラトニックだったってホモでなけりゃ変じゃないだろうか。
 事件を探っている刑事と巡査も狂言回し以上の役割を担っていない。だいたい5年間も時間が経っているのに、登場人物たちの歴史が変化しなさすぎる。
 サトウハチロウ作詞の「百舌が枯木でないている」がテーマ曲のようになっているが、この選曲にも疑問を呈したい。
 太平洋戦争開始直前の話なのに、そのことへの言及もほとんどなかった。岡部耕大は40年前にも見ていたと思うが。