TBスタジオプロデュース公演『手紙』を見る


 TBスタジオプロデュース公演『手紙』を見る。作・演出が得丸伸二で、出演が得丸と山上優の二人。リーディング・シアター=朗読劇。
 得丸の演出後記から、

 本作はA・R・ガー二―の『ラブレターズ』を上演しようとして上演権が取得できなかったため、日本版ラブレターズとして執筆することとなり書き始めた。男女二人の往復書簡から構成される点と、男が政治家になり、女が死ぬことを踏襲して後は創作した。執筆にあたり、現代の物語にしようとしたが、携帯電話やメールが普及した時代に手紙のやり取りはリアリティが無いなと思い、昭和25年、小学校6年生から物語を始めることにした。戦後の焼け跡から朝鮮戦争景気で立ち直り、高度経済成長、オイルショック、バブル、2度の大震災を乗り越えた昭夫の人生は、実に物語るに足ると感じた。(後略)

 男女2人が手紙をやり取りする芝居だから、朗読劇形式は十分だった。広島の小学校の同級生同士が先生から交換日記を書かせられる。しかい昭夫が大阪に転校して手紙のやり取りになる。昭夫は大阪の釜ヶ崎あたりで肉体労働をし、やがて左翼の活動家になっていく。和江は宝塚に憧れるが試験に落ちてしまう。それで東京の劇団の研究生になり、やがて劇団の女優から映画俳優になる。二人は境遇が異なってしまうが、文通を続けている。和江の結婚と出産と離婚。昭夫はベトナム戦争の取材カメラマンからやがては代議士になる。
 とくに昭夫の手紙に当時の政治情勢が綴られる。戦後の昭和時代の政治状況や社会情勢が語られる。それがやや煩雑な印象を受けたが、脚本としては優れた出来に仕上がっている。演じた得丸も山上も好演だった。ラストで和江の娘が読み上げるついに出されなかった和江の手紙に涙を抑えられなかった。
 完成度が高く、二人だけの役者で演じる朗読劇形式の芝居ということで、今後多くの劇団が取り上げていくのではないだろうか。今回は7人の役者が交替で演じている。
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『手紙――届かなかったラブレター』
2018年4月19日(木)〜4月22日(日)
TBスタジオ(志茂)
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TBスタジオ
東京都北区志茂1-1-9
電話03-3598-0998
info@tb-studio.net

チケット料金3,000円
東京メトロ南北線志茂駅徒歩3分
JR線赤羽駅南改札から徒歩15分