チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』を読む

 チェーホフ『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』(光文社古典新訳文庫)を読む。訳者は浦雅春。先に話題になった映画『ドライブ・マイ・カー』の劇中劇として演じられていたのが「ワーニャ伯父さん」だった。

 私は10代後半の頃チェーホフの小説を夢中になって読んだ。見事だと思った。そしてチェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹』「かもめ」「桜の園」を読んだが、いずれもその面白さが分からなかった。

 後にカミさんと会ったとき、彼女から戯曲は舞台を想像して読むべきものだと教わった。それは理屈として分ったが、どう読めば良いのかまでは分からなかった。

 20代始めのころからアングラ芝居を見ていった。演劇センター68/71(後の黒テント)が好きで追っかけをしていた。その後でチェーホフの芝居を観た。チェーホフの芝居はとても面白かった。

 誰かが井上ひさしの小説を批判して、人物の造形が足りないと書いていた。井上は戯曲家だから戯曲のト書きに詳しい性格描写はしない。それは演じる役者の仕事だ。それを小説にも持ち込んでいるから小説として食い足りないのだ、というようなことだった。

 舞台で演じられるチェーホフの芝居は素晴らしかった。私が(多分今でも)戯曲をきちんと読みこなせていないのと裏腹だった。

 戯曲を読みながら、今まで見てきたチェーホフの舞台を思い出している。