井上ひさし『戯作者銘々伝』を読む

 井上ひさし『戯作者銘々伝』(ちくま文庫)を読む。清住白河の古本屋しまブックスで買ったもの。ここは小さな店舗ながら良い本が揃っている。無人島プロダクションの並びにある。他の古書店で聞いたら、あそこは古書組合に入っていないので、組合を通じてまとめて買うのではなく、こまめに古本屋を回って背取りしているからとのこと。
 『戯作者銘々伝』は江戸期の戯作者の自分語りという形をとっている。戯曲家でもある井上にとって、一人称の語りというのは最も得意な分野だ。いずれも見事に語ってのけている。取りあげられているのは、式亭三馬山東京伝恋川春町など著名人からほとんど生涯が分からない者まで12人。いずれもみごとに造形化している。しかも読んでおもしろい。
 ただ、みな味が似ている。先が予測できることはさすがにないが、同じ味の料理を並べられると飽きてくる。そんなわけで格別高い評価をすることができなかった。


戯作者銘々伝 (光文社時代小説文庫)

戯作者銘々伝 (光文社時代小説文庫)