今野敏「隠蔽捜査」は優れた警察小説だ

 今野敏「隠蔽捜査」(新潮文庫)は優れた警察小説だ。読み始めからわくわくさせられる。50ページほど読んだところで、何でこんなつまらないものを読み始めてしまったんだと思った「虐殺器官」(昨日紹介した)とは正反対で、どんどん引き込まれる。ところが途中、主人公の警察の息子が犯罪に関わってしまう。俺は警察小説が読みたいのであって、家庭小説なんか読みたくないわいと思ったが、それもきれいに巻き込んで大団円で収めてみせてくれた。「虐殺〜」と違って、細部がきちんと詰められており、十分大人の読書に耐えるのだ。
 東大出のバリバリのキャリアを主人公に持ってきて、こんなに面白い小説に仕立て上げるなんて大したものだ。主人公の小学校時代の同級生で、当時彼をいじめていたヤツが、私大出のキャリアとして主人公に面白く絡んでくる。続編が「果断−−隠蔽捜査2」として2月に文庫になっている。これも楽しみだ。
 横山秀夫についで優れた警察小説作家に出会えたことを喜びたい。


隠蔽捜査 (新潮文庫)

隠蔽捜査 (新潮文庫)