古田亮「俵屋宗達」(平凡社新書)が大胆な主張を繰り広げていて面白い。副題が「琳派の祖の真実」、結論を言えば琳派の祖とされている俵屋宗達は琳派ではなく、別格の優れた画家だったというもの。驚くような主張だが、極めて説得力がある。
著者は宗達の作品を分析し、マチスと通底すると高く評価する。尾形光琳が宗達を尊敬し、私淑して没後の弟子となる。風神雷神図などは宗達の屏風をトレースまでしている。そして光琳が琳派の中心となったため、宗達がその祖とされた。しかし、宗達の芸術と光琳のそれとは違うと著者は言う。そのことを宗達の作品を具体的に分析することによって証明している。
とても優れた新しい宗達論だ。
俵屋宗達の風神雷神図
尾形光琳の風神雷神図
光琳は宗達をトレースした。「宗達の表現を絵画的と呼べるとするならば、光琳のそれはデザイン的と呼ぶべきものだろう。(中略)私は、光琳による宗達芸術の改変こそが、いわゆる「琳派」の誕生と呼ぶべきものではないかと考えている」
酒井抱一の風神雷神図
抱一は宗達の風神雷神図を見ていない。「抱一の風神雷神図は、もはや宗達とは比較のし得ないほどに形骸化したものになっている」

- 作者: 古田亮
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2010/04/15
- メディア: 新書
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