絵は買わないと分からないか?

 絵は買わないと分からないとうそぶいているコレクターがいる。本当にそうだろうか? 椹木野衣が新刊「反アート入門」(幻冬舎)で次のように言っている。

 近年、アートの世界で仕事をしていて、よく聞くようになった決め台詞があります。
 それは、「アートは実際に身銭を切って買ってみないとわからない」というようなものです。なかには、「自分で作品を買わない評論家は信用できない」というようなことまで言う者もいます。
 しかし、このようなことを言う人は、自分がアートについて無理解であることを告白しているようなものです。
 そもそも、世にアートと呼ばれているなかで、流通の枠組みに入っているものはほんのわずかです。
 こういう人たちは、自分たちが金を出して買うことができる世界だけをアートの世界だと勘違いしています。けれども、それはアートの可能性のうちほんのひと握りの部分にしかすぎません。
 百歩譲って、もし彼らの言うような売り買いがアートの特質なのだとしたら、その人の使える資産の多寡によって、理解できるアートの幅というものが決まってきます。要は、金持ちほどアートをよく理解できる、ということです。
 また、自分よりお金持ちの人に対しては、なにも言えなくなります。反対に、自分よりもお金のない人たちに対しては、妙な見下しをするようになります。
 しかし、新興のお金持ちのコレクションを見ていると、実際にはその逆であることがよくわかります。稀に洗練された趣味の実現を見ることがありますが、実際にはガラクタのようなものばかり買い集めて部屋を飾っているケースを多く見かけます。それで、どうしてアートを理解していると言えるのでしょうか。

 新興のお金持ちのコレクションて、高橋コレクションのことだろうか?
 この本は優れた現代美術論だ。あらためて紹介しよう。

反アート入門

反アート入門