東京オペラシティ・アートギャラリーの猪熊弦一郎展と収蔵品展

 新宿区初台の東京オペラシティ・アートギャラリーで「猪熊弦一郎展 いのくまさん」が開かれている(7月4日まで)。
 猪熊弦一郎は10年前に東京ステーションギャラリーで回顧展を見て、晩年の作品が素晴らしいと思った。それを何人かの画廊主に話すと、彼らは皆、猪熊はニューヨーク時代が最も良く、晩年の作品は良くないと言う、私とは正反対の評価だった。どちらが正しいか、それをもう一度確認したいとオペラシティアートギャラリーへ行った。ところが驚くほど作品が少なかった。
 実は今回の展示は「いのくまさん」とあるように、きちんとした回顧展ではなく、谷川俊太郎の文と猪熊の絵による絵本「いのくまさん」の原画展だったのだ。絵本の原画が中心でタブローは少なかった。正直言ってがっかりした。
 この企画展を見たあと、上の階へ行って「収蔵品展」を見た。企画展のチケットでこれも見られるのだ。これが充実していた。タイトルが「ジオメトリック・イメージズ」と言う。

本展は「東洋的抽象」、「ブラック&ホワイト」という当コレクションの基本的性格で割り切ると、なかなか同じ空間に展示することが難しい作品群を「幾何学的なかたち」というキーワードで編成することで、コレクションに共通する新たな一面を探る試みである。

 野田裕示の作品が揃っている。林孝彦、はい島伸彦(「はい」は草冠に配)、桑山忠明、リ・ウーファン、松谷武判、ミズ・テツオ、中川佳宣、額田宣彦、小野木学、オノサト・トシノブ、斎藤義重、菅井汲、宇佐美圭司山田正亮、吉永裕、吉原治良
 何という見事さか! しかもこれらの作品はすべて寺田小太郎さんの寄贈なのだ。優れた鑑識眼だ。
 最近になって、この収蔵品展だけを200円で見られることになったようだ。東京国立近代美術館東京都現代美術館に次ぐ充実した常設展だろう。