本川達雄『ウマは走る ヒトはコケる』を読む

 本川達雄『ウマは走る ヒトはコケる』(中公新書)を読む。副題が「歩く・飛ぶ・泳ぐ生物学」。本川達雄といえば、『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)がとても面白かったので期待して読んだ。本川が「おわりに」で書いている。

 本書では、われわれ自身が毎日やっている歩く・走るや、雀が飛ぶ、金魚が泳ぐなど、これも毎日目にしている動物たちの移動運動がテーマである。また、そのような運動を上手に行える体のつくりについてもかなり詳しく説明した。

 

 哺乳類から鳥類、魚、昆虫などを例にとって、移動運動をきわめて詳しく解説している。それらの運動を可能にしている筋肉や骨の構造や機能についても大変に詳しい。

 しかし、本書は解剖学を学ぶ学生たちが主な読者ではないかと思えるようなほとんど専門的な内容なのだ。もちろん私は動物の組織についてほとんど興味がない。興味がない分野の本を読むのは時間がかかり、こんな厚くもない新書を読み終わるのに1週間もかかってしまった。『ゾウの時間 ネズミの時間』の面白さを期待したら裏切られるだけだろう。

 それでも渡り鳥が長距離を渡ることについての項は面白かった。オオソリハシシギはアラスカで繁殖し、そこから赤道を越えて太平洋を南下して越冬地のオーストラリア東部やニュージーランドまでわたる。17,000kmを8日間ほどで行く。

 キョクアジサシは北極圏で春と夏を過ごし秋になったら南極圏に渡る。渡る距離は片道35,000kmで、一部の鳥では往復の総移動距離が8万kmにも達する。

 ハシボソミズナギドリは10月から3月に南極でオキアミを食べて栄養をつけ、タスマニアで子育てをし、その後北へと渡って4月から9月はオホーツク海ベーリング海で別種のオキアミやイカを食べて過ごす。

 また鶏肉の「ささみ」が翼を打ち上げる小胸筋で、翼を羽ばたかせる大胸筋が「むねにく」だと初めて知った。