ヤン・ヨンヒ監督・脚本の『かぞくのくに』を見る。2012年公開の日本映画を対象にした「キネマ旬報」ベストテンで日本映画の1位に選ばれた。監督のヤン・ヨンヒは在日コリアン2世。
ストーリーをWipipediaから引くと、
在日コリアンのソンホは16歳のとき朝鮮総連の重役を務める父の勧めに従い、当時「理想郷」と称えられていた北朝鮮の「帰国事業」に参加し半島に渡り、現地で結婚し子供も生まれたが、離れ離れとなった家族の再会は果たされていなかった。
それから25年、ソンホの一時帰国が実現する。ソンホは脳に悪性の腫瘍を患い、その治療のため、3ヶ月の期間限定で日本滞在が許されたのだ。久々の再会に妹のリエや母ら、家族は歓喜し、ソンホを暖かく迎え入れる。だがソンホには常に同志ヤンが付き従い、その行動を制限・監視していた。
検査の結果、ソンホの治療は3ヶ月では足らず半年以上の入院が必要だと告げられ。手術を断られてしまう。なんとかソンホの腫瘍を治療させようとリエがソンホの幼馴染で医者に嫁いだスニに相談していた矢先、朝鮮本国より突然の帰国命令が下る。
妹のリエが監督のヤン・ヨンヒなのだろう。25年ぶりの帰国に家族は大喜びする。幼馴染みたちも歓迎する。しかしソンホにはいつも陰がある。同志ヤンも常につきまとい監視を怠らない。ソンホはヤンの指示をリエに伝える。工作員をする気はないかと。リエは激しく拒絶する。ヤンは朝鮮総連の幹部たちに対しても高圧的に振る舞う。それが上司からの電話には直立して返事をしている。
病気治療が目的で来日したソンホに、まだ手術も受けてないのに突然帰国命令が下る。それも明日帰れと。総連の幹部である父も、監視役のヤンも、ソンホ自身もその理由を知らない。妹にソンホは言う、あちらではいつもこうなのだと。
これはまるでカフカの世界だ。『城』とか『掟』とか。すると北朝鮮は官僚国家でもあるのだろう。ソルジェニーツィンのソ連を思い出す。特殊北朝鮮の世界の話ではない。ある普遍性をもったテーマなのだ。
日本で平和ボケになっていることを反省する。工作員は身近にうじゃうじゃしているかもしれない。しかし、こんな映画を作って、北へ帰って行った兄は危害を加えられないのだろうか。
折しも今日(6月16日)の朝日新聞に、この映画の監督ヤン・ヨンヒが書いた本の文庫化されたものが紹介されている。ヤン・ヨンヒ『兄 かぞくのくに』(小学館文庫)。
3人の兄が「帰国事業」で北朝鮮へ渡った。総連幹部として弱音を吐けない父、覚悟を決め仕送りを続ける母。国家に翻弄される家族のなかで、「北」にも日本にも帰属しえない私。映画「かぞくのくに」の監督である著者が、自らの体験から描く、壮絶なドキュメント。
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