三好彩展−−優れた新人画家が現れた


 東京千代田区の3331のArts Chiyodaにあるイムラアートギャラリー東京で三好彩展「穴の中」が開かれている(7月14日まで)。三好は1986年大阪府生まれ、2012年に京都芸術大学美術学部油画専攻を卒業している。初個展は今年京都のイムラアートギャラリーで開かれ、今回が東京での初個展となる。久しぶりに優れた新人画家に巡り会えた。個展のタイトルの「穴の中」について、三好のテキストがある。

穴がある/穴の中から外を見ている/穴の外に見える景色もまた穴の中にある


この小さな空洞ではいつも火花と煙と大きなけものが/暗がりのあいだを歩き回りながら/目を閉じたり開いたりしている


愛しくも恐ろしいこの穴の暗がりのその向こうの出来事/本当のことは穴の中か土の中か手の届かないどこかにいて/私たちを見下ろしている


キャンバスの上にあるのは、抽象化された物事ではなく、駆け抜ける心象そのものの写し描きです。/色と形の体を得てあらわれた、私のたくさんの分身を記録しています。/どこまでも孤独であること、全く忘れてしまうこと、消滅することは、極めて日常的で誰も逃げることはできない、空気のようにいつもそばにある、小さな絶望です。/共有不可能である個人の脳に広がる情景を記録する作業は、それらに対する抵抗なのかもしれません。





 この完成されたように見える抽象作品の背後に、まだ若い作家の激しい苦悩が澱のように沈んでいて、それがこれらの作品の存在感を担保しているのだろうか。しかし、ここに引用したテキスト以上に作家の内面を知ることはできない。だが、まだ若い作家の年齢を離れて、作品が確かな完成度を示しているのは事実だ。とは言え、大家の安定した完成度にはまだ及ばない。今から作家の10年後がものすごく楽しみだ。
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三好彩展「穴の中」
2013年6月15日(土)→7月14日(日)
12:00−19:00(月火祝日休廊)
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イムラアートギャラリー東京
東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda #206
電話03-5817-8275
http://www.imuraart.com
東京メトロ銀座線末広町駅4番出口徒歩数分