「池袋モンパルナス−−歯ぎしりのユートピア」


 池袋の東京芸術劇場5階ギャラリー2で「池袋モンパルナス−−歯ぎしりのユートピア」が開かれている(6月5日=今日まで)。タイトルの「歯ぎしりのユートピア」は野見山暁治の言葉から採られている。戦争中、ソ連との国境近い満州陸軍病院に肋膜で入院しているとき、「あのアトリエに1日でも戻って死にたい」とアトリエ村を想ったという。HPの案内より、

 1930年代から40年代にかけて、池袋周辺にはいくつものアトリエ村(アトリエ付住宅群)があり、多くの芸術家とその志望者たちが活動していました。その雰囲気を「池袋モンパルナス」と呼んだのは、詩人で画家の小熊秀雄です
 かつての池袋周辺を想起させる小熊秀雄、春日部たすく、高山良策、田中佐一郎、鶴田吾郎らの作品、1940年代の多様性を伝える井上長三郎、大塚睦、榑松正利、寺田政明らの作品、1945年4月13日の東京西北部の空襲を描いた杉浦茂と吉井忠の作品・資料のほか、西田宏道、長谷川利行丸木位里丸木俊といった、アトリエ村を代表する作家たちの作品を展示します。また、戦後新しく池袋周辺にアトリエを構えた桂川寛の作品・資料も併せて展示します。

 上記の主だったメンバーの作品が並んでいる。主催が豊島区なのだ。池袋モンパルナスと言ったら練馬区立美術館や板橋区立美術館の収蔵が充実している。ところが本展は豊島区所蔵作品を中心として企画されている。
 実は現在新しく豊島区立美術博物館を中心とした複合施設を熊谷守一美術館近くの小学校跡地に建設中なのだ。今まで豊島区立美術館に近いものとしては、熊谷守一美術館の3階に小さなギャラリーがあるだけだった。それでようやく豊島区も美術館をつくることになったのだ。とても目出度い。
 コレクションの中心は何ですかと訊くと、池袋モンパルナスの画家ですとのこと。なるほど、豊島区が池袋モンパルナスを集めなくてどうするのかとも思い、主要な作品は板橋と練馬がすでに集めているだろうとの思いがする。とは言うものの、入れ物ができれば中身は必ず追いついてくるし、新しい企画が生まれるのは必然だろうから楽しみなことだ。
 長谷川利行の「少女」は良い作品だ。吉井忠が29年後に長谷川を思い出して描いた「長谷川利行」も良い。大塚睦の「孤児」も良かった。Kさんは下手だけど。やっぱり小品が多かった。
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「池袋モンパルナス−−歯ぎしりのユートピア
2013年5月19日(日)−6月5日(水)
10:00−18:00(会期中無休)無料
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東京芸術劇場5Fギャラリー2
http://www.city.toshima.lg.jp/bunka_kankou/