ノンアルコールビール試飲記

 知人からノンアルコールビールをもらった。キリンの缶入りのやつだ。くれた人はまずくて飲めないと言う。では飲んでみようともらったが、飲む機会がなかった。ビールを飲む前に飲んだら肝腎のビールがまずくなるのではないか。寝る前の酒はアルコール度数の強いのに決めているから、ビールやその亜流を飲む気にならない。するとなかなか飲むときがなかった。ある朝思い付いて出勤前に飲んでみた。アルコールが入っていないのだから、こんな時こそ飲み頃だ。うまかった。私には不満はなかった。もともとビールを飲むつもりではないのだから、これは十分だと思う。ビールと比較してどっちがうまいかという問題だったらもちろんビールだが。
 飲んだ後驚いたことに眼のふちが少し上気した。体がアルコールを飲んだと勘違いしたのではないか。昨夜の酔いもわずかに残っていて呼び水になったということもあるのかもしれない。
 元来酒類を飲めない時に飲むのが良いかもしれない。いや、だからそういう飲物なんだって! 選択肢が広がったのだ。ここでつまらぬ連想をしてしまう。オカマの人と石原慎太郎が対談したとき、思い切って飛んでみればあちらにも広い世界が広がっていますよと言われて、石原はこちらの世界も十分広いと答えていた。選択肢が広い必要はないのかもしれない。昔それを体験した友人の三木が、体を動かさなくていいから楽だったと言っていたことを不意に思い出した。