アマチュアの仕事


     
 これは東京都のシンボルマークと日本化薬株式会社のコーポレイトマークだ。二つに共通するのはいずれも公募によって素人がデザインし、選ばれたものをプロのデザイナーが修正したものだということ。もう一つ共通する性格はどちらも垢抜けてないことだ。
 以前勤めていた会社のオーナーは植物図鑑を執筆しているにも関わらず文章が下手だった。本人もそれを自覚していて、書いた文章の推敲を頼まれた。それはとても難しい仕事だった。てにをはを直してもそれは大きな解決にはならない。といって根本的に直してしまってはもはや本人の文章ではなくなる。それは彼の望むところではないだろう。骨格をいじらないで修正するのは至難の業なのだ。私にはうまくできなかった。
 東京都と日本化薬のマークがダサイのも同じ理由だ。公募で選ばれたデザインを根本的に変えるわけにはいかない。修正は大きな制約がある。残念ながらこれらがその結果なのだ。
 どうすれば良かったのか。プロのデザイナーに競作させて、それを素人が選択するという方法が最も妥当なやり方だろう。
 オーナーは文章が下手なのになぜ植物図鑑を執筆することができたのか。俺は、と彼が言っていた、牧野植物図鑑と大井次三郎の新日本植物誌と北村四郎の植物図鑑と笠原安夫の雑草図説、それに長田武正の帰化植物図鑑とイネ科植物図鑑を机の上に並べて原稿を書くのだ、と。